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TIMELESSPERSON

2024.05.12

眠れる欲望が放たれるとき。その女性は夢中でせがんでいた【紺野ぶるま】

本当は興味津々なのに、決して踏み出せない――芸人 紺野ぶるまさんの自分観察。【連載「奥歯に女が詰まってる」】

見ちゃいけないものをみた女

紺野ぶるまエッセイ

もう10年以上も前だが、個人経営の小さな居酒屋でバイトさせてもらっていた。店主とバイトの私だけで回せるような、地域にひとつはあるようなお店。そこではいろんな人間模様をみせてもらった。

週末になると現れるヒゲのイケメンがいた。その人はまずブリの刺身を頼む。しばらくすると鍋を注文する。シメの麺を入れたあと、ブリの最後の一切れをポンっと入れブリしゃぶにし、連れの女性の取り皿に「はい」と乗せる。

「ヒゲとのギャップ!!」

女性もそう思ってるのが表情でわかった。金曜日の23時。マイナーな駅だし、きっとヒゲの家の近くなのだろう。ゴール目の前に置いてあるボールをチョンっと蹴るかのように、ブリを鍋に入れるのを毎週違う女性にやるのを私はみていた。

一円にもならない正義感から私はその男にめちゃくちゃ塩対応をするようになり、そのせいかいつからかその男は来店しなくなった。今思うとめちゃくちゃ迷惑なバイトである。

いつも一人で来ている50代の公務員の女性がいた。既婚でお子さんが二人、授業参観に来ていた友達のお母さんを思い出すような優しい人だった。いつもキッチンに一番近い常連さん用の大きなテーブルで「ほんの休憩」といった様子で、なんとなくついているテレビを眺めていた。

常連さんたちが集まると相席して飲む流れがあったのだが、そのなかに店長の後輩の20代前半の男がいた。その日はえらく盛り上がっていて、そのまま「じゃあ俺らスナック行くから、ぶるまちゃんあとはよろしく」と店長含め店を後にした。

翌日だった。その公務員の女性がいつもの席でえらく落ち込んでいる。

「実は昨日…」と店長に打ち明ける話を私も一緒に聞かせてもらうと、どうやらスナックでその20代前半の男性と席が隣で気がつくとイチャイチャしていたらしい。

「最終的に帰り道で…なんかちょっと…」というと、酒をグっと飲み口をつぐんだ。

「ママさんバレー」で画像検索したら一発目に出てきそうな印象の“いかにもお母さん”なその人の「ちょっと…」がどこまでのことを言っているのかわからないが、大好きな夫や子供たちもいるのにそんなことをしてしまった自分が許せない様子だった。

「まあ、相手も覚えてないんじゃない」と慣れた様子で店長が言っても、その人は引き続き自責の念に駆られていた。

その5分後だった。当の男性が来店したのである。待ち合わせした様子ではなくお互いに「あ…」と言い、昨日同様相席をするものの気まずい時間が流れた。

こちらもどうしていいかわからず言われた酒を作っては運びを繰り返していたのだが、30分くらい経ったころ、ふとそちらに目をやると女性の方から男性にキスをしているのである。

私は漫画みたいに持っていたオボンを落とした。その音も聞こえないほど女性は夢中でキスをせがんでいた。乗り気じゃない男性を見て、昔テレビで誰かが「若いときに遊んでいない人ほど歳をとってから暴走する」といっていたのを思い出した。

時間が経った今なら仕方のないことだとわかる。人の欲望や好奇心は、歳をとったり、ライフスタイルが変わっても簡単になくならない。それは若いときに遊び尽くしたとて、なくなるものではない。守るべきものや固定観念にくるまってみえていないだけで、むしろ日々大きくなっていて、酒を飲むと、眠れる獅子が呼び起こされるのだと思う。

私も酒により獅子がムクっと顔を出すことがあるが、その度にママさんバレーのあのときの横顔を思い出し「ドラマ昼顔みたいな絵にはならない」という現実を知っている自分にホッとする。若いときにたくさんバイトしていてよかった。普段我慢してるハーゲンダッツを買うことで自分を満たし、家路に向かうのであった。

最後に

欲に溺れた人間の恋とかけまして

お酒と解きます

その心はどちらも

絶対完敗(乾杯)するでしょう。

今日も女たちに幸せが訪れますように。

紺野ぶるま(こんのぶるま)
1986年9月30日生まれ。松竹芸能所属。著書に『下ネタ論』『「中退女子」の生き方 腐った蜜柑が芸人になった話』『特等席とトマトと満月と』がある。
Instagram @buruma_konno
X @burumakonno0930

TEXT=紺野ぶるま

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