“わたしの心地よさ”を基準に行動することが、ウェルビーイングに生きるカギになる。そのために、もっと自分自身を知る=自分のトリセツを手に入れませんか? 保健学博士の島田恭子さんがナビゲート。【連載「自分学 わたしのトリセツ」vol.37】
誰でも、どこでも、即できる。ココロのデトックス

前回の記事では、紙とペンでココロを整える、”書く瞑想のススメ” についてお話しました。
忙しい日々…。私たちのココロはまったくもって「開けすぎたブラウザのタブ」みたいに、とっ散らかった状態になりがち。
そんなとき、私が最近超絶おススメしているのが『ジャーナリング』です。
特別な道具はいりません。お気に入りの手帳とペンがあればそれでOK。今日からすぐに試したくなる「ココロのデトックス法」、お伝えしますね。
ジャーナリングは「脳とココロのキャッシュ消去」
ジャーナリング、一言でいうと「書くマインドフルネス」。
「日記とどこが違うの?」とよく聞かれますが、
日記は「何が起きたか(出来事)」を記録するもの。
ジャーナリングは「何を感じているか(キモチ)」を書き出すもの。
心理学の世界では「エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)」と呼ばれ、たった数分、ココロの内を書き出すだけで、ストレスが減って、免疫力まで高まることが、多くの研究で証明されているんですよ、スゴい。
なぜかって実はこれ、パンパンになった脳とココロのメモリを解放し、動作をサクサクにする「キャッシュ消去」のようなもの。書くだけで、脳とココロに「余白」が生まれるんですね。
まずは「ココロのゴミ」を出し切ってみよう

まずご紹介したいのが、『ブレイン・ダンプ(脳内排出)』。
ココロのモヤモヤを、そのまま紙に「ゴミ捨て」するイメージです。
ーやり方: タイマーをセット(5分くらい)、頭に浮かぶことを手を止めずに書き殴る。
ーポイント: 文脈も、誤字脱字も気にしない。「お腹が空いた」「あの人の一言がムカつく」「掃除しなきゃ」…。誰にも見せないものだから、ドロドロした感情もそのまま書いていいのです。
これをやると、フシギなことが起こります。
自分のなかにあるうちは、巨大な怪物に見えた不安やモヤモヤやドロドロが、書き出して「可視化」された途端、「なんだ、こんなことか」と。自分から切り離して、客観的に見られるようになるのです。
ココロに栄養を届ける「3つの魔法」

デトックスしてココロに余白が生まれたら、次はそこに心地よい「栄養」を注いであげましょう。たとえばこんな栄養はいかがでしょう?
1: セルフ・コンパッションのひととき
自分を大切な親友のように扱い、優しい言葉をかけてあげます。
私たちは、人には優しいくせに、自分には厳しすぎるもの。
だから大切な親友に話すように、自分にも語りかけてみましょう。
「今日、締め切りすぎちゃって落ち込んだけど、最後まで粘ったのはとても偉かったね」
「毎日なかなか大変な状況なのに、よくやってるよ」
そう書くだけで、自分を責めるトゲトゲした気持ちが、少しずつ溶けていきます。
2: 3 good things(3つの良いこと)
寝る前に、今日あった「良かったこと」を3つ書きます。「コーヒーを丁寧に淹れた」「好きなペンを買った」とか、「道ばたのお花がキレイだった」なんてささいなことでいいんです。
これを続けると、脳が勝手に「日常のなかにあるささやかな幸せ」を探すようになるんですよ。
3:もしものときの安心リスト
「If-Thenリスト」とも言って、「もし●●なら、○○する」とあらかじめ書いておくこと。
たとえば不安がある時:「もし(不安なこと)が起きたら、(こうする)」と書きます。
例:「もし会議で緊張したら、一度深く深呼吸をする」
こうして対処法を書いておくだけで、脳は「準備ができている」と判断し、過度な不安を鎮めてくれるんですよ。
ペンは、自分を愛するための「杖」になる

私は、ジャーナリングって、”自分との対話”だと思っています。
私たちは、他人の声にはとっても敏感。
なのに一番近くにいる大切な、”自分の声”は無視してしまいがち。
けれど手帳に向き合い、ペンを走らせる時間は、誰にも邪魔されないあなただけの聖域です。
上手に書こうとしなくていい。
毎日続けられなくてもいい。
ただ、「あ、今、私、疲れてるんだな」とか、「本当はこうしたかったんだね」に気づける。
自分のココロに優しく触れ、耳をかたむけてあげること。その積み重ねが、揺るがない、あなた自身を形作っていきます。
さあ、この記事を読み終えたら、まずは一言、手帳に書き出してみませんか?
その一筆が、あなたの明日を、軽やかにしてくれるはずですから。
出典
●Ramirez, G., & Beilock, S. L. (2011). Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom. Science, 331(6014), 211–213. https://doi.org/10.1126/science.1199427
●Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., Tom, S. M., Pfeifer, J. H., & Way, B. M. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2007.01916.x
●Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. https://doi.org/10.1016/S0065-2601(06)38002-1
島田恭子(しまだきょうこ)
予防医学者・保健学博士。医学や心理学の知見を、女性のウェルビーイングに役立てたいと活動中。(社)ココロバランス研究所代表。著書『心が疲れたらセルフケア』が好評発売中。ストレスなく心の疲れを取り、元気を取り戻すための50の方法を紹介。
https://customer-harassment.org/kyokoshimada/

