なんだか調子が悪い…それはもしかしたら、日々のストレスで体のバランスが崩れているせいかも。そこで役に立つのが、心と体を内側から整える「漢方」。セルフメディケーションとしての漢方の取り入れ方を「わたし漢方」の水沼未雅さんがナビゲート。
涼しく過ごせる日が増え、少しずつ秋が深まってきました。
秋は夏に消耗したエネルギーを回復させて、冬に備える大切な季節。ゆったりとリラックスした気持ちで秋の夜長を楽しみたいですよね。
しかし、秋になると体調だけでなく「なんだか気分がスッキリしない…」と感じる方も多いのではないでしょうか?
今回は、なぜこのような「秋うつ」を発症してしまうのか、不調が起こる原因と予防方法を、漢方医学の目線から解説していきます。
深まる秋と増える「秋うつ」とは?なぜ発症する?
実は、夏から秋にかけて日照時間が短くなる季節は、気力がわかなかったり、気分の落ち込みや不安を抱えやすいといわれています。
日照時間が影響するこれらの症状は「季節性うつ病」といい、特にこの時期に起こるものを「秋うつ」と呼びます。
秋に「うつ」になりやすい季節的な理由には、夏の高温多湿による身体へのダメージの残り以外に、日照時間の減少が挙げられます。
人間は日光を浴びると、脳内で“幸せホルモン“といわれるセロトニンが生成されます。セロトニンは、次のふたつをコントロールして、心のバランスを保ってくれます。
・ノルアドレナリン…ストレスを受けると自律神経を刺激して活動的な状態をつくる
・ドーパミン…ストレスを解消した時の喜びや達成感を与える
しかし、秋になって日照時間が減ることで、セロトニンを作る量は減少しがちになります。このコントロールが上手くいかなくなると、アンバランスが生じて攻撃的になったり、不安や気分の落ち込みなど、うつの症状が出やすくなるといわれています。
さらに、女性ホルモンとも関係が深く、女性ホルモンが低下するとともにセロトニンも減少するため、特に更年期の女性は注意が必要です。
「秋うつ」の代表的な症状は?
秋うつの代表的な症状としては以下のような精神的な不安定さが挙げられます。
・気分が落ち込む
・やる気が出ない
・寝すぎる
・だるい
・不安感がある など
これらは更なる不調の種にもなり、気分が落ち込むことで睡眠の質が下がり不眠症に陥ってしまうケースのように、様々な不調へと繋がってしまいます。
他にも、自律神経が弱っている方では寒暖差や台風、雨などの気圧・湿気の変化にも弱いため、頭痛やめまいなどが起こりやすくなります。
漢方医学での考え方――「陰陽五行説」とは?
秋うつを漢方医学の目線で読み解くうえで重要なのが、「陰陽五行説」という考え方です。
陰陽と五行、どちらも元は古代中国の自然哲学の思想で、万物は陰陽によってバランスが保たれ、五行の要素から成って互いに影響しながら、循環していくと考えられていました。これを人の体に当てはめて考えたのが、漢方医学における「陰陽五行説」です。
身体の働きは好調も不調も互いに影響し合いながら、その相互作用によって様々な変化や循環を見せていく。そうしてバランスよく成り立った状態が良い、という考え方です。
漢方医学において、体は「肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)」の「五臓」といわれる五つの器官に分けられます。同じように季節も五つに分類されて、五臓にそれぞれ影響をもたらします。
この考えに「秋」という季節を当てはめて考えてみましょう。秋は徐々に気温が下がって空気が乾燥してくる季節。乾燥により不調が起こる「燥邪(そうじゃ)」の影響が強く出るため、身体全体が乾きやすくなります。
そんな秋に影響が出やすいのが、「肺(はい)」。
呼吸器の機能を担っているので、咳、鼻水、皮膚の乾燥、痒みなどの不調が出やすいのですが、実は五臓における「肺」の働きはこれだけではありません。
肺では呼吸を通して新しい「気」を取り入れて、汚れた「気」を排出する働きも担っています。
気は身体のエネルギーであり、パワーや気力の源。これが滞ったり、不足したりすると様々な不調へと繋がってしまいます。
寒さの厳しい冬を健康な状態で迎えるためにも、弱った心と体のバランスを整えることはとても大切です。
ではそのためには、どのような対策をしていけば良いのでしょうか?
次回の記事では、体質や症状ごとに漢方でのアプローチ例を解説していきます。ぜひお読みいただき、参考にしていただければ幸いです。
水沼未雅(みずぬまみか)
わたし漢方創業者・薬剤師。京都大学薬学部卒業後、東京大学大学院薬学系研究科で博士号(薬学)を取得。アストラゼネカで新薬の上市プロジェクトにかかわった後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでヘルスケア関連プロジェクトを担当。漢方で自身の不調が改善した経験から、「もっと漢方の良さを広めたい!」という想いで2017年に『わたし漢方』創業。
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