美術を面白おかしく、わかりやすく解説する“アートテラー”として活躍するとに~さんによる連載。読者の皆さまからの質問も随時受け付けています!
※緊急事態宣言の発令に伴い、本記事で紹介している展覧会の会期や営業時間が変更になる可能性があります。詳細は各展覧会の公式サイトをご確認ください。
こんばんは。アートテラーのとに~です。
昨年のGWに続き、今年も4都府県の美術館はほぼほぼ臨時休館に。大人しくステイホームして、普段お世話になっている美術館の展覧会紹介動画を制作していました。この状況がいつまで続くかわかりませんが、動画やオンラインイベントなどで、おうちで美術を楽しみましょう。
さてさて、以前、日本一のミュージアム王国として、長野県をご紹介したことがありますが、そんな長野県に4月10日、新たなミュージアムがオープンしました。というわけで、緊急事態宣言が発令される前に、早速取材に行ってまいりました!
牛に引かれて美術館
信州・長野を代表する名刹、善光寺。そのすぐそばにある城山公園内に、長野県内唯一の県立美術館があります。1966年に開館して以来、長野県信濃美術館として県民に親しまれていましたが、施設の老朽化を理由に、2017年より休館。以降、約3年半にわたって建物を全面改築し、名前も長野県立美術館と一新。4月10日にリニューアルオープンいたしました。
新たに誕生した本館のコンセプトは「ランドスケープ・ミュージアム」とのこと。建物が周囲のランドスケープと溶け込むように設計されているのが大きな特徴です。
特にそれを実感できるのが「風テラス」と名付けられた屋上広場。善光寺を含む周囲の景色が一望できる、実に気持ちの良い空間です。この広場では、隣接されたカフェでの飲食や、さらには不定期に開催されるイベントを楽しむこともできるのだそう。
また、先んじて一昨年にリニューアルオープンした東山魁夷館と本館を結ぶ連絡ブリッジの下には「水辺テラス」と名付けられたスペースもあります。この場所には、ランドスケープ・ミュージアムを象徴する作品として、霧のアーティストとして国際的に活躍する中谷芙二子さんが制作した《霧の彫刻 #47610-Dynamic Earth SeriesⅠ-》が常設されています。1日8回、決まった時間になると、霧が発生。気象条件がよければ、公園一帯を霧が埋め尽くすようです。「風テラス」も「水辺テラス」も誰でも無料で楽しめるエリアとなっているので、もし仮に美術にあまり興味がなくても、善光寺を訪れた際には長野県立美術館まで足を延ばしてみてはいかがでしょう?
さて現在は、長野県立美術館完成記念として『未来につなぐ~新美術館でよみがえる世界の至宝 東京藝術大学スーパークローン文化財展』という展覧会が開催中。法隆寺金堂の《釈迦三尊像》やアフガニスタンのバーミヤン、中国の敦煌などの仏教美術を東京藝術大学が最新のデジタル技術を駆使し、細密に復元した「スーパークローン文化財」の数々を紹介する展覧会です。
なお、8月28日からはグランドオープン記念展として、モネの《睡蓮》やホドラーの《木を伐る人》などが出展される『森と水と生きる』が開催予定とのこと。
ちなみに、今回の新築オープンに合わせて、新たにカフェやレストラン、さらにショップが開業。ショップは、オリジナルグッズが充実していました。個人的にオススメなのは、東山魁夷館でも特に人気の作品《緑響く》をモチーフにした和三盆。パッケージも可愛いので、お土産に最適です。
長野県立美術館
https://nagano.art.museum/
あの北斎が何度も訪れた街
善光寺と併せて訪れたいのが、“栗と北斎と花のまち”小布施。葛飾北斎は83歳の時に初めて小布施を訪れて以来、晩年までたびたび、この街を訪れていたそうです。江戸時代に、ましてや当時の80代の人間が、東京から車で約3時間半もかかる小布施に何度も足を運んでいただなんて。改めて北斎のバイタリティに驚かされます。
そんな小布施にあるのが、北斎館。北斎の貴重な肉筆画を数多く有する美術館です。その生涯で何度も名前を変えた北斎。北斎館では、「画狂老人卍」と名乗っていた頃の晩年の肉筆画を目にすることができます。なかでも圧巻なのが、祭屋台。こちらは、北斎唯一の立体造形物とされる作品で、その天井部分には、北斎が肉筆で描いた絵が飾られています(ただし、現在、祭屋台の天井に飾られているのは、精巧なレプリカ。より近くで鑑賞できるよう、実物は屋台からおろされた状態で展示されています)。
「男浪」も「女浪」もとても86歳の人物が描いたとは思えないほどのド迫力! じーっと観ていると、波に飲まれるような気分になるので、ご注意ください。
信州小布施 北斎館
https://hokusai-kan.com/
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