日ごろから“言葉”についてあれこれと思いを巡らせている壇蜜さんの連載『今更言葉で、イマをサラッと』第22回目。言葉選びと言葉遣いが、深く、楽しくなる。そして役に立つお話。どうぞお楽しみください!
その22『気は心』
「気は心といいますし、せめて少しサービスをさせてください」。これは、先日買い物をした雑貨屋のスタッフの女性に言われた言葉だ。年の近い彼女とは2年ほど前から顔見知りで、久しぶりに訪ねたということもありささやかだがお土産を持っていった。お土産に喜んだ彼女が買い物の会計時に放ったこの丁寧で温かい、そして適度な距離感のある言葉を忘れないだろう。
サービスは値引きという形で行われた。私は「気は心」のくだりですっかりフニャフニャな気持ちになっていたので、正直サービスが飴玉1個でも、ポケットティッシュ1つでも喜んだだろう。単純かもしれない。
気は心。調べてみると「わずかなことでも微力でも真心から行っている」という意味で使われる。気は何かをすることで、心は思いやりだろう。気持ちが行動につながり、良き結果を作るのだ。気は心、という言葉をどこでもいつでも使うのはおすすめしないが、せめてもの厚意だと伝えたいときや、ちょっとだけでもうれしいと思ってほしい・・・という謙虚さを含みながら使う分にはとても素敵な言葉だと思う。少なくとも「まぁ、気は心っていうし、適当なものでもあげれば良いでしょ」とカジュアルかつ投げ槍には使ってほしくない。無いよりマシでしょ、というニュアンスで乱用するのは非常にいたましい。あくまで、ちょっとだけどあなたのために出来ることをします、のひたむきさは含んでいてほしい。
ちなみに、この言葉にはもうひとつ意味があることを調べていて知った。気は心・・・なんと「気のもちようで心が落ち着く」という意味もあるようだ。病は気から、という言葉を思い出す。滅入った気持ち、焦った気持ちでいれば心もざわつく。まずは自分の心身を冷静に保つことで心も落ち着きを取り戻せ。当たり前のことだが、結構難しい。コンビニへ行き、お目当てのお菓子が売り切れだったとしたら、帰り道も余計に遠く感じないだろうか。深呼吸して店を出て少し歩いているうちに「売り切れってことは人気商品。また来ればあるさ」と心を立て直せるということだ。心がけねば。