さまざまな経験、体験をしてきた作詞家 小竹正人さんのGINGER WEB連載。豊富なキャリアを通して、今だからわかったこと、気付いたこと、そして身の回りに起きた出来事をここだけに綴っていきます。【連載/小竹正人の『泥の舟を漕いできました』】
第50回「彼らの共通点」

1980年代半ば、本当に短期間だが私は「なんちゃって芸能活動」をしていた。だから、その頃アイドルだった(いわゆる80年代アイドルと呼ばれる)友人や知り合いがたくさんいる。
彼らの中には、今でも大活躍している人、地道にアーティスト活動や俳優業を続けている人、もちろんそういう世界とは全く異なる世界で新たな道を選んだ人もいる。
私は「びっくりするほど向いてないな」とすぐに気づいたので、芸能活動にすっぱり見切りをつけ、アメリカ留学の道を選んだ。うっかりしまくり人生の中でもこの選択だけは本当に正しかったと自負している。
さて、先日。そんな80年代に仕事を通じて出会った元アイドルの旧友に会った。偶然バッタリと。
私が留学してから疎遠になってしまったが、お互いに一瞬にして相手のことがわかったくらいだから、当時はかなり仲が良かったのだと思う。
その旧友は3年ほどアイドル活動をやって、素敵な旦那さんと出会い、結婚してふたりの子どもを持った。
過去の話はあまりせずに、主にお互いの近況について話していたのだが、別れ際、彼女が少し恥ずかしそうな顔をして私に聞いた。
「ねぇ、どうして私って売れなかったんだろう」
私は、自分の人生を振り返るたびに、そりゃあ努力もしたし、嫌な思いもたくさんしたけれど、こんな私が何十年も作詞家や執筆家として仕事がもらえているのは、全て運とタイミングがよかったからだと思っているので、彼女に「運とタイミングだよ」と即座に返した。
「運とタイミングかあ」と、彼女はほんの少しだけ微笑んで家族の待つ家に帰って行った。
ひとりになってから、「運とタイミング」なんて軽々しくいったけど、本当にそうなのか?と自問自答。そして、私が昔から親しくしている何人かの友人で、ずっと変わらずに精力的にアーティスト活動や俳優業をやっている人たちのことを思う。
何十年も第一線で活躍している彼らには、才能があることやセンスがあること以外の共通点がある。
共通点その1
「心がたくましいこと」
心がたくましいとは、心が強いとかキツイとかではなく、大きな壁や困難があっても、たじろいだりうじうじしたりせず、平気な顔でそれに立ち向かっていけること。こちらがたまげてしまうほどのへっちゃら感を持っていること。
私は、いろんな意味で多々「強い」とはいわれるが、決してたくましくはない。だから、このニュアンスのたくましさを持っている人に心底憧れる。
共通点その2
「推己及人(すいこきゅうじん)」の精神が宿っているということ。
推己及人とは、さりげなく他人を思いやり、その人の立場になって物事を考える……みたいな意味なのだが、まさしく彼らは推己及人の人だ。私なりの解釈でいうと、推己及人=人の痛みがわかる。
自分のことばかり考えて、他人をないがしろにする人がこの世にはなんと多いことか。そういう人に限って依頼心や依存心が強かったりする。
けれど、長年錆びることなく活躍している人たちは皆、本当に常に周りの人のことも考えている。私は彼らの包容力にいつだって助けられてきた。
ちなみに私は「面倒見がいい」とはいわれるが、自分が推己及人には当てはまらないことを嫌になるほど自知している。何か辛い思いをしている人と会ったあとに、「もうちょっと相手の立場に立って考えてあげられればよかったな」と苦い後悔をしてばかりいるし、自分がイライラしていると他人に八つ当たりしがちだし。
心がたくましい人はたくさんいる。推己及人の人も実は案外いる。しかし、その両方を兼ね備えている人って、そう多くない。
先日会った旧友に今度このことを話してみようか? いや、それこそ余計なお世話だし、推己及人の精神じゃないよな。そもそも、私にいわれたところで、説得力がなさすぎるよな……と、モヤモヤしている私はやはり、たくましさからも推己及人からも程遠いのである。
What I saw~今月のオフショット

ドラマ「タツキ先生は甘すぎる!」の撮影も佳境に入った町田啓太と焼肉。ずっと啓太が肉を焼いては私の皿にヒョイヒョイのせてくれるので、私はただ話して笑って食べているだけだった。啓太と私はいろんな物事に対する着眼点が似ている。だからこそいつ会っても会話が弾むし、気を遣わなくてすむ。

佐野玲於(GENERATIONS)が10代で初めてロサンゼルスを訪れたとき以来ずっと、彼がL.A.にいくたびに現地での画像を何枚も送ってもらっている。それらを見ると、自分が青春時代を過ごした街に玲於がいることを不思議に感じる一方、私も一緒にそこにいるような気持ちにもなれる。

先日、初めての写真集『LIVING FOR』(幻冬舎)が発売になった堀夏喜(FANTASTICS)。さすがは"ちゃっかりファッショニスタ"な一冊で、なっちゃんらしさがてんこ盛り。私は彼の普段着やインスタ、そして感性や佇まいが大好き。同世代だったら絶対に親友になって毎日つるんでいたと思う。
小竹正人(おだけまさと)
作詞家。新潟県出身。EXILE、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、E-girls、中島美嘉、小泉今日子など、多数のメジャーアーティストに詞を提供している。著書に『空に住む』『三角のオーロラ』(ともに講談社)、『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎)、『ラウンドトリップ 往復書簡(共著・片寄涼太)』(新潮社)がある。

