自分に似合う服を選ぶとき、着こなしを考えるとき、知っておきたいファッション用語やテクニック、今どきの常識を、スタイリスト青木貴子さんが独自の視点を交えながら解説する連載「大人のおしゃれワード集」。(編集部)
11月に入って一気に気温が下がりましたね。いよいよアウターの主役、コートが活躍する季節!
さてさてあなたは一体何着のコートを持っていますか? コートって場所も取るし、ほかのアイテムよりお値段が張ったりして(笑)、何かと大きい存在ですが、かといって「これ一着で大丈夫」なんていうわけにはいかないのがおしゃれ道。
今回のテーマは、コートの種類やその由来、豆知識。持っていると便利なおすすめコートなどについてお話しします。
多くのコートのルーツは軍服にあった⁉︎
コートの歴史をちょっとひも解くと、意外と多いのが“ルーツは軍服”というもの。
みんなが大好きな(きっとほぼ全員が持っている?)トレンチコートは、イギリス陸軍の防水型軍用コートがルーツ。トレンチとは塹壕(ざんごう)=銃撃や砲弾から身を守るために掘った溝という意味。つまり戦闘に臨むときに着ていたコートということになるけれど、それにしてはおしゃれでダンディな装いに感じられますよね。さすが英国!
トレンチコートの特徴はエポーレット(肩章)、ガンパッチ(胸元のカバー)、チンフラップ(襟元のカバー)、Dカン付きウエストベルトなどのディテール。それらは軍用コートの名残りで、今やトレンチコートに欠かせないデザインとなっているのです。
素材としては、はっ水加工の施されたコットンギャバジンが多く、秋や春先に大活躍。最近では、寒くなってからも着られる暖かいライナー付きのものもあるので、かなり長い期間着られる便利なコートです。蛇足ですが、ステンカラーコートも、もとはトレンチコートから派生したレインコートの一種なのだとか!
それから、カジュアルシーンで活躍するPコートとダッフルコートはともに海軍にルーツが。Pコートの特徴であるダブルブレスト(ボタンが2列)は、風向きによって左右どちらにも上前が変えられるようにとのアイデアから生まれたデザインだそう! 胸元に縦にあるポケットはハンドウォーマーポケット(またはマフポケット)と呼ばれ、船員が作業中に簡単にスッと手を入れ温められるよう、あの位置に。そして大きな襟は、襟を立てて遠くの音を聞きやすくするため。ボタンが大きいのは、手袋をしたままでも扱いやすいように(ダッフルコートのトグル=紐付きの留め木ボタンも同じ理由)。それぞれ実は純粋な機能美なのです。
このほかにもモッズコートはアメリカ軍の「M-51」というミリタリーコートが原型。軍服は機能的=グッドデザインということなんですね。
持っていると便利なコートはやっぱりコレ
ウィズコロナの今年は、例年に比べて街行く人の服装がより一層ばらけているように思います。志向が変わってきたのかな?
そんななかで、ここ数年トレンドインしていたビッグシルエットのチェスターフィールドコートは、今年も着ている人を多く見かけます。チェスターコートの利点はなんと言ってもその万能性。きちんとしたオンタイム、カジュアルなオフタイム、どんなシーンの服とも好相性で、持っていると便利なコートの筆頭と言えます。
同じような理由で、オンオフともに使えるのがスタンドカラーコートやシンプルなラップ(ベルテッド)コート。
いずれも下にジャケットを着ることができるくらいのゆったりめのシルエットで、ややロング丈のものがおすすめです。一枚仕立て、ダブルフェイスものも最近多く、さらっと羽織ってる人を見るとやっぱり素敵だなと思います。
まずは自分に必要な3着を揃えよう
リアルなワードローブを考えると、コートは違うタイプのものが3着あると安心かなと思います。違いをつけるポイントは、レングスや、テイスト、カラーなど。
レングスは、上記でおすすめしたチェスターコートやベルテッド(ラップ)コート、スタンドカラーコート、ステンカラーコートなどで長めを、Pコートやダッフルコート、ダウンコート、などでミディアムレングスを選んで。
テイストは、きちんと感があるものと、カジュアルなものなど、シーンによって選べるように。
そしてカラーは、ダークカラーと明るい色の両方を揃えておくことで、着こなしの幅が広がります。
これらの条件を組み合わせて、タイプが違うものが3着あればたいていの服に合わせられます。例えば、きちんと派なら黒ラップ、ベージュトレンチ、オフホワイトPコート。カジュアル派ならライトグレーチェスター、黒ダッフル、カーキモッズコート、といった具合。
まずは3着を揃えて、そこから先はクローゼットの余裕に合わせて増やしていけば良いのではと思います。
もしもこれからコートを買おうと考えているなら、バニラっぽいオフホワイト、ライトベージュ、アイスブルーなど、明るいカラーがおすすめです。ダークな服装の人が多くなる街でパッと映えるし、着ていて気分が上がります。
また、コートの着こなしを見たいときには、おしゃれおじさまが登場する海外スナップが意外と参考になります! ベルトの結び方や小物合わせなど、真似したいテクニックがたくさん見つかります。ぜひチェックしてみてください。
【解説】大人のおしゃれワード:コート
オーバーコートの略。もともとはジャケット類も含んだアウターウェア、つまり外衣という意味があるが、一般的には衣服のうちいちばん外側に着る、袖付きで丈長の、いわゆる外套類を指すことが多い。狭義では、防寒、防水、防風といった機能を持つ戸外専用の服とされる。その種類は非常に多く、デザインも多様。