女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。※2021年2月4日更新(最新情報に基づき加筆・修正しました)
だるい、眠い、イライラなど生理開始の約3~10日前から始まる心と体の不調のうち、生理開始とともに消失する場合はPMS(月経前症候群)です。この症状がある人は、生理のある時期の日本女性の約70%にも及ぶといわれています。なかでも5.3%の人は、社会生活に影響があるほどの不調があり、治療対象になるとの報告も(※1)。多くの女性を悩ますPMSの賢い乗り切り方をご紹介します。
顔がパンパン、手足のむくみ、太った!…はPMSのせい
PMS症状のある時期は、女性ホルモンのプロゲステロンによって脳内物質(GABA)や水分代謝が影響を受け、体調が不安定になると言われています。症状の1つが、むくみです。この時期は水分の溜め込みによって体重も増えやすくなります。
対策として、食事や運動など、日常生活の見直しが大切です。不足しがちなビタミン、ミネラルを十分補給しましょう。大豆製品(豆腐、納豆、豆乳など)は、むくみにくいカリウムや女性ホルモンの変動の症状の緩和に役立つ大豆イソフラボンが豊富です。ほかにカリウムが豊富な食品は、ほうれん草、海藻、果物などがあります。また、甘酒もビタミンB群、ミネラル、乳酸菌が豊富でおすすめ。甘酒に豆乳とバナナを加えて朝食にしてみるのはいかがでしょう。
PMS期のダイエットは要注意!
気をつけたいのが、PMSの症状が出ているときのダイエットです。PMSによるむくみを脂肪がついたと勘ちがいして食事制限をすると、全体的に摂取できる栄養量が減ってしまいます。そのため、この時期に必要な栄養素がさらに不足しがちに。食事や水分摂取を減らすのは逆効果です。
無理なダイエットをすると、PMSの症状はますます強くなります。少しでも快適に過ごすためには、バランスのよい食事を摂って、塩分を控えめに、そして水分を溜めこまないようにするのがコツ。思い切ってこの時期、ダイエットはお休みしましょう。
セルフでできる、むくみ解消マッサージ
下半身のむくみには、お風呂上りに足首からそけい部までを優しくマッサージします。
まず、足首からふくらはぎをひざ裏に向かって、もみあげるようにマッサージ。前と後ろを交互に行います。その後、ひざ上からそけい部までを行います。太ももは両手でつかむようにして、もみ上げるようにマッサージ。最後に、足首からそけい部まで、全体を流すようにして終了です。
アロママッサージもぜひ試してみてください。水分排泄を促すサイプレスなどの精油(ホホバ油10㎖に精油1滴が目安)を使ってマッサージすると、余分な水分をさらに排出できます。マッサージに使うのは、ブレンドオイルやクリームなどでもOKです。
ところでPMSとはいったい何?
PMSが起こる原因は生理に関係がありますが、症状は人それぞれ。いったいどのようなメカニズムなのでしょうか? 実は、原因ははっきりとわかっていません。一説によると、排卵後に訪れる“黄体期”の女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌の急激な変動が関わっているとのこと。生理周期が28日の女性の場合では、排卵が起こるのはちょうど生理が始まる14日前。この排卵を境に、ふたつの女性ホルモンが影響しあっていると考えられるのです。
PMSの症状が日常生活に支障をきたすようなときは、一度、婦人科専門医を受診してみましょう。
婦人科での治療法は、ピル、漢方薬、抗不安薬、カウンセリングなどさまざまあり、ドクターと相談しながら自分に合ったものが選べます。
PMS対策に効果のある低用量ピルや漢方薬
低用量ピルには、エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンが含まれています。排卵を抑えるとともに、子宮内膜が厚くならないようにして、痛みの原因となるプロスタグランジンという物質の産生を抑えます。
その影響で、生理痛や生理周期によって起こるさまざまな不調が改善。PMSの多くの症状ももちろん改善します。ニキビや吹き出物には、特に効果があります。
低用量ピルは、避妊も兼ねたい人には特におすすめ。種類はたくさんあるので医師と相談を。クリニックによって価格は異なりますが、1ヵ月分1シート¥2,000~¥3,000程度(診療費別)が多いと思います。
また、漢方薬も有効です。「五苓散(ごれいさん)」などの漢方薬もむくみに効きますし、ニキビには、「「清上(せいじょう)防風(ぼうふう)湯(とう)」も。「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」は貧血や冷えの症状に、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」はイライラや気分の落ち込みに効果があります。「桂枝茯苓丸加(けいしぶくりょうがんか)薏苡仁(よくいにん)」は生理前の下腹部痛や肩こり、頭重、めまい、ニキビなどに。PMSの治療で処方される漢方には健康保険が使えます。
※この記事は専門医チームによる監修を受けています。
(※1)T.Takeda.et.al.,Arch Womens Ment Health 2006
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