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TIMELESSPERSON

2023.11.10

稲垣吾郎が考える『正欲』とは。「欲が人間の生きる原動力なのは間違いない」

ベストセラーとなっている朝井リョウの長編小説『正欲』が豪華俳優陣により待望の映像化。11月10日(金)より全国公開される同タイトル映画の主演を務めるのは、稲垣吾郎さん。本作を「覚悟のいるテーマだった」と振り返る彼が、公開を直前に控えて語った想いとは――。

憧れの人との作品作りが実現した

稲垣吾郎

「お芝居をしていて、本当に楽しい。演じている最中にふと俯瞰で自分を眺めて『この人お芝居が好きなんだな』と思ったんですよね」

そんな言葉を口にして微笑んだ稲垣吾郎さん。主演舞台『多重露光』の東京公演を前日に終えたばかりのこの日、公開を間近に控えた映画『正欲』の取材現場で自身の想いを語り始めた。

原作は朝井リョウさんによる長編小説。既存の価値観を揺さぶる内容が、多くの読者の支持を得てベストセラーとなった。監督は『あゝ、荒野』や『前科者』などを手掛けた岸善幸さん。稲垣さんは、朝井さんの著書の映像化作品や、岸監督の作品を何作も観ていたそうで、「いつか参加したい」という気持ちを抱いていたという。

「朝井さんの小説って本当にすごくて。群像劇なんだけど、最後には一つひとつのピースがまとまっていく――最初は違う方向を向いていたものが最後には交わる…その組み立て方が見事だなと。

そして岸監督の『あゝ、荒野』、あの作品は衝撃的でした。ドキュメンタリーを観ているような世界に誘われて、その生々しさというか、かなり骨太な作風に感銘を受けました。

最初は、この『正欲』もワイルドな感じになるのかと想像していましたが、実際はファンタジー的な要素もある、優しくて美しい作品に仕上がっています。原作の厚みを監督が上手くまとめてくださいました」

“この世”に窮屈さを感じているすべての人へ

物語の中心となるのは――。不登校の息子をもつ父親であり、検事の寺井啓喜。広島のショッピングモールで販売員として働く桐生夏月。両親の死をきっかけに地元に戻った夏月の同級生、佐々木佳道。大学で準ミスターに選ばれる容姿を持ちつつ、人と距離を置く諸橋大也。大学の学園祭でダイバーシティをテーマにしたイベントに携わる神戸八重子。

仕事や家庭環境、性的指向、容姿――異なる背景を持つ5人が、あることをきっかけに偶然、そして必然のように交錯する。社会に息苦しさを感じている者同士が互いの存在に気付き、生きていくために手を取り合い、社会と共存しようとする。そんな人間模様が描かれる。その正誤を、誰がジャッジできるだろうか。稲垣さんは「覚悟のいるテーマだった」と話したうえで、作品について教えてくれた。

「人間は誰しも、人に言えないことを抱えているし、二面性どころじゃなくいろんな面を持っていますよね。僕はそれでいいと思うんです。この映画には、生まれ持った“とある性的指向”によって自身を社会の異物だと思い、未来に光を見出せなくなる人が登場するんですが、次第に同じ境遇の人同士で繋がっていくんです。どうしようもなく孤独を感じている人が、これを観たことで『自分は1人じゃないんだ』と思っていただけるといいな。そして…自分を愛せるきっかけになればいいなと思いますね。僕は元々自分のことを愛せているので(笑)、そこは大丈夫かな」

映画 正欲
©2021 朝井リョウ/新潮社  ©2023「正欲」製作委員会

また、稲垣さんは撮影現場で共演者の演技に震えるような、印象的なシーンがあったという。

「物語の終盤、新垣さん、磯村さん、佐藤さんとある場所で対峙するシーンがあったんですが、俳優人生で忘れられないシーンのひとつになりました。目の前にいる一人ひとりの覚悟を感じて、その気迫に圧倒されました。今でもあの3人の目が忘れられないです。いやあ、本当に素晴らしかったですね」

稲垣さん演じる寺井啓喜は、検事としての正義に捉われすぎているのか、物語が進むにつれてその頑なさが際立ち、周囲とのひずみが浮き彫りになっていく。その感情のグラデーションが圧巻で、スクリーンの向こう側に引き込まれる。

「僕が演じた啓喜は、検事という仕事柄もあるし、家庭を支えなければいけないという責任感から、大真面目で堅い部分があるんです。社会からはみ出すことが許せず、マイルールが人一倍強いゆえに、無意識に自分の“正義”を押し付けてしまうんですが――。

もし啓喜みたいに相容れない、自分の思う正しさをぶつけてくる人がいたら? 僕自身はそういう人に同調しなくてもいい、芸能という特殊な仕事をしているから、あまり偉そうなことは言えないんだけど。でも、そういう人って、きっと社会に多いよね。僕は、それはそれで仕方ないと思う。きっとそうやって生きてきたから。人に言うことで自分を肯定したり、発信することで自分を保ったりして。だから、自分を否定されるような言葉は受け流すしかないんじゃないかな」

作中ではさまざまな「欲」の形が描かれる。稲垣さんにとっての「欲」とは何だろう。

「生きていくうえで必要なもの。いくつになっても欲深くいたいな、と思いますね。若いときは今よりもっとギラついていたけど、少しずつ欲がなくなってきていて…。年齢を重ねると自分の悦ばせ方が分かってきて、自分で加減を決めてしまう。それに葛藤したりすることもありますね。自分のやりたいことや欲が人間の生きる原動力なのは間違いないから、アンテナを張っていたいものです」

「正しい欲望」とは何だろうかーーそんな問いを投げかけてくるようなタイトル『正欲』。もし辞書に載せるとするならば、なんと解説しますか?と聞くと、「難しいな…」と少し間を置いて。

「正しい欲なんて、答えはない! 自分にとって正しければいいのかなと思います。その人の思う正しさに他人が口出していいわけないんです。自分の心の一番奥に核になるものを持っていればいい、自由でいいと思います。人それぞれが違うように、感じる欲にもバリエーションがあっていい。個性や生き方を認め合えることができればよりいいよね。…どうでしょう? ハハハ」と稲垣さんらしい柔らかくもあたたかい答えが飛び出した。

インタビューの最後、稲垣さんは「希望を感じるようなエンディング。1人でも多くの人の心に届くことを願っております。僕は本作を観た人の声が届くのが楽しみで仕方ない」と言葉を紡いだ。

映画のキャッチコピーは「観る前の自分には戻れない」。“多様性”という言葉を便利に使うようになったのはいつからだろうか。そもそも多様性という言葉の本質を理解しているのだろうか。そんな観る側の価値観に一石を投じる作品が完成した。たとえ共感できなくても、今すぐに理解できなくても、観る人の心に強烈に引っ掛かる作品になること間違いない。

映画『正欲』

正欲
©2021 朝井リョウ/新潮社  ©2023「正欲」製作委員会

出演/稲垣吾郎 新垣結衣 磯村勇斗 佐藤寛太 東野絢香
監督・編集/岸善幸
原作/朝井リョウ『正欲』(新潮文庫刊)
配給/ビターズ・エンド
https://bitters.co.jp/seiyoku/#
※2023年11月10日より公開

稲垣吾郎(いながきごろう)
1973年12月8日生まれ、東京都出身。1991年に芸能活動をスタートし、2017年には「新しい地図」として始動。映画『十三人の刺客』『半世界』などで見せた演技力が高く評価される。

PHOTO=堀修平

STYLING=黒澤彰乃

HAIR & MAKE-UP=金田順子

TEXT=GINGER編集部

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