じわじわと距離が縮まっていくふたりの関係と、その間に流れる繊細な感情——。6月5日(金)より全国公開される、映画『モブ子の恋』が描くのは、言葉にできない想いが少しずつ形になっていく、ゆったりとしたラブストーリー。信子の恋のお相手・入江を演じるのは、話題作にひっぱりだこの木戸大聖さん。キャラクターへの愛情に加えて、恋愛観や人生観までを、飾らない言葉で語ってくれました。
“恋する気持ち”にフタをしない

――脚本や原作を読んだとき、どんな印象を持ちましたか?
ここまで展開がゆっくり進んでいくラブストーリーってなかなかないと思っていて、この作品ならではだなと感じました。原作や台本を読み込んでいくと、本来ならスキップされてしまいそうな感情や瞬間が、丁寧に描かれているからこそ、このテンポなんだなと理由が分かりました。
たとえば「手が触れる」みたいなシーンでも、ただドキッとする、というだけじゃないんですよね。衝動的な感情をどこかで抑え込んでいる二人にとって、その一瞬の出来事が、ほんの少し蓋がずれて、内側にある気持ちがにじみ出るようなきっかけになる。
偶然のように見える出来事かもしれないけど、その偶然がふたりにとってはすごく大きな意味を持っていて。言葉にできなかった思いや、これまで動かなかった関係が、少しずつ動き出す。そういう瞬間が、この作品のなかではとても大切に描かれていると感じました。
――今回演じた入江博基という人物について、どんなところに魅力を感じましたか?
入江という役は、誰よりも周りのことをちゃんと見ている人物だと思いました。特に信子(=モブ子)の小さな頑張りだったり、努力だったり、他の人が見落としてしまいそうな部分に気づいてあげられる。それって、頑張っている側からするとすごく救われることだと思うし、そこが彼のいちばんの魅力なんじゃないかなと感じました。
――わかりやすく“好き”を表現するというより、内に秘めた感情をどう表現するかが見どころのひとつですよね。
そうですね。これまで僕は、気持ちをストレートに外に出す役が多かったんですけど、今回はそこをあえて抑えなくてはいけなくて。特に前半は、視聴者の方にも「入江は信子に対してどう思っているんだろう?」と感じてもらう必要があったので、わかりやすく出しすぎないことをすごく意識しました。
――もどかしくもあり、ずっと見守っていたいふたりでした。
それがまさにこの作品の魅力でもあるのかなと思っています。それも含めて、ふたりが過ごしてきた時間であり、関係性の積み重ねなんですよね。
僕は、気持ちが“目”に出やすいらしく、ラブストーリーでは特に意識して演じることが多いんです。ただ今回は、感情が見えないように抑えるということを意識しました。その意味で、メガネがフィルターの役割をしていて。感情を出しすぎないための“ストッパー”として機能してくれました。

――作中には“キュンとするシチュエーション”もたくさんありましが、特に印象に残っているシーンはありますか?
いわゆる“キュンキュンする”という意味では少し違うかもしれないんですけど、僕が好きだったのは、信子がひとりでいるときの表情です。
例えば、お店でポップを見てちょっと嬉しそうにしていたり、部屋で「今日は何を着ようかな」と考えているときだったり。誰かと関わっているときには、自分の気持ちに蓋をしているんですが、ひとりの時間や、好きなことをしているときに、素直な表情が出る。ああいう何気ない瞬間に見せる笑顔を見たときに、「こんな顔もするんだな」と感じて、すごくグッときました。
――入江の恋愛観と、ご自身の恋愛観で似ているところはありますか?
わりと似ている部分は多いのかなと思います。僕自身も積極的にガツガツいくタイプではなくて、どちらかというと、相手がどう思っているのかをすごく気にしてしまうタイプ。
付き合う前の段階でも、ある程度関係が築けていないと、自分の気持ちだけを一方的に伝える、というのはなかなかできなくて。友人期間を経ていくほうが安心するというか、そういう意味では入江の気持ちはすごくよくわかります(笑)。
――かなり慎重派ですね。勢いで気持ちを伝えてしまう感覚はあまりないですか?
でも、それもわからなくはないですね! 基本的には慎重なんですけど、ある程度関係ができていて、「いいな」と思った瞬間に、理屈じゃなくて、気持ちが先に出てしまうことはあると思います。「言おう」と決めているわけじゃないけど、ふとしたタイミングで言ってしまう、みたいな。

――信子と入江は、同じバイト先で出会い、人生の転機を迎えるなど、“運命”や“タイミング”の要素も印象的でした。恋愛におけるそういった運命について、木戸さんはどう感じていますか?
運命はあると思います。たとえば、「地元が一緒」ってだけで一気に距離が縮まることってあるじゃないですか。「あそこ知ってる?」とか「同じ小学校?」みたいに、会話がどんどん広がっていく。
本来であれば、少しずつ時間をかけて関係を築いていくところが、共通点があることで、一気に何段階か進む感覚というか。偶然のように見えるかもしれないですけど、その積み重ねが結果として関係を深めていきますよね。そういう意味では“運命”という言葉で捉えることもできるのかなと感じます。
――タイミングについてはいかがですか? 気持ちはあっても、タイミングが合わずにすれ違ってしまうこともありますよね。
タイミングもすごく大きいと思います。たとえば、自分が落ち込んでいるときに、誰かに優しくされたり、言葉をかけてもらったりすると、それがすごく響くことってあるじゃないですか。そういうときに、相手の気持ちと自分の状態がちょうど重なったら、一気に距離が縮まることもあると思うんです。逆に、自分がすごく充実しているときだったら、同じ言葉をかけられても「今はいいかな」と受け取らないこともあるかもしれない。
そういう“ちょっとしたズレ”も含めて、タイミングって本当に大きいなと感じますし、それがぴったり重なる瞬間って、なかなか狙って作れるものではないと思うんですよね。それも含めて、“運命”なんじゃないかなと思います。
――信子を演じた桜田ひよりさんとは、どんなコミュニケーションを取りながら関係性を作っていきましたか。
特別に何か話し込んだというより、現場で一緒に過ごしている時間そのものが大きかった気がします。
最初にお話ししたときは、「現場ではあまり話さないタイプ」とおっしゃっていたんですけど、実際は全然そんなことなくて(笑)。スタッフの方々とも分け隔てなく明るく接していて、その姿がすごく印象的でしたし、純粋にステキだなと思いました。
その明るさに引っ張られるように、僕も自然と現場でリラックスしていられたので、すごく助けてもらいました。オンとオフのリズムを一緒に作っていけたのは、本当にひよりちゃんのおかげです。

――今年は20代ラストイヤーですが、この一年でやっておきたいことがあれば教えてください。
できれば海外に一人旅に行きたいなと思っています。行ったことのない国でもいいですし、必ずしも遠くでなくてもいいんですけど、「これまでとは違う環境に自分を置いてみる」ということはやっておきたいですね。もちろん30代でもできることではあるんですけど、その前に一度、普段の生活から離れて、刺激を受ける時間を持っておきたいなと。
――あえて知らない環境に飛び込んでみる、という感じですね。
実は10代のころや20代前半には、国内で一人旅をよくしていて。目的地を決めずに東北に行ったり、あえて宿も決めずに、その場その場で過ごしてみたり。ちょっと不便な状況で、自分で考えて動くような旅がすごく好きだったんです。
だからもし海外に行くとしても、観光地を巡るというよりは、ノープランに近いかたちで、その土地の空気や人との出会いを感じながら過ごしてみたいです。20代が持っている“吸収力”があると思うので、その感覚を30代に持っていけたらいいなと思っています。
【6月5日(金)全国公開】映画『モブ子の恋』

出演/桜田ひより 木戸大聖
早瀬 憩 唐田えりか 草川拓弥 荒木飛羽
蒼戸虹子 占部房子 吉田ウーロン太 TheWorthless
中村優子 古舘寛治
監督/風間太樹
原作/田村茜「モブ子の恋」(ゼノンコミックス/コアミックス)
配給/イオンエンターテイメント、東京テアトル
mobukoi-movie.jp
X @mobukoi_movie
Instagram @mobukoi_movie
木戸大聖(きどたいせい)
1996年12月10日生まれ、福岡県出身。2017年俳優デビュー。2022年、Netflix オリジナルシリーズ『First Love 初恋』で一躍注目を集める。近年の主な出演作に、Netflixオリジナルシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」、「9ボーダー」、「海のはじまり」劇場アニメ『きみの色』、映画『ゆきてかへらぬ』、『WIND BREAKER』などがある。
Instagram @taisei_kido_

