今、世界を舞台に活躍するメイクアップアーティストであり、僧侶の西村宏堂さん。LGBTQ当事者としても多くの情報を発信し、人々に勇気を与える西村さんに、自身の生き方について聞いた。
メイクアップアーティストとして活躍後、僧侶に
お寺に生まれた西村さんは、18歳で渡米、大学卒業後はメイクアップアーティストとして活躍。のち修行をし、僧侶の資格も取得。そして今、LGBTQの当事者として、世界中で啓発活動を行っている。その半生を綴った著書『正々堂々』は“THIS MONK WEARS HEELS(ハイヒールを履いたお坊さん)”というタイトルで英語でも出版され、BBCやCNNの番組で取り上げられるなど、各国で話題に。西村さんは常に“Your unique color is a hope”と語り発信し続けている。
選択肢は青かピンクのふたつ。だけど私は「紫」を選びたかった
「小さいころ、絵の具セットのバケツの色を、青かピンクかを選ばなければならなかったことが。男の子は青を、女の子はピンクを選ぶとされていて、ほかの選択肢はありませんでした。私は男の子とミニ四駆で遊ぶのも好き、女の子とプリンセスごっこをするのも好き。どちらを選ぶべきなのかわからなかった。だって私は、ピンクと青が混ざった『紫』のような気分でいましたから。けれどもちろん紫のオプションはない。そうやって実は世の中には選択肢を与えられていない人がいるんです。そういう人たちに、自分の色を持つことは間違っていないんだとメイクアップアーティスト、そして僧侶として発信しています。自分の色を誰もが自信を持って表現できたら、人々はさまざまな色があることに気付き、社会全体が鮮やかになる。そして世の中は進化していくんです。私たちそれぞれの色は、世界を変える、その希望なんですよ」
メイクを通して人々に勇気を与えたい
西村さんは先日、悩みを抱える人々に寄り添うためのメイクアップ講座をロンドンで開催。
「電車で4時間かけてやってきた方が『体が女性で心が男性であるということを、自分の街では受け入れてもらえない。でも誰かにわかってほしかった』と。凛々しく強く見えるメイクを提案したら、とても喜んでくれました。そうやって話を聞いて心を解放する手助けをする、メイクを通して人の内面を支えたいと思っています」
男だから、女だから、ましてや僧侶だから、メイクアップアーティストだから…。他人が描くイメージに沿って生きる必要はないのだと西村さんは語ります。
「仏教の教えは『誰もが平等に救われる』ということ。僧侶には厳粛なイメージがありますが、そのイメージに自分を縛りつける必要はありません。自分らしい姿で自分の色を発信していく。そしてこんな人もいるよ、だから勇気を持ってほしい、と発信していきたいんです」
西村宏堂(にしむらこうどう)
メイクアップアーティストであり僧侶。LGBTQの当事者として、数々のメッセージを発信し続けている。著書『正々堂々』の英語版『THIS MONK WEARS HEELS:BE WHOYOU ARE』。世界中の人たちが西村さんから勇気をもらった。