さまざまな経験、体験をしてきた作詞家 小竹正人さんのGINGER WEB連載。豊富なキャリアを通して、今だからわかったこと、気付いたこと、そして身の回りに起きた出来事をここだけに綴っていきます。【連載/小竹正人の『泥の舟を漕いできました』】
「ひとりずき」
うんざりするほどの災難続き。
もはや笑いとばしていただきたいのだが、年末にちょっと高めの石垣からひょいとジャンプしたら、まさかの腰を圧迫骨折した。ものすごーく痛かった。自分のドン臭さを恨みつつ、予定していた年末年始の予定や旅行をあきらめ、家の中で静養することに(2024年下半期、静養ばかりだったなあ)。なんとか歩けたので、不自由ながらも日常生活にさほど支障はなく過ごした。
いつも友人や子どもたちや後輩たちとパヤパヤ楽しそうにしていると思われがちな私だが、ひとりの時間が決して嫌ではない。なんなら大好き(この連載で多々いってますね)。
散々、孤独の淋しさや悲しさを歌詞にしまくっておきながら、私は孤独がすごく得意だ。誰にも気を遣わなくていいのが楽だから。もはや、衰えることのない特技=孤独。
年末年始は、以前GINGER誌面で鼎談した2名(今日子とYOU)とマツコの、「いつもの4人」で何度か我が家に集まり(この時期だけは確実に4人が揃うので)、この3名に身のまわりのことをあれこれ手伝ってもらいながらノンストップで延々と喋っていた。毎年のことながらめちゃくちゃ楽しかった。しかし、それ以外の日は誰とも会わず喋らずダラーッとひとりでいた。ありがたいことに、この3人が年末にも年始にも「嘘だろ?」ってくらいの食べ物を持ってきてくれたので、不自由生活でも食事の心配は皆無だった。
さて、ひとりきりの時間の何がいいって、自分だけの世界にどっぷりと浸かれるのがいい。
今回、年越しもひとりだったのだが、ただでさえちょっと特別な心持ちになるカウントダウンの瞬間、「いろんなことがあった去年が終わって、新しい年が始まる」と、例年以上に神聖かつ厳粛な気持ちになった。2024年は自分が病気をしたり骨折したりしたので、体調を崩して辛い思いをしているすべての人がよくなりますようにと本気で願ったりもした。
自分を正当化するわけではないが、ひとり時間というのはとても大切だと思う。
ひとりって、どんなときよりも自分を客観視できる。そして、何よりも、本当の自分自身の気持ちがまるで霧が晴れていくようにはっきりとわかるので決断力にも磨きがかかる。
逆にひとり時間が苦手な人って、「自分」というものがちょっと薄い気がする。他者や何かに影響されがちで、どんなことでも誰かに相談・共有しなきゃいられなくなり、どんどん自分の個性を失いがちになるような。もちろん例外な人もいるが。
私の周りにいる聡明な人や、面白おかしく周りの人を笑わせているような人って、みな口を揃えて「ひとりでいるのがまったく苦ではない」という。
どんなときでも何をするときでも、絶対にひとりがいい!という人は、それはそれで協調性に欠け、問題あり。だから、誰かと一緒に過ごしながらも、ときにひとりの時間を建設的に過ごして、そこでものごとの真髄やら本質に気づき、心を徐々に熟しながら豊かに歳を重ねていく。そういう人が私は好きだし、そういう人が一緒にいて楽である。
まさかの腰を骨折し、「この姿だけは他人に見られたくないなぁ」と思いながら普段やったことのないような奇妙な動きとポージングで日常生活を送っている私。たとえば、床に何かを落とした際には見事なM字開脚(知らない人は調べてください)で拾うと腰に響かないし、ベッドから起きあがるときは芋虫ポーズでゴロリと端まで転がり後ろ向きで熱い風呂に足を入れるがごとく恐る恐る床に足を下ろすと痛みがない。すごく親しい人には逆にこの勇姿を見てほしいかも。
私ももっと歳をとったら、ひとりでの日常生活がままならないときが絶対にくる。だからこそ、そのときまで「ひとり」を気楽かつ上手に過ごし、周りの人になるべく迷惑かけないようにしていたい。殊勝にもそんなことを思った2025年の始まりでありました。
What I saw~今月のオフショット
今年の初外出は、恒例の妻夫木聡氏との初詣。骨折した私を気にかけながら歩いてくれる妻夫木さんは、まるで介護士さんのようだった。これまた恒例、初詣後のランチの支払いジャンケン(毎回地味にドキドキする)、今年は私が勝ちました。ごちそうさまです。
THE RAMPAGEの吉野北人や武知海青らと知り合いの素敵なお宅でバーベキューランチ(骨折する10日前…)。年々精神年齢が低くなっている気がする私は、ほくちゃんを同年代の友人、海青を先輩のように感じてしまう。ふたりとも性格がよくて信頼できます。
小竹正人(おだけまさと)
作詞家。新潟県出身。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、E-girls、小泉今日子、中山美穂、中島美嘉など、多数のメジャーアーティストに詞を提供している。著書に『空に住む』『三角のオーロラ』(ともに講談社)、『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎)、『ラウンドトリップ 往復書簡(共著・片寄涼太)』(新潮社)がある。