世の中に、これだけ多くの服や靴があふれているなかで、何を選んでどう着るか。それは、自身を表現する手段であると同時に、心の浮き沈みを司る一生の命題。寝ても覚めてもファッションを愛するスタイリストの竹岡千恵さんが本音で語る、服との向き合い方とは?
“好き”の境地でたどり着いた記憶に残るスタイリング
品と遊びとリアリティのある適度なモード感。この絶妙なバランス感覚で、GINGERのファッションページを10年以上もの間、長らく牽引してきてくれた竹岡さん。そのスタイリング人生は、常に進化を続けてきた。
「雑誌の企画には、その都度テーマやお題があるから、最初は与えられた宿題をこなすようなイメージでした。でも、30歳を超えたあたりから、“そのコーデを本当に着たいと思うか”と自分に問いかけるようになって。そのころから、つぶしが効きそうな服というか、無難なものをいっさい借りなくなりました」
正解を探すのではなく、心が動くかどうか。服選びの基準をシフトした瞬間だった。結果的に、自分が好きなものを素直に提案していったほうが、周囲のリアクションは良くなっていったと振り返る。
「求められている模範解答を探していたはずなのに、結局は自分が納得したものを提案したほうが、正解に近かったということに気付いたんですよね。そのころから、自分の好きなものに自信が持てるようになってきました」
もっともやりがいを感じる瞬間は、服のポテンシャルを活かせたときだと言い切る。
「着る人を問わず、この服の魅力を最大限引き出せた気がする、と思えたときは、仕事をしたなっていう達成感がありますね。SNSでも、載せたスタイリングを可愛いと思って反応してくれたり、どこのですか?って聞かれたり。誰かの感性に引っ掛かって“記憶に残る”仕事ができたときは、報われる瞬間です」
寝ても覚めても24時間、どっぷり服にまみれる毎日。まさにファッションへの愛がガソリンとなるようなスタイリストの激務から、離れたいと思う瞬間はないのだろうか。
「繁忙期は逃げたくなることもしょっちゅう(笑)。でも、撮影やコーデ組みは、エネルギーをチャージする時間でもあるから。どんなに大変でも、仕上がった写真が可愛いと疲れが全部吹っ飛んじゃうんですよね。なかでも、雑誌のファッション撮影が一番好きなんです」
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