女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
小林麻央さんの訃報に触れ、心からお悔やみ申し上げます。私も乳がんを経験したひとりです。周りの乳がん経験者からも麻央さんの死を悼む声がたくさん寄せられています。麻央さんは乳がんを公表し、最後までメッセージを発信し続け、自分らしく生きました。多くの女性が勇気づけられ、励まされたと思います。一方で、若い麻央さんが亡くなったことで、不安になるアラサー世代の女性も多くいます。乳がんに関してはさまざまな情報があふれています。正しい知識を得て、冷静に行動してほしいと思います。「どんな人がかかりやすく、何に注意すべき?」について、まとめました。
20代、30代の乳がんは、乳がんの3%未満しかありません
34歳以下の乳がんのことを「若年性乳がん」と言います。今、乳がんは、日本女性でかかる人が最も多いがんで、罹患者数、死亡者数も増加し続けています。けれども若年性乳がんは、40代、50代の乳がんと比べて決して多くはないのです。
乳がんは、圧倒的に40代〜50代女性がかかる率が高いがんです。今、日本では11人に1人が乳がんになると言われています。
これは、欧米女性に近づくほどで、年々その数は増加しています。これにくらべて34歳以下の若年性乳がんは、1割にも満たない数です。*1
また、若年性乳がんは、乳がん全体の3%未満というデータもあります。*2
(*1国立がん研究センターがん対策情報センター 年齢別乳がん罹患率の推移より)
(*2厚生労働省 若年性乳がん患者のサバイバーシップ支援プログラムより)
20代、30代で乳がんにかかるリスクは決して高くありません。必要以上に心配する必要はありません。
20代30代で乳がんを注意すべきは、どんな人?
34歳以下の若い世代で、乳がんに気をつけたい人は、血縁に乳がんや卵巣がんの方がいらっしゃる場合です。
若年性乳がんは、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」とかかわっていると言われています。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが告白したことでも有名です。
ただし、遺伝性の乳がんは、乳がんや卵巣がんにかかった方、全体の約1割以下です。これもそんなに多い数字ではありません。遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)については、「日本HBOCコンソーシアム」を参考にしてください。
けれども、血縁(母、姉妹、祖母、叔母、いとこ)に乳がん、卵巣がんの方がいらして心配な場合は、20代30代でも一度、乳腺外科専門医を受診して相談してください。
若い世代の若年性乳がんについての詳しい情報は、「厚生労働省 若年乳がん患者のサバイバーシップ支援プログラム」が参考になります。若年性乳がんの患者会ともリンクされています。
20代30代の乳がん検診はどうすれば?
20代、30代は、自治体などの乳がん検診(対策型検診)はありません。
もしも20代、30代で、乳房にしこりなどの症状を感じたら、乳腺専門医がいる乳腺外科、外科(乳腺専門)を受診することが大切です。多くの産婦人科は、乳腺は専門ではありませんので、間違えないようにしてください。
症状がある場合は、検診ではなく、診療ですので、健康保険が使えます。
乳房に特に気になる症状がなくて、血縁に乳がんや卵巣がんの方がいらっしゃらなければ、必要以上に心配しなくて大丈夫です。
でも、20代30代でも、月1回、生理開始から7日後に乳房のセルフチェックは毎月行ってください。
40歳以降は、乳がんも卵巣がんも、遺伝性でないがんのほうが多いのです。
ですから、血縁に乳がんや卵巣がんの人がいないからと言って、乳がんになりにくい、ということではありません。40歳以降は症状がなくても、早期発見のために、乳がん検診は定期的に受けてください!
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