パソコンの調子が悪くて苦労した経験は、きっと誰にでもあるはず。何でもデキそうな印象の田中みな実さん、実は意外な弱点があったーー。【連載「田中みな実のここだけ話」】
今月のテーマ:弱点
パソコンのワード機能が使えない。「さて、原稿に取り掛かろう」と腰を据えてデスクに向かった途端。
いつものように。アイコンをクリックしても起動せず、以前デスクトップに保存したワードのファイルを開くと、何かがおかしい。すべてのデータがワードパッドというものに書き換えられている。ワードパッドって何!? 何でこんなことが起きたの!? 神に誓って私は何もいじくっていない。
デジタル系が昔から得意ではない。むしろ嫌い。配線、Wi‐Fi、Cloud、OS、そういう言葉を聞くだけで思考が停止して、説明されればされるほど気が遠くなり、みるみる不機嫌になる。iPhoneは機種変するのが煩わしくて未だ8を所持していて、友人らの勧めで半ば強引に買わされたMacBook Airは数年間、手付かずのまま棚の奥に仕舞ってある。Windowsに親しみがあってMacの操作を覚える気になれないのだ。第一、ワードとネットしか使わない私にとっては長年愛用しているノートパソコンで十分事足りている。しかし、これは非常事態。遂にMacBook Airを使うときがやってきたか。
もう少しもがいてみようと、スマホで「ワードがワードパッドになる」と検索すると、同じ症状に悩む人が大勢いて救われる。【スタート→設定→アプリ→規定のアプリ…】ふむふむ、なるほど。兎にも角にも書かれている通りにやってみよう。え~っと、スタート…スタートとは何でしょうか?? 手も足も出ない自分にほとほと嫌気が差す。こういうときに、パソコンを抱えて「助けてください!」と駆け込める施設があればいいのに。
昼前から格闘を続け、外は既に暗くなり始めている。そうだ! このパソコンを購入したビックカメラ赤坂見附駅店に行けばどうにかなるだろうか。雨の中、ワード機能を失ったパソコンを抱えてお店に向かい、助けを求め彷徨っていると、サービスサポートコーナーなるカウンターを見つける。白髪のおじいちゃんが一人、スマホサポートを受けていた。
「お待たせいたしました。本日どうされました?」。声をかけられると、うっかり涙が出そうだった。ワードが突然消えて一日中試行錯誤していた話、あれこれやってみたけどどうにもならないことを切に訴えると、「拝見します」と、鮮やかな手つきでパソコンを操り始める。この子とは何年もの付き合いになるけど一度も見たことのない画面が次々出てきて感嘆する。
どうやら原因はワードアプリの使用期限が切れていたことで、再度インストールする必要があるとのこと。言われたところで方法が分からないのでそれもついでにお願いすると、「ここから先の作業には3300円かかります」と。そりゃあそうだ! タダで助けてもらおうなんて端から思っていない。思ってはいなかったけど、お隣の親切なお兄さんがしっかりビックカメラの店員に見えた瞬間、喉元の涙がスッと引いていくのが分かった。
プロの手によって、ものの数分でワード機能を取り戻すことに成功。ありがとう、お兄さん。身に付けた技術や知識はお金になることを改めて知る。貴重なオフの1日を無駄にした感は否めないけど、連載のネタになったので良しとしよう。
田中みな実(たなかみなみ)
1986年11月23日生まれ。埼玉県出身。「あざとくて何が悪いの?」(テレビ朝日系)にレギュラー出演。毎週木曜22時~「あなたがしてくれなくても」(フジテレビ系)に、ファッション誌『GINGER』副編集長、新名楓役で出演中。