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TIMELESSPERSON

2024.03.20

生方美久の性格「クソ真面目」を自覚したのは小学生

令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】

真面目に飛び出た杭

年明けごろから、次回作の準備のために絵本を読み漁っている。最初は本屋でどっさりと気になる絵本をまとめて買っていたが、絵本は意外にも高価。そして我が家は激狭。なので最近はもっぱら図書館を重宝している。税金ありがと~!という気持ちにもなれる。図書館で絵本を読み漁るためにバカ高い税金を払ったと思うようにしている。みんな、確定申告お疲れさまでした。政治家のみんな、納税しましょう。

絵本たちを物色していたら、14匹シリーズを見つけた。14匹のネズミたちが引っ越したり雪遊びしたりというシリーズものの絵本である。小学生のとき、わたしはこの絵本をきっかけに自分の性格を自覚した。

国語の教科書に載っていたのか、先生が絵本を読み聞かせたのか、その辺の記憶は曖昧なのだが、とにかく授業の一環で「14匹のネズミの絵を描きましょう」というのがあった。お話を読んですきな場面を絵で表すというもの。絵を描くのは得意ではないがすきだった。画用紙に思うがままに絵を描いた。描けた。描いた絵は教室の後ろにクラス全員分が飾られた。……他のクラスメイトたちの作品と並んで、やっと気が付いた。みんな14匹も描いてない。ネズミは描いてる。さすがにネズミを描かないほど尖った小学生はいなかったが、みんな打ち合わせしたかのように、画用紙の中に描かれたネズミは5匹とか、少ないと2匹とかなのだ。わたしですか。わたしの画用紙には小さな14匹全員がギュッと縮こまって描かれていた。もはや何の場面かわからない。とりあえず14匹全員を描くことが優先されている。それがバレバレのとても安易でカッコ悪い絵だった。恥ずかしかった。まず真っ先に襲って来た感情は、“恥ずかしい”だった。

性格を表す言葉に【真面目】というのがある。良い意味であるはずのこの言葉、最近は少し良くない印象を持つことが多い気がする。「真面目すぎるよね(笑)」「真面目が故に(笑)」「良い意味で真面目(笑)」とか。なんだか(笑)がが付く感覚がある。そもそも「良い意味で」を付けちゃうときって、あんま良い意味じゃない。心ばかりのフォローでしかない。わたしはまさに、良い意味じゃない真面目だ。クソ真面目、みたいな言葉がちょっと似合う。

クソ真面目小学生によって14匹のネズミが窮屈そうに画用紙に寄せ集められたその絵を見て、のびのびとした表情豊かな3匹のネズミを描いたクラスメイトは「クソ真面目が作品に出過ぎ~!」と思ったに違いない。さすがに言われてないし、被害妄想なのは自覚している。でもそれに近いことを思った子はきっといる。実際に友人に言われた言葉は「ほんとに14匹描いたの?」だったと記憶している。そのあとに続く言葉は「すごいね」か「バカなの?」か「さすがクソ真面目」か。

あー恥ずかしい恥ずかしい。早くこの絵をみんなから見えないところに隠してください。なんの恥晒しなんですかこれはつらいつらい……と思っていたら、なんかの賞?をもらった。よくわからないが、先生がわたしの絵をなんかに選んでくれた。最近の小学校では少ないのかもしれないが、「クラスでいちばん良いのがコレ」みたいに先生が児童の作品を選ぶことはよくあった。なんの代表なのか、なんの賞なのか、まったく記憶にないが、とにかく「良い」という基準で選ばれた。恥ずかしかった。選ばれたことがさらに恥ずかしかった。真面目さが評価されるなんて日本すぎるじゃん、と思った。なんだかなぁと思っていたら、選んでくれた先生が「14匹全員描いたのすごいね」みたいなことを言ってくれて。わたしは素直に「みんな(クラスメイト)、みんな(14匹)描くと思った」みたいなことをブツブツ言って。でも先生は、「みんながやらないことをしたのすごいね」と言った。みんながやらないことをやってしまって恥ずかしかったので、ただただ恥ずかしかった。

同じものを観たはずなのに、ある人は「新しい」と評価し、またある人は「セオリーに反している」と批判する。テレビなんかのメディアでは特に「古臭い」という批判を浴びがちだけど、いざ見たことのない新しいものを提示されたら、多くの人がまずは拒否反応を示す。そういうものだ。

どんな世界でも、みんながやらないことをやれる人が求められていて、それでいて、みんながやらないことをやる人はひとまず非難されるというのもあるあるなのだ。そういう構造になっている。出る杭は打たれる、なんて言葉があるように、「みんな」じゃない人は基本的に悪であり、トンカチで打ち込んで良いということになっている。人生で最初に入る牢獄である小学校では耳にタコができるまで「みんなで」と連呼される。みんなが正義。それが社会。話し合いましょ~♪だ。みんなじゃないのは不適切なのだ。

過去に、脚本の仕事を「恥ずかしい」と称されたことがあって、ダメージを受けつつ納得した。誰かと同じことをやっていたらダメな仕事。でも「新しい」をつくりつつも、セオリーに反してはいけない仕事。恥ずかしい仕事。

小学生のわたしへ。クソ真面目に14匹全員描いちゃって、恥かしかったね。あなたはそれから20年以上が経ち、元号も変わった今、恥ずかしさと共に仕事をしています。前例のないことをするとトンカチで打ち込まれるけど、それを支えてくれるたくさんの手や声や気持ちに救われて、なんとか新しいものをつくろうと奮闘しています。あなたが3匹のネズミを描く女の子だったら、こんな特殊な仕事には就かなかったかもしれない。「主演以外をそんなに描かなくていい」って批判されたことがあるけど、無理だよね、ネズミを14匹描く小学生だったんだから。4人主演までは実際に書いたけど、少なくとも14人主演まではできる気がしてる。真面目であり続けてね。良い意味で。

生方美久(うぶかたみく)
1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。’23年10月期の連続ドラマ「いちばんすきな花」の全話脚本を担当。

TEXT=生方美久

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