女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
卵巣の卵がなくなる日はいつでしょうか? 卵巣の寿命とともに、女性ホルモンも分泌しなくなります。卵巣にある卵がだんだん少なくなって、卵巣の機能も衰え、排卵しなくなって女性ホルモンが分泌しなくなるのが閉経です。閉経の平均は50.5歳。更年期は、女性にとってどんな時期で、女性の体にどんな変化が起きているか、を知ることで、プレ更年期の不調対策のヒントになります。プレ更年期、更年期のことをまとめました。
37歳を過ぎると卵は急速に減少します
卵子の元になる卵母細胞は、まだ母体内にいる胎児期が最も多く、約700万個もあります。その後、急速に減少していき、オギャーと生まれたときにはすでに約200万個に。
排卵が始まる思春期には、30万個まで減少しています。そのうち、排卵する卵子の数は400~500個(1%以下)。排卵しなくても、自然に減っていってしまうのです。
卵母細胞の数は、決して増加することはありません。37歳ころを過ぎると急速に減少していき、卵母細胞の数が約1000個以下になると閉経します。閉経年齢は、平均50.5歳。
卵巣は卵の巣と書きますが、50歳ぐらいになると、もう卵の巣とはいえなくなってしまいます。この閉経をはさんだ10年間、50歳が閉経だとすると、45歳ぐらいから、閉経後の5年間、55歳ぐらいまでが更年期です。35歳くらいから45歳くらいまでをプレ更年期と呼ばれています。
卵巣の寿命とともに女性ホルモンが減っていく
女性ホルモンは、卵巣から分泌されるため、卵が減っていく35歳ころから、女性ホルモンの分泌量もだんだん減っていきます。これがプレ更年期。女性ホルモンの分泌量が減ることで、生理の出血量が少なくなる人や、生理の周期が短くなる人などさまざまです。
若いときに32日周期だったのが、30日になり、28日なり、26日になり、そして人によっては「私、毎月2回ずつ生理がくるんです」という人もいます。生理が20日周期ぐらいになっているのです。その後、生理周期は間隔が3ヵ月、6ヵ月・・・と、どんどん開いてきて、閉経へと至ります。また、生理周期はそのままなのに、量だけ減る人もいます。
逆に、最初から生理周期の間隔が2か月、3か月、4か月・・・と開いていき、閉経に至る人も。
個人差が大きく、30代からそのような症状が出てくる人もいれば、45歳を過ぎてから、あるいは50歳を過ぎてからそのような症状が出る人もいます。
女性ホルモンは、このように、年齢とともにだんだんと減っていきますが、平坦に下がっていくのではありません。女性ホルモンは、毎月、排卵と生理によって大きく揺れ動いていて、揺れ動きながら減っていきます。そして、閉経の時期が訪れるのです。
女性がダイエットをしたあとなど、1年間生理がなくなってしまうということがありますが、それは閉経ではありません。なぜかというと、卵巣の中に卵がきちんとつまっているからです。
女性ホルモンの低下が老化を連れてくる
女性ホルモンは卵巣から出て、体内の血液を巡って働きます。いちばんよく働いているのは、子宮の中。
子宮内膜という赤ちゃんを育てる内膜を厚くします。この子宮内膜は毎月はがれ落ちて、生理の出血となって出てきます。また、乳房をふっくらとさせたりします。このように乳房と子宮で、女性ホルモンはよく働いています。
それ以外にも女性ホルモンが働いている場所は、いろいろあります。たとえば、肌や粘膜なども、女性ホルモンが働く場所です。
血管の壁、腸の壁、筋肉、骨、関節などでも働きます。それから脳の中でも、女性ホルモンが働く場所があるとことがわかっています。
昔は、女性ホルモンは子宮や乳房だけで働くと思われていましたが、最近はそれ以外にも全身を巡って、女性の健康と美容にかかわるホルモンだということがわかってきたのです。
全身の元気にかかわっている女性ホルモンが減ってしまうと、老化につながります。女性ホルモンが一気に減る更年期以降、老化が進みやすいのはそのためです。
プレ更年期から、女性ホルモンは減ってきますから、老化が徐々に始まっているのです。
出血量が減る、生理間隔が短くなった時の対策は・・・
では、生理の出血量が減ったり、生理間隔が短くなったらどうしたらいいのでしょう?
生理のときの出血量が減ってきたと感じたり、出血が5日間から3日間くらいで終わってしまったり。キレイな鮮血でなく、生理の終わりころのような出血になってしまったり。これは、生理の出血量が減っている状態です。
また、以前は生理の間隔が約30日だったのに、短くなって20~24日くらいですぐ生理がきてしまったり・・・。
生理の間隔(周期)が短くなってくるのも、生理の出血量が減ってくるのもプレ更年期の予兆です。
生理のときの出血は、子宮内膜がはがれ出てくるもの。子宮内膜は、エストロゲンの作用で厚くなって、その子宮内膜が生理の出血となって落ちてきます。しかし、エストロゲンの作用が弱いと、子宮内膜が厚くならずに排卵し、その後、生理がきてしまうので、出血量が少ないのです。
卵巣の働きが弱まりエストロゲンの分泌量が下がるため、脳が焦って「卵をもっと出せ。小さくてもいいから早く出せ」と指令を出しているのです。卵巣機能が落ちてきている証拠で、プレ更年期の症状です。
プレ更年期対策には低用量ピルが選択肢に
貧血はないでしょうか?
プレ更年期で生理の間隔が短くなって、24日とか22日周期で、しょっちゅう生理がきて出血すると、貧血になることもあるので注意しましょう。
鉄分をいつもより多めに摂るように心がけます。鉄分をたくさん含んだ小松菜やパセリ、クレソンなどの食品やサプリメントを利用してもいいと思います。
生理間隔が短いのに、たまに出血量が多くなるときがあると、貧血で調子が悪くなります。めまい、立ちくらみ、階段を上がるとドキドキする、すぐ疲れるなどの症状があったら、一度、婦人科などのクリニックで貧血の検査をしてみましょう。
貧血がなければ、生理間隔が短くなっても、生理量が少なくなっても、それだけでは特に医学的な異常とはいえません。
でも、生理の間隔が短いと、出血がしょっちゅうあって予定が立たず不便ということもあります。それに、プレ更年期のような不調が起こっているとしたら、生理を順調にして、卵巣機能を正常にしたいとも思いますね。
低用量ピルは、卵巣機能を休ませ、生理周期を安定させ、女性ホルモンのバランスを整えることができます。毎月のホルモンの波による不調に煩わされることなく、女性ホルモンの量を一定にすることができます。出血量も減って生理が楽になります。
婦人科で相談して処方してもらうことができます。ぜひ、プレ更年期対策の選択肢のひとつに加えてください。
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