世界中のファンが待ち望む、細田守監督の最新作・映画『果てしなきスカーレット』が11月21日(金)より公開。狂気に満ちた世界を、まったく新しいアニメーション表現で壮大かつ繊細に描かれる本作。スカーレットとともに旅をする聖の声優を務めた岡田将生さんが内に秘めた想いを語ります。
愛を知りたい――復讐の物語

「時をかける少女」(06)、「サマーウォーズ」(09)、「おおかみこどもの雨と雪」(12)など、数々のアニメーション作品で世を席巻してきた細田守監督の新作が、およそ4年ぶりにロードショー。細田作品のファンを公言してきた岡田将生さんは、作品への思い入れを隠せない。
「細田監督の作品に通ずるものは、愛だったり未来に馳せる優しさだったり。監督の優しさが作品に反映されているんだと、今回関わらせていただいて知りました。世界に対する優しさが本当にステキだなと思いましたし、よりファンになりました」
最新作『果てしなきスカーレット』の舞台は、略奪と暴力が横行する≪死者の国≫。国王である父を殺した敵への復讐に心を燃やす王女・スカーレットが、現代からやってきた看護師・聖と出会い、ともに“見果てぬ場所”を目指して旅をするストーリー。
「『シェークスピアをやるのか!』と驚いて、台本を読む手が止まりました。すぐにこれはハムレットの話だとわかり、監督は何をやろうとしているんだろうとワクワクしたことを覚えています。僕はハムレットを演劇で経験したことがありますし、看護師の役もやったことがあったので、その話を中心に監督とお話しさせていただきました。そのなかで、聖というキャラクターは、剣のようなスカーレットに対して鞘のような存在であるべきだと話をしました」
戦うことでしか生きられないスカーレットと、戦うことを望まない聖。衝突を繰り返しながらも、敵・味方に関わらず優しく接する聖の人柄に触れ、凍てついた心がゆっくりと溶けていくスカーレット。
「復讐に向けてまっすぐ突き進むスカーレットが抱えている痛みや悲しみを、聖が隣で支える。彼なりの言葉で、人との関わり方をひとつひとつ教えていくような関係性です。個人的にグッときたシーンが、スカーレットが自分を少しだけ受け入れて、髪を切るシーン。人が変化するのは、ものすごく時間が必要なことかもしれないけれど、変わっていかないといけないなと、今思い出しても勇気がもらえるシーンです」

今回が、細田作品初出演にして、長編アニメの声優は初めてとなる岡田さん。声優の難しさと闘う一方で、「俳優の僕がやることで新しい命の吹き込み方ができる」と強い信念を持っていた。
「声だけだと伝わらないことがたくさんあって、改めて声優さんの凄さを感じました。僕は、初めてだったので、声の出し方も録り方も、何ひとつわからない状態。先に録られていた役所(広司)さんの声を参考にと少しだけ聴かせていただいて、すごく圧倒されました。でも、俳優の僕がやることによって、聖に新しい一面を出せるんじゃないかと、信じてやっていたので、それだけは忘れないように、くじけないように、食らいついていきました。皆さんがどう見るかはこれからですが、“自分なりのやり方”というのは示せたのかなと思います。新しい機会を与えてくださった監督と作品に感謝でいっぱいです」
「生きるとは何か?」「生きるべきか死ぬべきか」という本質的な問いを観るものに突きつける本作。これまでとは一線を画すダークな世界であっても、“人の想い”は世代を超えて受け継がれていく。
「どの時代でも同じ悩みを抱えていると思うんです。『なぜ生きているのか』と常に疑問を持ちながら、『今の自分に何ができるのか』『何を変えていけるのか』と、きっと死ぬまで生きている人間は考えなければいけないんですよね。でもそれは、立ち止まってもいいし、振り返ってもいいし、その繰り返しなんだと思います。スカーレットが見据える先って、すごく希望があると思うんですよ。今の僕たちが生きている世界を彼女は見つめ続けていて、物語のなかだけでは終わらない美学を感じています。この映画が100年後も200年後も、生きている人たちに届いてほしいなと思います」


復讐に囚われ誰かのために生き続けるスカーレットの姿に、岡田さんは共鳴した部分があるという。それは心地よく生きるために欠かせない“セルフラブ”ということ。
「誰よりも自分が自分を理解し、自分を愛さないといけないという僕自身抱えている問題を突きつけられたように思います。世界中で誰よりも自分のことは自分がいちばん知っているはずなのに、自分自身が理解できていないというのは大問題ですよね(笑)。自分を愛せていないなと思うんですが、なかなか行動にうつせない。つまり自信がないということなんですが、自分との対話ほど辛いものはないと思うんです。でも、スカーレットは自分と向き合うことを選んだ。スカーレットや聖からたくさんのことを学びましたし、もうちょっと素直に自分の心の声に耳を傾けたいと思うような作品になりました」
そのために始めたことは、“肯定してあげる”こと。自分で自分を救うために、意識的に肯定してあげていると、生き方の風向きも変わってきたという。
「基本的に『自分なんて』と否定ばっかりしてきた人生だったので、小さなことでもいいから肯定してあげようと意識するようになりました。まだまだできていないけれど、ちょっとずつ変わっていければいいのかなと思います。今では、仕事とプライベートのバランスも考えるようになったんです。役者にストイックさは絶対的に重要な要素なんですが、ステップアップすることばかりを求めると自分を苦しめるだけだと気づいたんです。今はそれよりも、強い想いやメッセージ性のある作品に携わることが幸せ。作品として意義のあるものと出会えたら積極的にやっていきたいですし、焦らずゆっくりと年を重ねていきたいです」
【11月21日(金)公開】映画『果てしなきスカーレット』

キャスト/芦田愛菜
岡田将生
山路和弘 柄本時生 青木崇高 染谷将太 白山乃愛 / 白石加代子
吉田鋼太郎 / 斉藤由貴 / 松重豊
市村正親
役所広司
監督・脚本・原作/細田守
企画・制作/スタジオ地図
scarlet-movie.jp
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岡田将生(おかだまさき)
1989年生まれ、東京都出身。2006年デビュー。近年の主な出演作に、連続テレビ小説「虎に翼」(2024)や「ザ・トラベルナース」(2022-2024)、日曜劇場「御上先生」(2025)、「ちょっとだけエスパー」(2025)、映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)、『ゆとりですがなにか インターナショナル』(2023)、『ラストマイル』(2024)、『ゆきてかへらぬ』(2025)、『アフター・ザ・クエイク』(2025)などがある。また、初出演となる韓国製作ドラマDisney+オリジナル韓国ドラマ「殺し屋たちの店」シーズン2の配信を控えている。
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