スタイリスト青木貴子さんによる、素敵な人に一歩近づく生き方指南。こんな時代だからこそ、前を向いて歩いていくためのヒントをお届けします。
読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋…なぜか一年のなかで、いちばん何かをするのに良い季節とされている秋。暑さも収まり、ゆったりと何かを楽しむ好機ということなんでしょうね。実際、爽やかで過ごしやすい日が多くなり、気分的にもいろいろなことをやってみようという気持ちになれます。
デジタル化により読書離れは加速中
○○の秋と聞いて、何を想像しますか?というアンケートを取ると、だいたい冒頭に挙げたコトなどが回答されています。どの秋も魅力的ですよね!
でもこのなかで私が気になったのは読書の秋。最近は活字離れ、読書離れが著しいと話題・問題に挙げられているので、果たして読書の秋を楽しむひとはどのくらいいるんだろうと。そこで調べてみると、平成30年度の文化庁の調査によれば「1ヵ月に1冊も本を読まない」と回答したひとは全体の47.3%という結果! やっぱり本読まないひと、増えていますね! でも「読書量を増やしたい」という回答も60.4%あるということで、知識を増やしたり、自身を高めるために読書をしたいと考えているひとが半数以上はいると知って「ホッ」。本はやはり気になる存在ではあるようです。
ではなぜ本はここまで読まれなくなってしまったのか? その答えは明白で(私もいまここで連載をしているわけですが)ネットによる情報収集の増加、モバイル端末などのデジタルメディアの普及にあります。何しろ手軽で身軽。スマホを持っていれば、ちょっとした空き時間に記事も読めるし時間は過ぎます。以前は電車の中など移動の時間を使って読書をしていたひとも多かったと思いますが、本を使わずとも時間は過ぎていくわけで、移動中に読書を選択するひとが激減しました。電車で座って前の座席をふと見ると、全員スマホをいじっている、なんて光景が繰り広げられています。たまにちょっと異様な感じも覚えたりしますが、私自身その一員になっていることも多々(汗)。
本を読まないと起こる怖いコトって⁉︎
さて、あなたは最近本を読みましたか? 本を読まないと、引き起こされる怖いコトについてちょっと触れたいと思います。
本を読まないと、「読解力」が低下する可能性があります。読解力が低下すると、物事を順序立てて考えたり説明したりする「理論的思考力」が低下し、筆者の理論や考え方(小説では登場人物の行動や気持ち)を理解することで得られる「共感力」や「情緒力」が育たなくなることも。また「知識力」や「正しい日本語を使う能力」が低下してしまうことまでも、考えられます。
結果、社会生活や日常において自分の考えや意見をうまく伝えられなくなったり、相手の話の真意が掴めなくなったりと、本を読まないことは結構深刻に他者とのコミュニケーション能力に影響する可能性があるのです! 「えっっ! そんなに本を読むことは大事なの!?」って思うかもしれませんが、本は本当に(なんて、とっても恥ずかしいクダラナイ駄洒落みたいですが、「本」は「草木の根」というところから出来た漢字だそうで、「根本、大切な部分」という意味があるそう。「本」も「本当」も「物事のもとになるもの、規範や本来のもの」という意味を持ちます!)大事なんです。
電子書籍VS紙書籍
では電子書籍はどうなのか?という点ですが、これについては個人的な感想としては紙と同じとは言い難い気がします。
紙の書籍の最大の利点は簡単にページの行きつ戻りつができること。あれ? これどういうことだっけ、なんて箇所が出てきた場合、戻って考察したり、理解を進めることが容易です。電子書籍だと、なかなか思うページが見つけられなかったりするので、まっいっか、となりがち(な気がします)。
そして大事だな、と思うところにマーカーを引いたり、書き込みができたり、ページに折り目をつけたり、自分が感銘を受けて取り込みたいと思う部分を目視しやすく、自分の思考の足跡を残せるというのも紙の書籍の醍醐味ではないかと思うのです。
かくいう私は先日部屋の整理をしていて、ずいぶん以前に読んだ本にふと興味を持ち、開いてみました。所々に折り目が付いていたり、カギカッコ(『』)で括っている謎の部分があったりしたので、そこを中心に読んでみたのです。するとそれが、「えーーーーっ、いま欲しい答えを導き出すヒントだ!!」いう内容だったのでビックリ。
電子書籍だったらそもそも偶然には見つけないし、その時直接的に興味がなかったら見ようという気にもなれません。紙の本は物体として目の前に存在しているので、パラパラと中を見ることが容易なのです。実在している物体というのもミソで、紙の本はページをめくるときに指の感触があります。視覚だけではなく触覚も使う分、感性や記憶に働きかける効果が高いように思います。
本は自分を成長させてくれる良い友達
昔の本をもう一度読み返してみると、その時の自分より今の自分の方が深く内容を理解できたり、また違った意味を見つけ出すコトもあります。それって、ずいぶん会っていなかった幼馴染に会う感じと似ています。
「あれ、この子こういう子だったんだ!」とか、「こういう魅力に気がつかなかったなぁ」なんて具合に。でも初めて会う子じゃないから懐かしいし、距離感もすぐ縮まる(初めて読む本じゃないから、理解も早い)。
そう考えると、本は友達みたいなものですね。今からたくさん本を読んでいけば、そんな幼馴染的存在の本をたくさん増やしていくことができます。自分と違った考え方を持ち、刺激も与えてくれるし新しいことを教えてもくれる。しかもこちらに文句も言わないし、嫌な気持ちにもさせない。さらにこちらの成長を促してくれる! なんて良い子たちなんでしょう(笑)。宝のような存在です!
本を読むとき、それを理解しようとするとき、ひとはみな自分の主観を(無意識かもしれないけど)意識します。つまり読書の時間は自分との対話の時間ともいえます。
いろいろな刺激にさらされている今だからこそ、自分と向き合う時間は大切。意識しないとなかなか取れない内省の時間、この秋は本の力を借りてその世界に没頭してみては如何でしょう?
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