エシカルな視点が盛り込まれたドッグギア「ciiron TOKYO Re:(シーロントウキョウ アールイー)」をプロデュースした二階堂ふみさん。俳優として活躍する一方で、動物との暮らしをきっかけにサステナブルな生き方を選んでいる。二階堂さんの想いに触れて、未来が変わる選択、してみませんか?
犬に教えてもらったことが道標に

「生きるうえで余計なことを考えなくなりました。人間はどうしても未来のことを考えて不安になったり過去のことに囚われたりするけれど、犬は“今”を生きているんだと知ったんです。繁殖犬だった過去をもつゾイは虐待を受けていて、人間に対してトラウマがある子だったんです。でも今となっては、良い意味で図々しい犬になって(笑)。過去のことが彼女のなかで残っているはずなのに、それを感じさせないくらい、私という家族を信頼してくれて、今を全力で生きていて。本当に逞しいんですよね」
そう瞳に輝きを宿して二階堂ふみさんは語ってくれる。愛犬・ジジとゾイとの暮らし、そして保護活動で出会ったという野犬のモチが二階堂さんに大きな影響を与えた。
「『ciiron TOKYO Re:』の撮影に協力してくれたモチという白いワンちゃんがいるんですが、元々野犬だったんです。山口県の保健所に収容されて、殺処分が迫っていたギリギリのタイミングでうちで預かることになりました。野犬だったので人間に対して警戒心が強くて、うちで預かっている間はモチの本当の姿を見ることができませんでした。ずっと怯えていて、立っている姿を見たことがないくらい。でも、新しい家族が見つかって、本当に時間と愛情をかけてもらって、家庭犬として新たな人生が始まっているんです。当時のモチを知っている私からすると、撮影に参加してくれるなんて本当にスゴイこと。また、モチを迎えてくださったご家族との間に関係ができて、犬が繋いでくれる縁もあるので本当に感謝しています」
愛犬、そして保護犬から教えてもらったこと。それは人間同士のコミュニケーションにも還元できるという。
「苦しい過去を持つ犬たちが、それでも人間のことを信じていて大好きで、人に対して愛情を返してくれる。それってすごく強いですよね。人間同士のコミュニケーションで学んだことや積み上げてきたものもあるけれど、犬との生活で気付かされたこともたくさんあります。忙しないなかで生きていると、人に対して思いやりがなくなってしまうような瞬間だったり、自分自身がすり減っていくところがあるけれど、家に帰って犬や猫と過ごしていると、自分自身を見つめ直せるんです。誰かを信じる強さだったり、新しい場所に飛び込む勇気は犬からもらったように思います」

「やさしさを持ち続けることは生き物としてすごく大事なことなのかもしれない」。動物との暮らしをきっかけに、環境に対するやさしさの視点もあわせ持つようになった二階堂さん。彼女が語る“サステナブルであるため“の小さな一歩とは。
「犬猫だけではなくて、野生に生きる陸上動物も海のなかの生き物も、人間の豊かな生活の裏で犠牲になっているということを知りました。特に工業型畜産に関しては、私は(現状に)責任を持てないと思いました。自分の心と体のバランスを取るために、工業型畜産のなかで生み出されたお肉は食べないという選択をしているだけなんです。だから、すべての方がベジタリアンになるべきだとも、食肉が悪いことだとも全く思っていないんですよ。ただ、そういうことに想いを寄せる瞬間が日常にあるといいなと思います。1週間に1回でも、1ヵ月に1回でも、半年に1回でもいいから、目を向けてほしいです。現代に生きる我々が環境に対してやさしさを持たなければいけないターンに入っているのかなと思います」
それは日常のなかに潜む些細なことから始められる。着るもの、食べるもの、買うもの、“やさしさ”というフィルターを通すことで、心地よい未来のための選択肢がグッと広がる。
「自分のできることだけでいいと思います。たとえば、今まで当たり前に買っていたものをちょっと減らしてみるとか電気や水などの資源を無駄にしないとか。私も時間と余裕があるときに保護犬を預かったり、ボランティアさんと連携をとって保護猫の活動に参加したり、そういう小さなことしかできてないんですよ。でも、その積み重ねがギリギリの環境で生きている動物や自然に対して大きな変化をもたらすんじゃないかと思うんです。せめて、消費者としてできることを模索したいし、模索し続けたいです」

俳優として活動する二階堂さんは、アニマルライツや環境問題に関するオピニオンリーダーやアクティビストなどと表現されることもあるが、彼女自身は「等身大の姿をシェアしているだけ」だという。そんな彼女の声がさざなみのように人々の心に届き、いつか大きなうねりになることを信じたい。
「発信というよりかはシェアしているという感覚です。それは、この数年で『〜するべき』という意義や大義名分になると分断を生んでしまうと感じたからです。そんな社会は望んでいないんです。同時に、自分の“正しさ”に対しても、疑いを持ちたいと思うようになりました。私自身アップデートできていないことも、知らなきゃいけないこともたくさんあるし、深く知って行動に移してからじゃないと言えないこともある。私が目立つところでお仕事をさせていただいているからこそ、等身大の自分の姿をシェアして仲間が増えていくといいなと思っています。
また、今はこういう考えでこういう思いを持って動物と関わりを持っているけれど、ライフステージが変わってどうしてもできないことが出てくるかもしれない。考えが変わっていくこともいいと思っているんです。それでも、動物や環境に対する謙虚な気持ちは失いたくない。これからもシェアし続けて、感覚をアップデートしていけたらいいなと思っています」
二階堂ふみ(にかいどうふみ)
1994年9月21日生まれ、沖縄県出身。映画『ガマの油』(2009年)でスクリーンデビュー。その後も日本を代表する演技派俳優として、『リバーズ・エッジ』(2018年)、『翔んで埼玉』(2019年)、『月』(2023年)、ドラマ「エール」(2020)、「Eye Love You」(2023年)など多くの作品で存在感を見せる一方で、写真家としても活動する。毎週水曜よる10時放送のドラマ『もしもこの世が舞台なら、 楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ)に出演している。
Instagram @fumi_nikaido

