ステイホームを経験し、改めて気付かされた、居心地のよい家づくりの大切さ。そこでセンスがいい人のこだわりの家を大解剖。その人らしいセオリーが隠された三者三様の暮らし方から、理想の家づくりのヒントをリサーチ!
小さなことの蓄積で気付く本当の豊かさ
鳥取県・倉吉市にある築50年の一軒家はインスタグラムを通じて出合い、45万円の破格値で交渉が成立し、購入を決意したという修復専門家・河井菜摘さん。鳥取、京都、東京の3拠点生活のうち、1年の半分を過ごしている。
「環境に合わせて生活を変えるのは私にとって苦ではありません。この家はほのかに土の匂いや外の湿った空気を感じ、外と中の境界がないような、都会にない魅力があります」
この家で暮らし始めたことで、自由に生きやすくなったそう。
「時の移ろいや季節の流れで、目の前に広がる景色がこんなに変わるという当たり前のことを知り、自分のペースを築けたように感じます。住みながら少しずつ改修して、自分らしく、この家らしく育ててきた自分の延長線上のような存在です」
【間取り】自分で改修した一軒家
前の家主は東京から移住してきたデザイナーの女性。「一人で自分らしい暮らしを築く過程に共感し、次の家主を探していると知って連絡しました」。部屋数を活かして作業部屋や教室を設け、各部屋を充実させた。
【リビング&教室】息抜きできる空間
〈左〉リビングとその続きにある4.5 畳の部屋は息抜きする場所。
〈右〉漆喰の塗り替えや建具の入れ替え、床の張り替えなど大半は自分の手で改修してきた。教室スペースにある大きなテーブルは自作。
【キッチン】豊かな自然の中にあるからこその対策も
〈左〉引っ越し前からの造りを基盤に、細かな修繕を重ねているキッチン。
〈右〉食器はガラス戸の棚、調味料保存には湿気対策も兼ねて瓶を採用。所有物がひと目でわかるのが利点。
【アトリエ】お気に入りの仕事部屋
〈左〉「金継ぎは細かい作業で、つい時間を忘れて没頭しがち。ふと顔を上げて大きな窓から見える美しい景色に癒やされます」
〈右〉部屋の片隅には古漆器のコレクションを保管。
修復専門家・河井菜摘さん
京都市立芸術大学、大学院にて漆工を学び、2015年に漆と金継ぎを中心とした修復専門家として独立。鳥取、京都、東京の3拠点で生活し、各拠点で漆と金継ぎの教室を開催。