なんだか調子が悪い…それはもしかしたら、日々のストレスで体のバランスが崩れているせいかも。そこで役に立つのが、心と体を内側から整える「漢方」。セルフメディケーションとしての漢方の取り入れ方を「わたし漢方」の水沼未雅さんがナビゲート。
夏に消耗したエネルギーを回復させて、冬に備える大切な季節、秋。前回解説した通り、秋になると体調だけでなく、心の不安定さを抱えてしまう方も多く見られます。
この時季特有の精神的なゆらぎは「秋うつ」と呼ばれ、放置したままでは寒さの厳しい冬にまで不調を引きずってしまいがちです。今回は、体質や症状ごとに漢方における「秋うつ」へのアプローチ例を解説していきたいと思います。
漢方における「体質」とは?
「心の不安定さ」と言っても、人それぞれの体質によって抱えているお悩みは様々。考えられる原因や出やすい症状、アプローチも体質が違えば大きく変わってきます。
漢方の考えに基づいて心と体のバランスを整えていくうえで大切なのは、“自分の「体質」を理解すること”です。
漢方には、「気・血・水」の考えに沿った「体質」というものがあります。「気・血・水」というのは簡単に言うと、身体を構成する大切な三要素です。この三つの要素が体内をバランスよく、正常に巡っている状態が“健康”であると考えてください。
反対に身体に不調が出るのは、どこかが欠けてしまっているということです。どれが足りていないのか、循環していないのかは、人によって違います。この違いからわかる身体の傾向のことを私たちは「体質」と呼んでいます。
そのため、お悩みや体質に合わせて漢方のアプローチも変わります。精神的な悩みに効く漢方はこれ!というものではなく、なぜ自分が不安定になっているのかを見極めて、自分の悩みや体質に合った漢方を使っていくことが大切なのです。
あなたはどのタイプ?体質別秋うつ解消法
秋に精神的なお悩みを感じるとき、まず重視するのが「気」の働きです。
●「気」の巡りが悪い“気滞タイプ”
【特徴】
・苛立ち、怒り、気持ちの落ち込みなど精神的な不安を抱えやすい
・自律神経の働きが弱りがち
秋うつに悩んでいる方の中で、気滞は最も多く見られる体質です。
長い自粛生活やコロナ不安、仕事や生活上での変化など、知らず知らずのうちにストレスが蓄積しているというケースも。気滞の特徴的な症状としては、のどに何かが詰まったような違和感やお腹の張り、胸やみぞおちの苦しさなどが挙げられます。女性の場合は生理周期が乱れたり、生理前に胸が張るという方も多いです。
●「気」が不足した“気虚”タイプ
【特徴】
・疲れや倦怠感が目立ち、免疫力が低下している
・やる気、元気、気力が湧いてこない
同じ気の不調でも、気が不足した状態の気虚が目立つ場合は、気そのものの補充をしていくアプローチが合うケースもあります。夏に暑さの影響で体力が落ち込んでいたり、不眠や寝ても疲れが取れないような状態が続いていたという方は要注意です。
ほかの体質も抱えているかも?
「気」の働きが悪い状態になると精神が不安定になりやすいので、気の巡りや不足を解消するアプローチをメインに考えることが多いのですが、打ち手はこれだけではありません。
体質がひとつだけで、ほかの血や水は全く問題がないという方はあまりいないからです。
気は血や水を巡らせるための原動力としても働くので、気の停滞や不足とともに血や水の弱りも見られます。
●血が不足すると…
血は血液だけではなく、体全体に栄養を運んだり、精神を保つ役割があります。特に女性は月経の影響から慢性的に血を消耗しやすい状態にあります。血が不足すると「血虚」という状態になり、精神を保つ働きが弱くなります。
●水が停滞すると…
水分代謝が悪くなるので、体の重だるさやめまい、頭痛をはじめとする体全体の痛みなどを感じやすくなります。体がだるいと思考も重くなりがち。水の巡りを良くすることが精神的な回復に繋がるケースもあります。
このように、同じ体質でも人によって出やすい症状は異なります。漢方は症状だけを見て決めるのではなく、どうしてその症状が出ているのかを見極めて、体質に合ったものを使うことが大切です。
さらなる不調の種にも
秋うつの症状がさらなる不調に繋がってしまうケースもあります。
たとえば、気分が落ち込むことで睡眠の質が下がったり、寝すぎてしまうことで規則正しい睡眠が崩れてしまったり、不眠症を発症してしまうという方はこの時期多く見られます。
私たちの身体のはたらきは、お互いに影響しあって成り立っています。
どこかひとつが崩れたまま放置してしまうと、症状が慢性化したり、より多くの不調を抱えることになってしまったり、健康からどんどん遠ざかってしまいます。
次回の記事では、このような状態にならないために、どのような体質の方にもおすすめしたい「生活習慣の改善」について解説していきます。
生活習慣と心の安定はとても深く繋がっています。ぜひお読みいただき、参考にしていただければ幸いです。
水沼未雅(みずぬまみか)
わたし漢方創業者・薬剤師。京都大学薬学部卒業後、東京大学大学院薬学系研究科で博士号(薬学)を取得。アストラゼネカで新薬の上市プロジェクトにかかわった後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでヘルスケア関連プロジェクトを担当。漢方で自身の不調が改善した経験から、「もっと漢方の良さを広めたい!」という想いで2017年に『わたし漢方』創業。
わたし漢方
LINEで体の悩みを薬剤師に相談すると、自分にあった漢方薬を自宅に配送してくれるオンライン漢方相談サービス。カウンセリングはすべてLINE上で、最初の問診は24時間相談可能。漢方の専門家が直接お悩みに回答。初回の問診はすべて無料なので、気軽に相談できます。
https://www.watashikampo.com/
Instagram @watashikampo
わたし漢方の記事をもっと読む。