まさにGINGER世代ど真ん中を生きる、田中みな実さん。場を仕切り、盛り上げ、ボケもツッコミもこなす知的な仕事人として、コスメ愛を探究する美容賢者として、チョコレートをこよなく愛する乙女として、その人気と注目度はますます上昇中。 そんな彼女が本音で綴る連載コラム「田中みな実 ここだけ話」。今回はみな実さんの、"年末のとある出来事”にまつわるお話です。(編集部)
今回のテーマ:花瓶の水
母が一人暮らしの私の部屋を訪ねてきてくれたときのこと。誕生日が近かったこともあり、頂き物のお花をいくつか飾っていたら、気を利かせて花瓶の水を取り替えてくれたのよね。
計5~6箇所、大小様々な花瓶に生けたお花を回収し、水切り、生け直しをしながら、母がぽつりぽつりと呟いた。「あらま、お花がかわいそう」「お水を取り替えてもらえなかったのね」「このお花はもうダメかしら、もったいないわ」出かける支度をしながら聞こえてくるそれらの言葉が私を責め立てているように感じて、たまらず言い返す。
「きのう1日お水を替えられなかっただけで、きちんと大切にしているよ。そんな風に言わないで!」思っていたよりも語気が強くなってしまったことに驚き、母の様子をうかがうと「忙しいもんね~」と気にする風でもなく、せっせと手を動かしていた。急にばつが悪くなって、私はその場から逃げ出したくなった。
年末にかけて何かと小忙しく、心身ともに疲弊していた。それでも、丁寧で豊かな、ひとりの暮らしを育んでいたつもりだった・・・。なのに、それすらも出来ていないと言われたようで、つい突っかかるような物言いをしてしまった。
結婚や子育てをしているわけでもないから、忙しさにかまけてお家のことをだらしなくする自分を許せなかったんだと思う。変なプライド。母が帰宅したあとの部屋は清潔で温かかった。丁寧な暮らしって躍起になってするものじゃない。年末年始は母が何十年もかけて築いてきた暮らしに頭の先まで浸ろうと思った。