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TIMELESSPERSON

2025.10.11

「没入できる人間が主人公」笠松将が海外の戦争作品に挑戦した理由

国際共同制作ドラマ『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』(原題:The Narrow Road to the Deep North)が、U-NEXTで独占配信中。太平洋戦争下の過酷な捕虜生活を通じて「人間とは何か」を問いかける重厚な作品に、唯一日本から参加した笠松将さんの内面とは。

話題の海外ドラマで日本軍少佐を力演

「戦争の話があんまり好きじゃなくて。これまでも何度か話があったんですが、引き受けてこなかったんです」。

『君と世界が終わる日に(Hulu)』や『ガンニバル(Disney+)』で濃厚な爪痕を残してきた笠松将さんが次なる舞台に選んだのは、戦争の極限下における人間の尊厳、そして愛と赦しを深く問うヒューマンドラマだった。

ドラマ『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』(原題:The Narrow Road to the Deep North)は、2014年に英国最高の文学賞であるブッカー賞を受賞した、リチャード・フラナガンの傑作小説『奥のほそ道』を原作に、豪華国際チームが映像化。太平洋戦争下、日本軍の捕虜となったオーストラリア人軍医の半生を、戦前、戦中、戦後という3つの時代にわたって描く重厚な作品が完成した。

笠松さんが演じるのは、日本軍の捕虜収容所にて捕虜たちと対峙するナカムラ少佐。タイとビルマを結ぶ「泰緬鉄道」(死の鉄路)建設現場にて国からの命令と個人の信念の間で葛藤を抱える、これまでにない複雑な役柄を演じている。

「役について、何を大切にしているキャラクターなのかを僕はいつも考えるんですが、ナカムラは『線路を完成させること』だと思うんです。観てくださる方がどう感じるかは分からないんですが、ナカムラは、捕虜の方々を『これから一緒に最高の線路を作る仲間』だと思っている。でも、人手も足りなければ、物資も時間も足りない。それでも計画通り進めなければいけない。上手くいかないことにより憤りを感じるという、その感情を表現することにフォーカスしました」

© 2024 Curio Pictures Pty Ltd and Screen Australia. 

海外作品のなかで日本人を演じる。それはとてもプレッシャーがかかることなのではないかと想像するけれど、笠松さんはそんなこちらの考えを軽々と一蹴する。

「カルチャーの違いは感じますよ。でもそれは向こうの方から見てもそうじゃないですか。たとえば、紅茶にミルクを入れるとかね。オーストラリアではバスタブがない部屋で過ごしていたので、温泉に行ってみたら30度くらいのぬるま湯だったり、タバコが日本の何十倍の金額で売られていたり…。海外生活はいつも大変だけど、カメラの前では日本も海外も変わらないですよ」

そう思うのは、笠松さんのなかでは作品に対する国境がないからなのかもしれない。

「僕は、作品を作る力がある国がその時代の常識を作れると思っているんです。もし、日本が作れるなら日本が作ればいいと思うし、その点、この作品においてはオーストラリアの思いがいちばん強かった。国内作品、海外作品という分け方ではなく、ただそれだけだと思うんですよね。だから、僕がやるべきことは俳優として、できるだけ馴染ませる、できるだけ違和感をなくしていくことだと考えています」

続けて「成長を繰り返した現場だった」と語気を強める。良い経験も苦しい経験も、すべてがカメラに収められ映像として私たちのもとに届く。

「撮影をしながら力強い作品になると確信できたんですよ。目を背けたくなるようなリアリティを描くことができたのは、監督と俳優がお互いを信頼しているから。キャスト・スタッフが、『オーストラリアのためになる』『日本のためになる』『世界のためになる』と信じて作品を作っているので、それがパワーとなって映し出されるなと思っていました。完成を観たときには、それに加えて、僕は美しさも感じました。人としての尊厳を奪われているシーンがあるから、一言では片付けられないけれど、芸術的な美しさと脆さを孕んでいるなと思いました。そんなシーンの数々をあの俳優たちとお芝居できたのはすごくいい経験だったなと思います」

また、共演した俳優たちの姿をみて、笠松さんの芝居観は揺さぶられたという。

「たとえば、撮影中、僕は捕虜役の方々とご飯を一緒に食べたことがないんですよ。きっちり分けられていて、すれ違っても挨拶もしちゃいけないという現場でした。それくらい、彼らはカメラが回っていない状態でも役を背負っていました。正直『なんでそこまでやることができるの?』と思うこともあって。こんなに心身を削って撮影してもその想いは観る人にまで届くかどうかはわからない。でも、それだけ役に没入できることが幸せなんだと気づきました。大変だししんどいけれど、没入してる役者たちはドラマのなかを生きているそれぞれが主人公で、ああだこうだ言ってる人は外野じゃないですか。きっと彼らは彼らなりの充実感というか、幸せを感じていたのかなと想像します」

冒頭で「戦争作品が好きじゃない」と話していた笠松さんを突き動かしたものとは。

「原作を読んで、すごく大変で大切な作品だと思ったんです。もし『日本を悪く描いてやろう』という作品だったら、僕はお話を受けていないですし、原作を読んでそういう思いはないと思ったので、挑戦しようと思えました。戦争の話ではありますが、敵と味方、善悪がないっていうのが、興味深かったんですよね。そして、戦後もあの時代の記憶を抱えて生きているという情景をしっかりと描いているというのも含めて、すごくいい作品だなと思っています」

『奥のほそ道 -ある日本軍捕虜の記憶-』 

© 2024 Curio Pictures Pty Ltd and Screen Australia. 

※全5話をU-NEXTで独占配信中!(字幕・吹替)
video.unext.jp/title/SID0235314

笠松将(かさまつしょう)
1992年11月4日生まれ、愛知県出身。2020年『花と雨』で長編映画初主演を果たし、近作ではドラマ『君と世界が終わる日に(Hulu)』、配信作品『全裸監督2(Netflix)』、主演映画『リング・ワンダリング』、日米合作『TOKYO VICE(HBO max)』、『ガンニバル(Disney+)』などに出演。毎週金曜よる10時より放送中のドラマ「フェイクマミー」(TBS)に出演しているほか、映画『Good News(Netflix)』が10月17日より配信開始。
@koba__SK_ 
Instagram @show_kasamatsu_official

TEXT=GINGER編集部

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