美容家・神崎恵さんの心の機微を綴る連載「Megumi’s Mirror」。今回のテーマは「現状維持」。
vol.10 「現状維持」がいちばん大変
以前、この連載で、私は“がんばり星”に生きる“がんばり星人”だとお伝えしました。「がんばり続けていると、いいことがあるよーっ!」。そう、声を大にして叫びながら、一方で「なんでこんなにがんばってるんだろう…?」と、ひとり泣きたくなる夜もある。
矛盾してますよね、ええ。
でも、昔っから、がんばり星に生きる住人ゆえ、泥臭くても涼しい顔でがんばることで、「自分を信じる力」は確実に育つ、ということを知っているんです。だから、がんばれる。
ですが、あるとき、自分の体力を超えた怒涛のスケジュール(がんばり星人はここにも快感を覚えるドMです・笑)の日々で、ちょっとアップアップしてしまい、思考が停止しそうになることがありました。
そんなとき、長年、苦楽を共にしている社長と、今後について話す機会がありました。
「そんなに仕事パンパンでどうするんだ? これからどうしていきたいんだ?」という社長の問いに、「もっとこういう仕事をしてみたい。もっと、こういうことにもチャレンジしてみたい」と、“もっと、もっと”を連発する私。
すると、社長は静かにこう言いました。「現状維持がいちばん大変だぞ」
…確かに、そうだ。このとき、何かがふっと抜けたような気がしました。
若いときからずっと、常にフル回転。やりたいことのために走り続け、鍛え続け、がんばり続けてきました。それはとても気持ちいいことだし、実際、結果を伴ってくるから、達成感もある。いつも自分になんらかのお題を出して、負荷をかけている状態で生きてきました。だから、「私、今がいちばんマッチョです!」と胸を張れたんです。
そんな私ですから、“現状維持”という言葉には、どこか物足りなさを感じていました。「現状維持なんて、なまっちょろいこと言ってないで、もっともっと、上を目指すためにがんばらなきゃ!」って。
でも、人生の折り返し地点に立っている今、体力、気力、やる気、課題、日々の負荷、すべてにおいてまずは“現状維持”こそが基本です。だって、放っておいたら、体力も気力も静かに落ちていく一方ですから。
年齢に関係なく100がんばっても、100に達しない。年々ベースが落ちている分、プラスαがんばらないと、100にならないんです。
つまり、プラスαで100にした上で、さらにがんばらないと、私が目指すがんばりにならないというわけです。
ふぅ… 。そう考えたら、「現状」を「維持」することの大切さと大変さを実感すると同時に、がんばり方を変えなきゃ、と痛感しました。
上へ上へと昇っていくロケットの火力みたいな爆発的なエネルギーももちろん必要ですが、前へ前へと着実に地に足をつけて歩むための静かな燃料も、両方必要ですよね。
そういえば最近、「持久力」という言葉が急に気になり始めています。これまでは、「瞬発力」が、私の好きな言葉ランキングでは圧倒的上位で、持久力はランク外(笑)。でも、同じことをやり続けること、継続すること、じっとり、じっくりとしたイメージの「持久力」の持つ静かなパワーは、この年齢になると特に、すべての基礎を磐石にしてくれる気がします。
がんばることはやめないけれど、がんばり方をちょっと変えて、自分の“がんばり力”をうまく操縦しながら、上へ、前へと進んでいきたい。そう思う今日このごろです。
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