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TIMELESSPERSON

2025.11.26

栁俊太郎「駆け引きがなくなった人生は退屈」映画『消滅世界』が問う“正しさ”

NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」や映画『ゴールデンカムイ』で大きな爪痕を残す、俳優・栁俊太郎さん。11月28日(金)より公開される映画『消滅世界』では、性が消えた世界に恐ろしいほど順応していく複雑な人物を繊細に演じた。“普通”や“正しさ”という問題に正面から切り込んでいく作品に、栁さんが見据えたものとは。

人との関わりが少なくなってきた現代だからこそ

夫婦が愛し合って子を産まなくなった世界、人工授精での妊娠・出産が常識となった時代。もしそんな未来がやってきたら――。数々の文学賞を受賞する作家・村田沙耶香氏のベストセラー小説『消滅世界』が、待望の映画化。結婚生活に性愛が入ることを禁じられた世界における家族の在り方、そして恋愛の欲情の矛先とは。少子高齢化真っ只中の現代社会に突き刺さる作品が完成した。

主人公の夫・朔を演じる栁俊太郎さんは、本作の立ち上がりを振り返る。

「最初にお話をいただいたのが5年ほど前。当時はコロナ禍で、『この先どうなっていくんだろう』とみんなが不安になっているタイミングでした。感染予防の観点から人と人が触れ合うことがタブーとされて、友達にも気軽に会えない、そんな時期だったので、この物語がとてもファンタジーには感じられなかったんです。当たり前だと思っていた日常が変わっていくのを実感して、『こうして消滅するのかもしれない』と思ったのを覚えています」

ジャケット¥749,100、ニット¥202,400、パンツ¥358,600/すべてマルニ(マルニ ジャパン クライアントサービス)

「この役は栁さんにしかできません」と熱意のこもった手紙が川村誠監督から届き、出演を決めたという栁さん。計画的に人工授精、出産、管理を行い、住民みんなで子育てをする実験都市“エデン”に移住することを決めた朔は、人生が大きく転換する。

「エデンの存在をすんなり受け入れるまっすぐさを持っているんですよね。“いいもの”だと信じてしまう疑いのない心があって、そこは朔の愛されるべきところだと思います。一方で、ミステリアスでプラスチックのような肌感の役だとも思いました。僕自身、モデル出身ということもあって、“マネキン”のような要素が自分のなかにあると思うので、親和性を感じた部分もあります」

登場人物のなかでも、家庭に性愛を持ち込むことにひときわ嫌悪感を抱くという役どころ。人が恋や性の対象として見るべきなのは、家の外の恋人や二次元キャラクターと、私たちの“常識”から遠くかけ離れた価値観で、私たちの現実世界では到底耳にしない会話が繰り広げられる。そんな世界線の住人を栁さんは繊細に演じた。

「正直、めちゃくちゃ難しかったです(笑)。この世界の“普通”が僕たちの“普通”と全然違うから、僕のアイデアや感情で動くと世界観が崩れてしまうんですよ。違和感を感じるような言い回しや喋り方があっても、それは僕自身が感じてしまっていることだから、とにかく台本に忠実に。自分の感情を制御する、そして役から切り離すということが大変でした」

SFの空気をまといながらも、「近い将来、こんなことが起こり得てしまうんじゃないか」というじわじわと胸を刺すような恐ろしさ。栁さんは「完全にそうなるかはわからないけれど、世界はその方向に進みつつあるんじゃないか」と俯瞰で捉える。

「以前より人間関係が淡白になっている感覚があるんです。ケンカができなかったり、我を出しすぎることが許されなかったり、常に誰かに監視されていたり…感情が入り乱れて形成されていくはずの人間関係が希薄になりつつありますよね。そんな世界を寂しいと思いつつも、僕はこの物語の世界を否定する理由をまだ言葉で説明できないんです。たとえば、エデンは住人が“お母さん”となって、差別も区別もなく子どもを育てていく実験都市ですが、その状況だけでみると、悪いことではないじゃないですか。現実世界にもアニメのキャラクターに恋をして幸せを感じている人もいる。僕は『消滅世界』の舞台を否定する理由を探し続けていくんだと思います」

そして「生きていて楽しいと思うことは、複雑な人間関係だ」と栁さんは言葉を続ける。

「恋愛も友情も、モチベーションですしエネルギーです。『この人にこう思われたい』とか『こういうパフォーマンスをしよう』とか、コミュニケーションにおける駆け引きが楽しいし、それがなくなってしまった世界は退屈かもしれないなと思います」

性が消えた世界で、自身の欲情と社会の常識がせめぎあう。恋愛、結婚、家族の定義とは何か。そして正しさとは何なのか。正しいと言われることは本当に正しいのか。――観るものの価値観をぐわんと揺らす作品が完成した。

「“正しさ”を誰かに決められてしまうのは危ないこと。みんながそれに従ってしまったらロボットみたいになってしまうじゃないですか。ルールやマナーのなかで、道徳は自分で決めるべきだと思うんです。そのうえで“正しさ”と向き合う余白が人生に必要なことなのかなと思います」

【11月28日(金)公開!】映画『消滅世界』

©2025「消滅世界」製作委員会

出演/蒔田彩珠 栁俊太郎 ほか
監督・脚本/川村誠 
原作/村田沙耶香『消滅世界』(河出文庫) 
©︎2025「消滅世界」製作委員会
shoumetsu-sekai.com
X @shoumetsu_sekai
Instagram @shoumetsu_sekai_movie

栁俊太郎(やなぎしゅんたろう)
1991年5月16日生まれ、宮城県出身。2009年、MENS’ NON-NOモデルグランプリを受賞、モデルデビュー。2012年より俳優として活動を始める。主な出演作に、ドラマ「今際の国のアリス」シリーズ、「アトムの童」、「夫を社会的に抹殺する5つの方法」シーズン2、NHK大河ドラマ「どうする家康」、「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」、映画『ゴールデンカムイ』、『少年と犬』、『#真相をお話しします』、『九龍ジェネリックロマンス』、『平場の月』などがある。 ABEMAオリジナルドラマ「スキャンダルイブ」が配信中で、公開待機作に映画『ゴールデンカムイ〜網走監獄襲撃編〜』(2026年3月13日公開)、ドラマ「ちるらん 新撰組鎮魂歌」(2026年春公開)などがある。
Instagram @shuntaroyanagi

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0120-374-708

PHOTO=池田博美

STYLING=伊藤省吾(sitor)

HAIR & MAKE-UP=望月光

TEXT=GINGER編集部

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