転職を考える理由はいろいろあることでしょう。
最近は転職サイトなども充実していますから、実際に転職するのも簡単です。ですがその結果、幸せになれた人は、果たしてどれくらいいるのでしょうか。もしかしたら「失敗した」「やめておけば……」と感じている人の方が多いのかもしれません。
「前の会社と変わらなかった」ならまだマシ。「前の会社の方が良かった」と後悔している人の声もたくさん聞きます。転職で失敗しないために必要なことは何か。Spark GINGER世代が「転職したい」と思ったら知っておくべきことをお話ししましょう。
「自分の能力=給料」を理解していますか?
経営者として多くの転職者と接してきましたが、一歩前進できる転職にはいくつかのポイントがあります。1つは「能力」、2つ目は「順応性」、3つ目は「覚悟」です。これらは、採用する側が求める要素と言い換えても良いかもしれません。
では、具体的に見ていきましょう。
1つ目の「能力」は、客観的にみた業務遂行能力を指します。仮に、自分の今の給与が30万円の人が「35万円ほしいから転職!」と考えるなら、当然ながらプラス5万円以上の仕事をしなければなりません。
先ほども述べましたが、採用する側が+5万円以上の仕事ができる人物と評価をするか否か、ということが客観的な「能力」です。転職者本人が「転職前の職場より売り上げを5万円上げます!」と宣言することは客観的な能力ではありません。
とにかく重要なのは、転職したい会社が「この人なら35万円払う価値がある」と評価するかどうかです。何度も申し上げますが、自分の評価ではなく、会社の評価がその人の能力となるのです。
例えば、転職サイトの給料の欄だけを見て選んでいる人は、自分の能力に目を向けていない人の典型といえます。「自分に35万円分の能力があるだろうか」という肝心な点を考えられていないからです。
また、「自分は隣の席のサトウさんより仕事ができる」というのも客観的ではありません。転職先の面接官はサトウさんがどこの誰か知らないわけですから。そして、「部署内で一番出来る!」というのも判断を誤る要素かもしれません。「井の中の蛙大海を知らず」って言うでしょ。
この状態の人に必要なのは、「自分に何ができるか」ではなく「自分が転職先にどんなことができるか」を考えることです。ポイントは、業界内を見渡しても圧倒的に誇れる事を成し遂げているか。そこが明確になれば、転職先にどんなメリットを提供できるかも見えてくるでしょう。
例えば、
・営業として売上を20%伸ばせる。
・マネージャーとして管下チーム全体の生産性を30%アップさせられる。
・総務など内勤として、コンプライアンス問題を●●くらい減らせる。
・ITシステムを組んで経費をこれくらいまで抑えられる。
といったことが伝えられるようになればよいでしょう。
その状態になって、はじめて相手は「この人に+5万円の35万円払う価値があるかどうか」を考えてくれるわけです。転職したいと思ったら、まずは「自分にふさわしい給料の額」と「その金額の根拠」を考えてみましょう。
自分のやり方を押し通そうとしていませんか?
2つ目の要素は「順応性」です。順応性とは、わかりやすく言えば、会社や周りのやり方に合わせる力のこと。これが抜けていると、転職はできるかもしれませんが、望んでいた未来は期待できないでしょう。人間関係がうまくいかなかったり、社風やルールに馴染めず、「転職しなければよかった」「もっと別の会社を探そうかな」と思うようになってしまうのです。
根本的な問題は、ありのままの自分がどんな場所でも通用すると思い込んでしまっている点です。でも、そんなことはありえません。ファッションにTPOがあるように、行く先々で自分が周りと馴染むように調整しなければいけないのです。
その時、その場で求められる洋服を選ぶように、その会社や部署で求められる自分の役割を考える。その上で、前職の経験が活かせるところがあれば最大限生かし、使えない経験なら引っ込めておくか、あるいはバッサリと切って捨てる。重要なのはその選択なのです。
転職を繰り返し、その都度「仕事のやりがいが感じられない」という人は、この順応性がないことが原因です。そもそも会社は、仕事をする環境は提供しますが、一人一人に合ったやりがいを提供することはできません。やりがいは個人が自分で見つけ出すものだからです。
先に転職した友人や先輩の体験談がよくありますが、あくまでも参考意見です。転職もやりがいも、キャリア形成も全ての判断と責任は自分自身です。
順応性があれば、与えられた環境の中で、自分が役に立ったり、嬉しいと感じる仕事を見つけていくことができるでしょう。しかし、順応性がいささか欠けている人は、自分の経験値を絶対値として判断してしまいがちです。
結果として自分の思い通りにならず「自分のやり方と違う」「やりがいが感じられない」と悩んでしまうのです。会社は組織ですから、自分勝手に働くことはできません。当たり前のことですよね。ところが、自分だけが認める実績や経験があったり、中途半端なプライドがあったりすると、これがなかなかできないものなのです。年齢的には、ひと通り仕事がこなせるようになる30代くらいが危ないかもしれません。世代的にはSpark GINGERの読者と同じくらいです。
皆さんは大丈夫ですか?自分のやり方や考え方に不必要なこだわりを持っていませんか?
失敗も成功も、全て自己責任!
最後の要素は「覚悟」です。精神論に聞こえるかもしれませんが、実はこれが一番大切だと、私は思います。
なぜ覚悟が大切なのか、答えは簡単。覚悟の無い転職は失敗する可能性が高いからです。「覚悟はしています」きっとそう言いますよね。では客観的に見て、その覚悟は「覚悟」と言えるのでしょうか?
転職して失敗した人の多くは「採用面接の時と話が違う」「こういう仕事ができると聞いたはずなのに」と愚痴を言う人もいます。
確かに、採用担当もその様に「期待」していたはずです。しかし、双方の期待が叶わなかったのは、皆さんがその業務に就くまでの実力がなかっただけのこと。
恐らく、愚痴るタイプは2つのパターンがあります。1つ目は、最初は望み通りの部署へ配属されるというこの上ない待遇で転職したものの、成果が伴わずに異動するパターンです。2つ目は、どこまでできるか会社側が業務課題を与えたところ、望み通りの部署へ辿り着く前に挫折するパターンです。どちらにしても、採用側から見れば「期待外れ」かも知れません。
「権利を手にして期待に応える」転職をして成果を上げるには、やはり覚悟が必要です。採用担当者が自分の人生をどうにかしてくれるわけではないですからね。「この採用担当者なら騙されてもいい」くらいの覚悟と、言い訳や愚痴を一切言わない! という覚悟が持てるかどうか。
持てる人は新天地でも踏ん張れるでしょうし、要は自分との闘いです。持てないのであれば、今の会社にとどまる方が無難だと私は思います。
「自分の人生を変えたい」と思って転職する場合も、やっぱり覚悟=全ては自己責任で自分との闘いが何より大切です。そんなに簡単に人生変えられませんから……。
「3年後にこうなりたい」という夢があるなら、その夢を実現するために自分と闘い続けなければなりません。犠牲にしなければならないことは必ずあります。その覚悟が持てなければ、転職しても絶対にうまくいかないでしょう。
言い方を変えると、自分の人生計画と、その中にある「転職する」という選択に、最後の最後まで責任を持てるかどうかということです。
何事にもいえることですが、『無計画は失敗の計画』です。「あっちの会社の方が給料が良さそうだ」「雰囲気が良さそうだ」といった目先のメリットに飛びつく転職するのは、計画とはいえませんよね。
そこに気づかずに転職をすると、ほぼ間違いなく失敗します。再度転職することになり、そのうち転職グセがつき、何のための転職なのか自分でも理解が出来なくなってしまいます。
辛辣な言葉で言えば「転職したい」と思ったら、皆さんの意思で好きに転職されれば良いでしょう。繰り返しますが、転職自体は目標でも目的でもありませんし、しないに越したことはないかも知れません。
では、なぜ転職するのか? 転職して何を実現するか、そのために何をするか、何ができるか。そして、何を捨て、何を諦めるか考えて、責任を全うする覚悟が持てたなら、少なからず転職してよかったと思える瞬間があるかもしれません。
転職は、人生を最良にも最悪にも変えるものです。まずは、しっかりとした自己分析をして、全ては自己責任であると覚悟することがスタートと考えます。
最後に大切な事を言いますね……「悩み事の大半は他人との比較」です。
・友達の給与
・友達の職位
・友達の彼氏(旦那さん)
・勤務先の社会的地位(上場?非上場?)
自分がどのように生きたいか、転職という変化は、その自分に何をもたらすのか。他人と比較しない生き方のための「転職」なら大賛成です!
杉山将樹
110ホールディングス株式会社 代表取締役 株式会社ほけんの110番 代表取締役 一般社団法人 保険乗合代理店協会 理事 1970年生まれ。 20代は建築設計、30代半ばまでは住宅セールスと住宅業界に身を置き、 35歳より保険業界へ。外資系生保にて新人賞、TOPアドバイザー等多数のコンテストに入賞。 その後39歳で株式会社ほけんの110番に参画、関東支社長・営業本部長・常務取締役を歴任。 2016年11月現在、北海道から沖縄まで全国80拠点以上を展開している。 「with you 1-10―あなたのために1から10まで」をキャッチフレーズに全国を疾走中。人呼んで業界のお洒落番長。東京都港区在住。著書に『死亡保険金は「命の値段」もっともシンプルな保険選び』(幻冬舎)がある。