貧血や低血圧に悩む方は、男性に比べて女性が多いといわれています。忙しい現代社会を生きる女性に、古来より伝わる漢方薬はどのような手助けをしてくれるのでしょうか?(漢方専門家/わたし漢方 さっち先生)
漢方で女性の“名もなき不調”を整えよう
月経痛などは西洋薬を使えば一時的に痛みを止めることはできますが、根本的に痛みの出やすい身体のままであることに変わりありません。また、そのようなお悩みのほとんどは西洋医学において病気と見なされないものも多く、改善したいと望んだまま何年も放置しているケースがよく見られます。
急性症状の対処を得意とする西洋薬に比べて、漢方薬はこのような“名もなき不調”を時間をかけて少しずつ整えていくことを得意としています。
前回解説したとおり、漢方医学の観点から身体や不調を見るにあたっては、基礎となる身体の3要素「気・血・水」と身体の傾向「体質」という大切な考え方があります。女性に多い不調にあてはめて考えてみましょう。
漢方視点で見る「月経トラブル」
●月経痛
栄養を運んで臓器を潤す役割のある「血」が滞ると、身体が冷えたり血流が悪くなるので月経痛が起こりやすいとされています。ほかにも、ストレスや食生活の乱れなどが原因となる場合もあります。ひどい方は吐き気や嘔吐、貧血なども見られ、日常に支障をきたす方も。
●PMS(月経前症候群)
その名の通り、月経の数日前から感じるようになる特有の不調です。自律神経とホルモンバランスの変化が関係しており、体の不調から精神的な不調まで幅広く、症状の重さも人によってかなり差があります。
「気」の不調…自律神経が乱れると気滞の状態になりやすいので、イライラや不安といった精神的な不調や不眠、胸やお腹の張り、便秘、下痢などの症状を抱えやすくなります。
「血」の不調…子宮や骨盤周りをはじめとした体全体の血液循環が悪くなるため、瘀血体質の方は下腹部痛、頭痛、肩こり、のぼせ、冷えのような症状が見られます。
「水」の不調…ホルモンの変化によって体内に水分を貯留しやすくなるため、水滞体質の場合はめまいやむくみ、吐き気などがひどくなるケースが見られます。
●月経不順
月経周期は一般的に、約25日〜35日程度が正常の範囲とされています。
・気虚体質…早まる傾向
・気滞体質…周期がバラバラで安定しづらい
・血虚・瘀血・水滞体質…遅れる傾向
同じ月経不順でも、体質によって原因はさまざま。ストレス過多や過度なダイエットが背景にある場合もあります。
●不正出血
月経時以外に出血が見られることをいいます。検査しても原因がわからない場合は、体質が原因となっているかもしれません。生殖器のはたらきを司る「腎」が弱ったり、血液と密接な血の不調や体液の分泌を調整する気の不調が目立つと不正出血を起こしやすいとされています。
あまりにもトラブルがひどい場合は卵巣や子宮になんらかの病気を抱えている可能性も考えられるため、医療機関への受診も検討してくださいね。
漢方視点で見る「更年期障害」
年齢を重ねるとともに避けては通れないお悩み。女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌が減り、身体が不安定な状態になることでさまざまな症状が出ます。女性の一生の中で最も目まぐるしくホルモンのバランスが変わる時と言っても過言ではないほど、変化とトラブルの多い時期といえます。
「気」の不調…自律神経の乱れから、イライラなどの精神的な不安定さ、ほてり、ホットフラッシュ(急な発汗)など、更年期障害と聞いてイメージされやすい症状が挙げられます。子育てや介護、仕事などで忙しくストレスが溜まっている方に多く見られます。この状態が長引くと気虚の状態になりやすく、気力がわかなくなる、疲れが抜けない、免疫の低下などの症状が起こりやすくなってしまう場合もあります。
「血」の不調…血が不足した血虚は動悸や息切れ、不眠といった自覚症状が多く、感情面ではイライラよりも不安感を覚える方が多いのが特徴。のぼせよりも冷えが気になる方が多いです。血が滞った瘀血は頭痛・肩こりのような痛みやシミ・クマなどのお肌のお悩みを抱える方が多いのが特徴。子宮筋腫を患ったことがあったり、月経痛が重い方も多く、上半身はほてるのに下半身は冷えるといった冷えのぼせが特徴です。
「水」の不調…水滞体質に悩む方が多く、めまいや耳鳴り、むくみなどの水分代謝の悪さが目立つのが特徴。吐き気を感じる方も多く、ひどくなると嘔吐を繰り返す方も。
漢方視点で見る「貧血」「低血圧」
貧血の最も多く見られる原因は血の不足。女性には月経があるため、男性と比べて血が不足しやすい方が多く、月経等での出血が多すぎて血が不足している方もいらっしゃいます。
血虚は基本的に痩せ型であまり身体が丈夫ではなく、顔色の悪さやお肌のお悩み、冷え性などを抱えている方も多く見られます。
食べたくない、胃腸が弱いので食べられないという方はまず消化機能を改善していくアプローチが合う場合もあります。私たちは食べ物から栄養を受け取っているので、そもそも食欲がなかったり、吸収・消化の機能が不調を抱えていると血や気が少なくなり、身体の元気がなくなってしまいます。
漢方視点で見る「冷え」
冷えに悩む女性はとても多く、冷え方もさまざまです。単に温めれば良いと考えがちですが、冷えタイプによって有効なアプローチはかなり異なります。
●末端冷えタイプ
手足が氷のように冷たくなる末梢の循環が悪い方は血の不足が考えられます。血を補い、血行を促すことで体を温めていくアプローチをメインに考えます。
●お腹冷えタイプ
胃腸が弱い、冷えるとお腹を下す方は全身が冷えていることが多く、体の芯から温めるのが大切です。消化機能の改善とともに体力をつけながら冷えを取り除いていきます。
●冷えのぼせタイプ
更年期障害やストレスなど精神的な負担から冷えを感じる方も。下半身は冷えるが上半身は暑い「冷えのぼせ」が特徴で、気滞や瘀血といった体の停滞を改善するアプローチを取る場合が多いです。
●水溜まり冷えタイプ
水分代謝が悪いことで起こる水毒により、むくみや頻尿、足腰の冷えが起こりやすい方は水はけを良くすることで体質の改善をしていきます。
体質を改善するなら、生活習慣を整えることから
忙しい現代を生きる私たちは、厳しくなった気候や自身を取り巻く環境の変化、人間関係など、毎日たくさんの不調の種と戦っています。普段どおりに生活しているつもりでも、自分で思いもしなかった種が慢性化する不調の原因となる場合もあります。
そんな不調の原因をなるべく減らすために大切なのは、栄養のある食事や質の良い睡眠、そして生活リズムを整えること。漢方によるアプローチや症状は体質によって異なりますが、生活習慣の改善はどのような体質やお悩みの方にとっても重要です。
好きなことをするのは心の栄養補給に有効ですが、「これが私のストレス解消法」と思っていても、暴飲暴食や夜ふかしが続けば体には良くないですよね。適度なバランスを保ちつつ、自分に合ったリラックス方法を見つけていきましょう。
執筆者/漢方専門家 さっち先生
LINEでいつでも相談・処方検討できる漢方薬専門店「わたし漢方」の漢方アドバイザー。「不調とともに生きる女性の毎日を快適にし、やりたいことに全力投球できる手助けがしたい」という想いをもとに、東洋医学に基づいた体質改善の秘訣や健康食の紹介、漢方を取り入れた養生法などを発信している。
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