令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】
ミッフィー(・×・)

すきな映画、すきな音楽、すきな漫画、すきなラジオ、すきな食べ物、すきな場所、すきな……いろんなすきなものがあるけど、「いちばんすきな〇〇は?」って聞かれると答えに迷うものばかり。唯一即答できるのが「すきなキャラクター」と「すきな動物」。
すきなキャラクター、ミッフィー。すきな動物、うさぎ。
今年、2025年はミッフィー生誕70周年。ナインチェと聞いてピンとくるでしょうか。ミッフィーが地元(オランダ)で呼ばれている本名です。最初に発表されたミッフィーの絵本のタイトルは『ナインチェ』。オランダの言葉で「ちっちゃいうさぎ」って意味らしいです。かわいい。日本名はうさこちゃん。かわいい。ミッフィーって形態変化があるじゃないですか。その第1形態にあたるファーストミッフィーが「ナインチェ」と呼ばれることがあって、今年生誕70周年を機に新たなナインチェグッズがたくさん出ました。正直、今までイラストでの初期形態ミッフィーのこと、かわいいと思ってなかったんです……………耳に角度があって、腕組んでる(?)感じのあの初期形態ミッフィー。かわいいですよ、もちろんミッフィーだからかわいいんです。なんだけど、近年のまるっこい形態がかわいすぎるじゃないですか!! え? その形態って何かって!? 調べて!!!!!!!
先日、ミッフィースタイル(ミッフィーグッズ専門店)に吸い寄せられるように入店したら、初期形態ミッフィー・ナインチェちゃんが立体ぬいぐるみになってたくさん整列してたのです。
………かわいい!!!!!!!!
意識が戻った時にはお会計を終え、帰宅していました。いやーびっくりびっくり。立体ナインチェちゃんがこんなにかわいいとは。ダーンも一緒にお迎えしました。片耳が垂れてる緑の服着た男の子です。顔はミッフィーと同じ。あだち充先生スタイルですね。群馬が生んだ天才、あだち充。オランダが生んだ天才、ディック・ブルーナ。ブルーナさんの画像検索してください。ミッフィー生み出せたわけだわ~! と、納得のやさしさとかわいさの全力ハイブリッドキュートおじいちゃんです。
SNSでミッフィーとダーンの超感動話が拡散されていました。
ミッフィーに「うさこちゃん」という名前があるように、ダーンには「たれみみくん」というあだ名があったのです。でもダーンは見た目から安易に付けられてしまったそのあだ名を気に入っていません。心優しい(しかもかわいい)ミッフィーはダーンに本心を尋ねます。ダーンは「いやだけど仕方ないよ」というちょっと諦めた気持ちだったんですね。しんどいね。そこで勇敢な(しかもかわいい)ミッフィーは、ダーンを「たれみみくん」と呼んでいる子たちに「本人が嫌がってんだからやめようぜ!! ルッキズムまじ反対!!」と説いてくれたわけです。言い方はもっとかわいいです。
ミッフィーはかわいいだけに留まらず、教育的観点においても最強なんですね。教科書に載せよう。ゆくゆくはお札の肖像にしよう。
家にいるぬいの数は、打ち勝ってきたストレスの数———。ナインチェやダーンが加わり、我が家がどんどんにぎやかになっています。

『ミッフィーとおともだち』というミッフィーのお歌をご存知でしょうか。ミッフィースタイルでいつも流れているのでみなさん口ずさめますよね。現代人はストレスが溜まるとミッフィースタイルに駆けこむ習性がありますからね。歌詞を考察してみましょう。
ミッフィー♪ かわいいうさちゃん♪
ミッフィー♪ おりこううさちゃん♪
ミッフィー♪ げんきなうさちゃん♪
ミッフィー♪ だいすきっ♪
これはエイトジャムで取り上げたほうがいいかもしれない。歌詞よすぎ。この歌詞からわかるように、ミッフィーはかわいくて、お利口で、元気で、みんなに愛されているうさちゃんなんですね。ミッフィーになりたいですね。
以前のエッセイで、お笑いがすきなのにお笑いがすきって主張するの気が引けちゃってモジモジという話をしましたが、それを読んでくれた知人たちがナチュラルに芸人さんの話を振ってくれるようになってうれしかったです。ほんとに書かない後悔より書いて大成功でした。
ミッフィーに関してはしつこいくらい主張しているので、誕生日などのお祝いされる場面ではミッフィーが増えに増えます。「生方さんにはミッフィーあげとけば間違いない」というほんとに間違ってない知識が知人の内で広まってくれています。ありがたいー。
特にすきなミッフィーのビジュは、両手をワー!と広げて楽しそうに踊ってるやつ。絵本『うさこちゃんのだんす』の表紙です。顔は特別楽し気なわけじゃないです。いつものミッフィー。目が点で、お口はばってん。「たのしくダンスをしました!」っつってんのに無表情。それがすき。表情が極端にないのがすき。ここまで「かわいい!」に全振りしてお話したので、その他の要因による「なぜミッフィーがすきか」をご説明します。
そのまんま、表情が極端にないから、です。キャラクターってどうしても過度に表情が豊かなことが多い。それはそれでかわいいんですよね。もちろんかわいいです。そういうキャラクターはかわいくないって話ではなくて。
わたしは自分のコンプレックスもあってか、表情が豊かすぎるものに薄っすらと恐怖を感じます。人に対してもちょっとある。表情が豊かってすごく良いことなのに、頭ではわかってるのに、なぜか「怖い」と思ってしまう。実際は自分みたいな不愛想なやつがいちばん他者に恐怖を与えてるんですよ、わかってます、わかってます……。
そんな自分にとって、ミッフィーのような表情の変化がないキャラクターはすごく安心感がある。見てて、触れてて、落ち着く。サンリオキャラクターも同じ系統だと思います。アニメになると口が描かれてそれなりに表情があるけど、とてもささやかな変化に留めてくれている(と勝手に認識している)。イラストだとキティちゃんみたいに口が描かれてなかったり、他のキャラクターもチョンっておちょぼ口みたいな子が多い。かわいいし、安心する。
特にキキララがすき。うさぎがすきなのでマイメロもマロンクリームも捨てがたいんですけど、キキララがお星さまの擬人化って知った時の「お星さまの擬人化……?」で完全に興味をそそられてしまい、虜に。設定勝ち。キティちゃんの身長は「りんご5個分」なのに、キキララちゃんは「ふたり合わせてお月様と同じくらい」なんですよ。おもろすぎる。カップルと見せかけて実は双子の姉弟! とかまじでどうでもいい。設定おもろすぎる。りんごに換算したい。
“ぬい活”という言葉も広まってきて、「え、いい大人がぬいぐるみ…?」みたいな偏見は薄まってきている気がします。実際どっかのなんかの研究で、ぬいぐるみが人間に安寧を与えることは証明されているそうです。このストレス社会、それぞれの癒しを見つけて生き抜くしかないですからね。名俳優・大和田伸也さんもぬい活する時代ですからね。久しぶりにツイッターの存在意義を感じました。レッツぬい活。レッツ、ミッフィースタイル。
生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。’23年10月期の連続ドラマ「いちばんすきな花」、’24年7月期の連続ドラマ「海のはじまり」全話脚本を担当。