伝えたい想いがあるとき、人は手紙を書きたくなる。女優の山口乃々華さんが、“あのひと”に向けて今の気持ちをしたためる連載。今回は、愛用してきた「靴下」に宛てた手紙。【連載「〒ののポスト」】
穴のあいた靴下へ
ふと、私の足元を見たら紺色の靴下に穴が。あなたいつのまに? 恥ずかしくて、もじもじ。なんとも間抜けな私の足元。穴が空いてるってだけで、すぐ間抜けになれる靴下の存在ってなんなの?と恥ずかしさから靴下に八つ当たり。
穴のあいた靴下の間抜けさって、歯に挟まった青のりに似てるな、と思う。綺麗なお姉さんが真剣に話をしている歯に青のりが挟まっていたとき、ちょっと気まずくて、かなりおもしろい。気難しいおじさんがまたまた真剣なシチュエーションで例えば正座をしている靴下に穴があいていることに気がついてしまったときもそう。衝撃を受ける度合いは同じくらい。
しかし、穴のあいた靴下は、時に努力を感じさせたりもする。(青のりは間抜けなままだと思うけど) 何かを一生懸命やっている人の靴下の穴だったとしたら、あぁ、いっぱい頑張って、いっぱい踏ん張ったんだな、とか。あとは、ものを大事にするんだな、とも思ったり。
ちょっと話は脱線するけど、もし穴のあいた靴下みたいな性格の人がいたら…と考えてみる。なんだかいい人そうじゃない? いろんな経験があって、何かを守ってきたがゆえ、ちょっと穴(心の傷だとして)があいちゃってるけど、それも魅力にして、人を和ませる感じはどことなく優しそう(笑)。
妄想していくと愛おしくなる、不思議な存在。穴のあいた靴下。
あれ、さっきまで恥ずかしいだけだったのに。ものは考えようだなぁ。 あなたのこと、家に帰ったら縫ってあげます。
山口乃々華
山口乃々華(やまぐちののか)
3月8日生まれ、埼玉県出身。2020年末まで E-girlsとしての活動を経て、2021年から女優として本格的に活動を開始。 映画『イタズラなKiss THE MOVIE』シリーズ、ドラマ・映画『HiGH & LOW』シリーズやHulu版『崖っぷちホテル!』などに出演、『私がモテてどうすんだ』ではヒロイン役を務めた。近年ではミュージカルにも活動の幅を広げ、2022年には『SERI〜ひとつのいのち』でミュージカル初主演を務め、2023年は「SPY×FAMILY」ではフィオナ・フロスト役、a new musical『ヴァグラント』ではヒロイン(W)役を好演し、舞台『「呪術廻戦」-京都姉妹校交流会・起首雷同-』では、釘崎野薔薇役を務めた。2024年はミュージカル『ラフへスト~残されたもの』やリーディング・ミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』などに出演。2025年も2月に音楽劇『愛と正義』、4月に音楽劇『NINETEEEEN GRRRLZ’ 99』に出演、そして9月からはミュージカル『SPY×FAMILY』再演など、舞台での活躍が期待される。
Instagram yamaguchi_nonoka_official
Twitter @nonoka____Y