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LIVING仕事

2021.05.21

想定外の出来事もパワーに!香港アートを牽引するプロフェッショナルに聞く

自分のキャリアをあらためて模索し始め、迷いも多い30歳前後。働く女性のリアルボイスから、勇気をもらいたい。グローバルに活躍する人の仕事観には、広い視野を持ち、自分らしく働くためのヒントが満載です。香港の美術館「CHAT(チャット / Centre for Heritage, Arts and Textile)」の立ち上げを担当し、現在はチーフキュレーター兼館長を勤める高橋瑞木さんに話を伺いました。

高橋瑞木

高橋瑞木さん
Photo courtesy:CHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile), Hong Kong

ゼロからのスタートも情熱でやり遂げる

大学を卒業後、森美術館設立準備室を経て、水戸芸術館現代美術センターの学芸員を務めていた高橋さん。そこで数々の展覧会を成功に導いた高橋さんの評判を聞きつけ、香港で開館する新しいアートセンターのキュレーターにならないか、というオファーが舞い込みます。そのアートセンターが、CHAT。1950年代から2008年まで稼働していた元紡績工場をリノベーションした複合施設「The Mills(ザ・ミルズ)」内にある民間のアートセンターです。

「古い紡績工場をリノベーションして美術館を作るという計画は、とてもエキサイティングな話だと思いました。実は同時期に他からもオファーを受けていて。水戸美術館には10年以上勤務していたこともあり、新たなフェーズに行くタイミングなのかもしれないとお誘いを受けました」

しかし着任直後、思わぬ展開が待ち受けていました。

「学際的な美術館のシニアキュレーターとして着任してほしいというお話だったのですが、着任直後のミーティングは、香港のテキスタイル産業の歴史を紹介するミュージアムをつくりたいという内容で。聞いていた話とまったく違う展開に文字どおり青ざめました。

私自身、テキスタイルは好きですが専門ではないし、香港でテキスタイル産業が盛んだったことも知らなかったですし…。でももう後に引けない状況だったので、世界にはどういうテキスタイル美術館や博物館があるかを調べ、実際に訪れてキュレーターに話を聞くなど、とことん研究しました」

調べていくうちに香港のテキスタイル産業自体は、歴史が古くなく、展示物も少ないことが判明。そこで、常設展示のデザインで革新的なアートセンターをつくろうと、コンセプトや方向性を練りに練ったそう。

「香港のテキスタイル産業の歴史を伝える常設展は、従来の産業博物館のイメージを覆すようなものにしようと、イギリスでもっとも権威ある現代アートのプライズ、ターナー賞を受賞した建築グループ アセンブルにデザインを依頼しました。

テキスタイルは身近なものですが、労働環境やリサイクルなどの社会的課題も切り離せません。アートやデザインを通して、こうした問題を考えられるような施設にしたいとコンセプトを立てました。テキスタイルや衣料産業を支える無名の労働者たちの物語にスポットを当てていきたいと考えています」

香港のテキスタイル産業の歴史を伝える常設展はグッドデザイン賞を受賞。
Photo courtesy: CHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile), Hong Kong

女性が働きやすい国、香港

そうして2019年3月にオープンしたCHATで、2020年からチーフキュレーターと館長を兼任している高橋さん。日本と比べ、働きやすさという面での違いも感じているそう。

「ここでは外国人だからとか、女性だからということで限界や制限を感じたことはなく、とても働きやすい環境です。外国人の女性に、ヘリテージ施設のチーフキュレーターや館長を任せるという点も、日本だとなかなか考えられないことですよね。英語は必須ですが、働く場として、日本人の女性に香港はとてもおすすめです」

CHAT

2019年夏の企画展「NS Harsha:Gathering Delights」のオープニングレセプション。
Photo courtesy:CHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile), Hong Kong

文化の異なる人たちが集まるチームのリーダーとして、意識していることを伺うと――。

「私たちのチームは、ローカルのほか、中国人とコロンビア人を含む40人ほどのチームです。スタッフのモチベーションや企画を尊重して、なるべく実現させようと思っています。クオリティはもちろん厳しくチェックしますが、1回失敗してもいいから、やらせてみる精神を大事にしています」

続けるには“好き”と客観性のバランスが大切

CHAT

CHAT初の企画展「Unfolding: Fabric of Our Life」にて、アーティスト青山悟氏と対談。
Photo courtesy: CHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile), Hong Kong

中学生の頃から展覧会に足を運ぶのが好きだったという高橋さん。大学でも美術史を専攻し、アート一筋で走り続けています。一つのことを続けるために努力していることはあるのでしょうか。

「それぞれの展覧会やアートプロジェクトを企画、実行するうえで、仕事のパートナー、スタッフに対して正直であろうと心がけています。さまざまなアーティストと仕事をするなかで、フェアでいることが重要です。例えば社会の状況が変化して急に予算がなくなるなどのトラブルがあったときに、取り繕って対応するのではなくて、きちんと透明性を持って相手に伝えること。正直に誠意を持って、信頼関係を築いていくことを大切にしています。

そして、一つのことを続けるためには、“好き”とその愛情を客観視するバランスも関係すると思っています。それぞれの人が“好きなこと”に対するファンタジーを抱いていると思うのですが、例え自分の仕事にかける愛情が裏切られたときでも、それでももっと良くしたいとか、素晴らしいと思えるかどうかが鍵。折れないくらい強い気持ちがないと、プロフェッショナルとして働くには難しいかもしれないですね」

思い描いていた計画や理想が崩れたときにただ失望するのではなく、時には一歩引いて、自分の“好き”をリセットしてみる。自分の“好き”の度合いとそれを客観的に考えるバランスを高めることも、働く女性の大切なスキル。前に進みながら、“好き”をしっかりと育てていきたいものです。

アートの魅力とは?

Interweaving Poetic Code_Image courtesy_CHAT

6月6日まで開催中の企画展「Interweaving Poetic Code」
Photo courtesy:CHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile), Hong Kong

寝ているときと、食べているとき以外はアートのことを考えているという高橋さん。そこまで心を惹きつけるアートの魅力とは?

「私の場合は、常に“哲学的なこと”に触れられること。良い作品は、嫌というほど心に問いかけてくるものがあります。人間の善悪とは何か、生と死とは?など。究極をいえば、人間とは何か、生きるとは何か?ということなのですが、それを、手を替え品を替え、チャレンジングに突きつけられるので、好奇心が尽きないですね」

2020年に開催されたテキスタイルデザイナー須藤玲子氏の個展「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」
Photo courtesy:CHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile), Hong Kong

生きるとは何かを考えさせられるアート。人がアートを求め、アートと出合える場所に集う理由は、まさにそこにあるのかもしれません。アートのない人生は、想像するだけで何だかつまらないものになりそうです。
では、GINGERのテーマでもある“自分を主役にした人生を歩む”ために、高橋さんが必要だと思うことは…。

「我慢しないことではないでしょうか。日本は我慢を美徳とする文化が少なからずありますよね。自分よりも、人とのハーモニーを大切にするというか。自分を主役にした人生を歩むのだったら、自分自身の価値観を大切にして、心の声と合わないことは我慢して合わせないことも必要だと思います。

そして、どうしてもできないことは潔く認めて手放すこと。コンピュータでスペックが合わないことをするとバグが出るのと同じで、自分が持っているスペック以上のことはできないものです。それを我慢してやり続けると、どこかに歪みが出てしまうと思います。自分が持っているソフトウエアでは処理できないことを理解して、潔く手を引くことも大事ですね」

香港のおすすめスポット

長州島ビーチ
縁あって香港という場所に移り住み、好きな仕事に情熱を注ぐ高橋さん。最後に、住んでみたからこそわかる、香港の魅力、そしておすすめスポットを教えていただきました。

「香港の魅力ってコンパクトなところにあると思うんです。タクシーで20分くらい走ればスイスかと思うくらい美しい自然があったり、ハワイに負けないようなキレイなビーチがあったり。

観光だと街中を散策することがメインになってしまうと思うのですが、ゆっくりと自然散策を目的で訪れるのもおすすめです。人も少なくてのんびり過ごせる美しいビーチで泳いだあとに、シーフードの美味しい店で中華を食べるというコースも、ありではないでしょうか」

高橋さんおすすめのスポットや観光がこちら。

●アイランドホッピング
長州島
「香港では、アイランドホッピングをおすすめしたいですね。フェリーで30分くらいで、すごく美しい自然に出合えます。なかでも長洲(チュンチャウ)島を、ぜひ訪れてもらいたい。フェリー乗り場の前に賑やかにお土産やさんが並んでいたり。そこで売っているマンゴー餅というスイーツが、本当に美味しくて。日本でいう苺大福を想像していただきたいのですが、大福よりも餅が柔らかくて、みずみずしいマンゴーが入っています。一度は味わってほしい、絶品スイーツです」

●大埔(タイポー)
香港鉄路博物館
「最近は、香港のローカルタウンをよく訪れているのですが、なかでも大埔は、香港が大陸と地続きなんだなっていうのを実感できる場所です。『街市』という大きな市場があるのですが、東南アジアらしい店構えを残していたりして。香港鉄路博物館では、昔の植民地時代の電車などが展示されていて、香港の歴史を知ることができて興味深いですよ」

●CHAT

CHAT

CHATの外観。
Photo courtesy:CHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile), Hong Kong

「そしてもちろん、CHATにぜひ足を運んでいただきたいですね。CHATのある 荃湾(チュンワン)という街は、観光客が少ないエリアなのですが、美味しいお店がたくさんあります。
例えば、近くの市場で買ったシーフードを持ち込むと、料理して出してくれるお店もあって、日本ではあまり味わえない体験も可能です。中環(セントラル/香港の中心地)で食べるより、すごく安いところも魅力。さらに、お酒も持ち込みできる店が多いので、お気に入りのオーガニックワインを買って、好きな食材を料理してもらって食べるのが、すごく楽しくて贅沢な時間です」
https://www.mill6chat.org/

コロナが落ち着いて、また自由に安心して海外旅行ができる日が来たら、訪れたいスポットの数々。近い将来に実現したい旅の計画に加えておきましょう。

アートin香港が開催中!

Art Basel Hong Kong
香港では、現在「アートin香港」が開催中。香港各地で行われるアートフェアや文化機関が主催する様々なアートイベントを紹介しています。
https://www.discoverhongkong.com/eng/explore/arts.html

さらに、CHATも参加する「アート・バーゼル香港」が、5月21日から23日まで、香港コンベンション&エキシビション・センターで開催されます。現地だけでなく、「アート・バーゼル・ライブ香港」が開催され、世界中の人々にアートフェアの様子が配信されます。
http://www.artbasel.com/hong-kong

アート好きの人、アートへの興味が高まっている人、そして香港好きの人も、アジアのアートの中心地、香港の今を、この機会に覗いてみてください。

高橋瑞木(たかはしみずき)
早稲田大学大学院で美術史を専攻。修了後、ロンドン大学東洋アフリカ学学院を修了。森美術館準備室を経て2003〜2016年まで水戸芸術館現代美術センターで主任学芸員として勤務。2017年3月末からCHATでシニアキュレーターとして勤め始め、2020年からチーフキュレーター兼館長に。

TEXT=GINGER編集部

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