映画『恋に至る病』が10月24日より公開。初恋、不審死、純愛、洗脳――様々なキーワードが飛び交う衝撃的なラブストーリーが完成。そして、切ないラストを彩るのは、大人気バンド・Saucy Dogの書き下ろし主題歌「奇跡を待ってたって」。その発言に注目が集まる、石原慎也さんにインタビュー。
本編と溶け合う主題歌の誕生秘話

ティーンを中心に、SNSで大バズリ中の恋愛小説「恋に至る病」(メディアワークス文庫/KADOKAWA 刊)が実写映画化。内気な男子高校生・宮嶺望(役/長尾謙杜さん)と学校中の人気者・寄河景(役/山田杏奈さん)の不器用で一途な恋にキュン。と思いきや、同級生の不審死が続発し、宮嶺は景に対して殺人犯かもしれないと疑惑を抱く。ミステリ・サスペンスそして恋愛と、縦横無尽にジャンルを横断する、刺激的なラブストーリーが幕を開ける。
本作の主題歌を務めるSaucy Dogの石原慎也さんは「この曲が大事なピースのひとつになってくれたらうれしい」とはにかむ。
「映像でエンディングに入るところを何度も何度も見返して、作った曲を合わせていきました。そんな作り方は初めて。『ここ!』という箇所にサビがくるように計算して作ったので、この映画を締めくくるにあたって、なくてはならないものだと感じてくれればいいなと思います」
作品にインスパイアされ書き下ろした「奇跡を待ってたって」は、意外なオファーだったと振り返る。
「撮影中に監督が『Saucy Dogの「いつか」が合うと思う』とお話されていたと聞きました。自分はバンドを10年以上やっているんですが、10年前から考えたらとても信じられないことで嬉しかったです。脚本と映像を見せていただいて、自分なりの解釈で詞を書きました」

恋人が自分のために殺人を犯したかもしれない――。拭えない疑念と、それでも純粋に想う気持ち。いまだかつて目撃したことのない展開に対して、石原さんなりの“解釈”とは。
「恋愛のカタチってそれぞれですが、このふたりは病的な愛し方ですよね。大切な人を傷つけられたら、もし生まれ育った環境が違えば、自分も景のようになっていたかもしれない。僕がこの立場だったらどうするんだろうということをすごく考えました。宮嶺の目線ベースで、僕の『どうするかな』という感情から『こうしたい』という願いまでを綴っています」
凄惨なイジメにより日常が音を立てて崩れていく。そこに石原さんは人並みならぬ思いを持っていた。
「宮嶺にも景にも共感できる部分がありました。僕も過去にイジメられていた記憶があるんです。当人はイジっていたつもりかもしれないけれど、宮嶺に重なるところがあって。反対に、もし大切な人がそんな扱いを受けていたら相当腹が立つし許せない。僕が景と同じ立場だったら、同じことをしているかもしれないとも思いました」

映画やドラマ、アニメが大好きでよく鑑賞しているという石原さん。視聴しながら、自分だったら…といわゆる職業病的なアンテナも働くそう。
「作品を観ながら『こういう曲調が合うだろうな』と思うことはよくあるんですが、この作品を観たときもビジョンがパッと浮かんできました。サスペンスフルなラブストーリーに合わせて、最初は静かに、サビでシンプルな曲調に、途中でゴスペルっぽい感じを入れたり、激しいところはないけれど、いろんな要素を組み込みました」
そして、制作中やレコーディングにおいても初めてのことが身に起こったという。
「この曲は声出しをせず録りました。最後のシーンを観て、そのままの自分の声で歌いたいと思ったんです。ここまで作品に寄り添ったのは初めての経験。そういえば、『自分が宮嶺だったら』を念頭に置いて作っていた時期、メンバーに『最近暗くない?』って言われたんです。『もしかして俺、はいってる?!』と恥ずかしかったです(笑)」

制作期間中「大好きなお酒も気分が乗らずに、ちょっと痩せてしまった」と頭をかく石原さん。そこまで宮嶺というキャラクターに同化して書いた詞について、とてもうれしいことがあったという。
「僕は名前のない感情・事象を言語化して歌いたいんです。この曲についてはそれが上手くいったなと思っています。実は個人的に気に入っている歌詞を、長尾くんと山田さんが好きって言ってくれたんですよ! 長尾くんは『羽が生えただけの塊になった』という部分。羽が生えた塊って気味が悪いですよね。これは、行きすぎた言動や考え方を、生き物と生き物じゃない間のものとして描きたかったんです。山田さんが言ってくれたのは『優しい風に殴られたような』という箇所。人によって、優しい風に殴られたように感じるかもしれないし、撫でられたように感じるかもしれない。人それぞれの受け取り方によって感じ方が違うということを伝えたくて書きました」
映画を語るうえで切り離せないのが主題歌という存在。本作における「奇跡を待ってたって」が届けたいメッセージとは。
「イジメとか誹謗中傷とか、無意味だって分かっているはずなのに、なかなかなくならないですよね。じゃあ、あなたがイジメている人が誰かの大切な人だと考えたらどうだろう。大切な人をイジメられたら同じくらい腹が立つし悩むんだということを知っておいてほしいと思うんです。もちろん僕も含めて、人に対してなにか発することで、傷つく人がいるかもしれないということを忘れないでいたいです。映画として物語は終わるかもしれないけれど、この曲を聴くたび映画を思い出したり大切な人を想ってほしいですね」
【10月24日(金)全国公開】『恋に至る病』

出演/長尾謙杜 山田杏奈
醍醐虎汰朗 中井友望 中川 翼 上原あまね 小林桃子 井本彩花 真弓孟之(AmBitious)/ 忍成修吾 河井青葉 / 前田敦子
監督/廣木隆一
原作/斜線堂有紀『恋に至る病』(メディアワークス文庫/KADOKAWA 刊)
主題歌/「奇跡を待ってたって」Saucy Dog(A-Sketch)
配給/アスミック・エース
Ⓒ2025『恋に至る病』製作委員会
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石原慎也(いしはらしんや)

1994年3月3日生まれ、島根県出身。秋澤和貴(Ba.)、せとゆいか(Dr./Cho.)とともに、スリーピースバンド「Saucy Dog」を結成し、ボーカルとギターを務める。「いつか」「結」「シンデレラボーイ」など楽曲ストリーミング総再生数は、17億回を超えている。2022年12月には、NHK紅白歌合戦に初出場。25年8月1日には、大型アニメタイアップ楽曲「スパイス」を配信リリース。大規模アリーナツアーの成功や大型ロックフェスへの出演などライヴ活動も勢力的におこなっており、2026年1月4日には、バンド結成の地である大阪で初の単独ドーム公演が京セラドーム大阪で決定している。
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