「歌舞伎」と聞くと、古典芸能としての奥深さ、絢爛豪華な舞台の美しさ、魅力あふれる役者さんたちの華やかさに心は躍るものの、未知の世界であるがゆえに、尻ごみしてしまう近寄りがたさも感じます。 そんなアラサー女子のために、四代目 市川九團次(よだいめ いちかわくだんじ)さんが 、ご自身の歌舞伎俳優としての日常を綴ることで、歌舞伎をもっと身近に感じてもらいたいという連載第2回目。どうぞお楽しみください♪(編集部より)
縁あって、今の自分がある
季節を分ける節分も過ぎ、立春を迎えましたが、まだまだお寒い日が続いておりますね。
皆様、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
今月私は、高麗屋三代ご襲名で大変賑わっております歌舞伎座にて、歌舞伎十八番「暫(しばらく)」という演目に出演させて頂いております。
役名 : 荏原八郎国連(えばらはちろうくにつら)
通称〈腹出し〉というお役です。
このお役は布団のような綿入りの着肉というものを身に着け、その上に大きな衣裳をつけます。
大変身体の大きな敵役でございまして、以前の私の体であれば、この腹出しも着肉はいらないんじゃないかというほどに太っておりましたが、昨年よりダイエットに励みまして、トレーニングと食事に気を遣うことは今では私のライフワークのひとつとなりました。
トレーニーング後のロッカールームにて
少し痩せることができましたので、あとは維持することを念頭において、清々しい毎日をおくっております。またトレーニング、食事などダイエットに挑戦して己と向き合い学んだことなど・・・あっ、話がそれましたね~(笑)。ダイエットのことは、またの折に触れることにいたしましょう。
“腹出し”にみるような衣裳や鬘(かつら)のひとつひとつにも、歌舞伎独特の面白さ、創造力の凄さを感じます。歌舞伎では大体、衣裳や顔で善悪のキャラクターが分かるようになっているのです。
そもそも隈取(くまどり)の顔のすじは、血管の隆起を誇張したものといわれております。
基本的には――
赤い隈取は若さ、正義、超人、強さの象徴など。
青い隈取は悪、亡霊など。
茶色は人以外の動物、虫、獣など。
顔でおおよその役柄がはっきりわかるのも特徴です。
ところで、皆様は歌舞伎をご覧になったことはございますか?
初めてご覧いただく方は何を観たらよいか悩むことと思いますが、初めは、この役者さん観てみたいっ!というような想い、そこからでいいと思います。
そこで初めて目の当たりにする演目も縁ですし、大きな発見があると思いますし、間違いなく楽しめるものと思っております。
私がそうであったように。
ちなみに私が初めて観た歌舞伎は「仮名手本忠臣蔵」という演目でした。
このときは知り合いから、都合が悪くて観にいけなくなってしまったので行ってみる!?と、チケットを譲って頂いたのがきっかけでした。
そこから少しずつ興味を持ちまして、次に観た演目が「勧進帳」でした。まだ十代でしたから、正直にいうと細かな内容までは理解できなかったのですが、内容を理解するというよりも歌舞伎のもつ夢のような空間、世界観に只々感動していたことを思い出します。
当時の私は時代劇の俳優を目指して修行していたこともあり、伝統芸能である歌舞伎を観ておかなくてはいけないのではないか――と感覚的に考えていました。
そうこうしているうちに、スーパー歌舞伎出演のきっかけをいただきまして、これが自分自身が大きく心動かされた転機だったと思います。当時、23歳。
こうして振り返りますと、出会いやきっかけ、選択や決断のすべてが“ご縁“だと感じております。
これからも皆様とのご縁がつながりますように!
では、この辺で失礼いたします。
次回もお楽しみに!
~九團次情報~
四代目市川九團次オフィシャルHP
※次回は3/15配信予定です。