映画、ドラマ、そして今作へ――映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』が大ヒット公開中。濃密な現場を重ねながら、鶴見という人物に向き合い続けてきた玉木宏さん。仕事と家庭と趣味を両立する多忙な日々の中で、“今の自分”がより鮮明になっていると語る。その言葉の端々から、この作品と役への揺るぎない愛情が伝わってくる。
“ハマり役と言われる幸運”をどう活かすか

――玉木さんはもともと原作ファンだと伺いました。今作で、原作読者として特に注目していたシーンはありましたか?
今作は網走監獄がメインになるので、まずあのスケールを映画として再現できるのだろうか、と思いました。原作で読んだあのハラハラドキドキを、映像でどう表現できるのか――。五翼放射状房のセットは、撮影場所も限られているので、ひとつの房を作って、それをVFXの技術で増やして見せる。撮影中は想像で補う部分が多かったです。
――鶴見お約束の脳汁の表現もCGに変わったと伺いました(笑)。
そうなんです(笑)。一作目の映画では、管を通して実際のタイミングで垂らしていたんですが、それが難しくて。ドラマの途中からCGに変わっています。
実際には何も出ていないけれど、“出ているテイ”で演じなければいけない。「こういう表情をしていただければ、CGで出します」と言われて(笑)。イメージと実像が違うなかで芝居をするので、ゴールを想像しながら臨むシーンも多かったです。
――本編をご覧になって、いかがでしたか?
「こういう風になっていたんだ」という驚きが本当にたくさんありました。舎房がキレイに五つ伸びていて、現場で部分的にしか見ていないからこそ、完成の迫力はうれしい驚きでした。

――実際の網走監獄のセットに入ったとき、どんな印象を受けましたか?
よく使うスタジオに組まれたセットで、こんなに長い距離を作れるんだと驚きました。矢印のような形にして両サイドは短くしてあるんですが、それを映像的に繋ぎ合わせて5つあるように見せる。それでも、ひとつのセットだけであそこまで長さを取ったのは初めて見ましたし、何より作り込みがとてもリアルで、本当に感動しました。
――その場所で銃撃戦も行われますが、どのように撮影されましたか?
かなり時間をかけて撮った記憶があります。機関銃は発砲銃で火薬だけ入れて「パパパッ」と撃つものや、光だけ入れて後からCGで火花を足すものなど、いろいろ組み合わせて撮影していました。
――艦隊シーンもすごかったですが、そのスケール感はまた別物だったのでしょうか。
そうですね。駆逐艦も先端の一部だけ組まれていたのですが、船が走っているように見せるために、下にレールのようなものを敷いて、クレーンを使ってカメラの方を動かすんです。本当に計算し尽くされていて、こうやって成立させてくださるんだなと感動しました。技術スタッフの方々の力に助けられた部分がたくさんありました。

――今作は特に銃撃シーンが多かった印象ですが、玉木さんの柔術やボクシングなどの経験が、アクションや動きに活きていると感じることはありますか?
日頃から体を動かしているので、アクションに対して不安はまったくないです。舎房でのアクションも、「ここはこう動きます」と説明を受けながら、「こうしてみるのはどうですか?」と逆にアイデアを出せるくらい、気持ちにも余裕があります。日頃から体を動かし続けていること、そして格闘技が趣味であることに助けられている部分は大いにあると思います。
――厳しい撮影スケジュールのなかで、体調管理はどのようにされているのでしょうか?
やはりブラジリアン柔術の練習をすることですね。北海道ロケの合間も練習に行きました。レンタカーで片道3時間半かけて、1時間の練習に行ったこともあります(笑)。それがあるから元気でいられるんです。正直、運転している時間の方が長いですが(笑)。
――本当に多忙ななかで、仕事とプライベートを両立させる工夫などありますか?
時間は本当に足りないです(笑)。子どもが2人いて、妻も仕事をしているので、自分の趣味は午前中にまとめています。その時間が取れる日はとにかく午前中に練習をして、午後から仕事で現場へ、という流れです。調整が難しい日は、撮影が終わってからそのまま1時間だけ練習に行って、急いで帰ることもあります。
――先日欧州最大級のブラジリアン柔術の国際大会「IBJJFヨーロピアン2026」での快挙も大きな話題になりました。大会で結果を出したときは、どんなお気持ちでしたか?
本当はもっと高い表彰台に立つことを目指していたんです。出場する以上、勝っても負けてもいろんなことを言われる場所に立つわけで、それは覚悟していました。
だからこそ、結果につながったのは嬉しかったです。でもまだ途中なので、もっと高い目標を持って挑戦を続けたいと思っています。そして、それは必ず仕事に返ってくると感じています。仕事では味わえない緊張に身を置くことは大きな刺激になりますから。
――まさに新鮮な緊張が刺激になっていると。
普段の仕事は作り込まれた現場なので、そこまで極端な緊張を味わうことはあまりないのですが、柔術の試合は自分からその緊張の場に入っていく。それがすごくいい経験になるし、自分を奮い立たせてくれるんです。
――先ほど「時間が足りない」とおっしゃっていましたが、限られた時間のなかでの優先順位は?
家族の時間が一番大事です。仕事以外の時間はほぼ家族に使う。そのなかでどうやって自分の時間を作るか、ですね。毎日が充実していて、本当にあっという間です。あとは、やりたいことが多いので、寝る時間を削るしかないです(笑)。
――柔術以外でやりたいことというと?
カメラも趣味で続けていますし、ファッションや車、バイクも好きです。雪山でウィンタースポーツもしたいし、キャンプも釣りも好き。本当にやりたいことだらけです(笑)。

――改めて、玉木さんは、鶴見が愛される理由をどんなところに感じていますか?
鶴見がこれほど愛されるのは、丁寧にエピソードが描かれているからだと思うんです。彼が持つ愛情や人としての温度を感じられるから、ただの狂気だけではない、というのが伝わる。映画だけではどうしても描ける範囲が限られますが、ドラマでしっかり掘り下げられたことが大きかったのではないかな、と感じています。
――今回の網走監獄襲撃編で、その魅力が特に表れていると感じたシーンは?
今回から登場する宇佐美というキャラクターがいて、鶴見が彼に対して“ホクロに身体を描いて、走らせてやる”と言う場面があるんですが(笑)。宇佐美は純粋に喜んでいて、鯉登はそれに嫉妬し、月島は冷たい目で見ている…。
ひとつのシーンのなかに、それぞれの感情がしっかりと描かれている。そのチーム感や人間関係の空気があるからこそ、鶴見の存在が際立つのだと思います。あの場面は特に“第七師団ならではの関係性”が凝縮されていて、説得力があるシーンになっていると感じました。
――鶴見には“怖いけれど、どこか理想の上司のような魅力”も感じます。玉木さんにとって、鶴見という役はキャリアのなかでどんな存在になると思いますか?
『ゴールデンカムイ』の鶴見という役に限らず、「ハマってるね」と言っていただける作品に出会えることこそ、僕たち俳優が常に追い求めているものだと思います。そのなかで、この作品に巡り会えて、評価していただけたのは本当に幸運だと感じています。
ただ、そこで「ラッキーだった」で終わってはいけないとも思っています。これだけシリーズが続き、多くの人に愛されているからこそ、もっと面白く、もっと深い作品にできるよう、スパイスになるような挑戦を続けなければいけない。
鶴見という役は、自分を前へ進めてくれる存在でもあり、俳優としての刺激をくれる、そんな大きな役だと感じています。
【大ヒット公開中!】映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』

キャスト/山﨑賢人
山田杏奈 眞栄田郷敦 工藤阿須加 栁俊太郎 塩野瑛久 稲葉友 / 矢本悠馬
大谷亮平 高橋メアリージュン / 桜井ユキ 勝矢
中川大志・北村一輝・國村隼
池内博之 木場勝己 和田聰宏 杉本哲太 / 井浦新
玉木宏・舘ひろし
原作/野田サトル「ゴールデンカムイ」(集英社ヤングジャンプ コミックス刊)
監督/片桐健滋
配給/東宝
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玉木宏(たまきひろし)
1980年1月14日生まれ。ドラマ「せつない」(98)で俳優デビュー。映画『ウォーターボーイズ』(01)で注目を浴び、『雨鱒の川』(04)で映画初主演を飾る。連続テレビ小説「こころ」(03)や「あさが来た」(15-16)、映画化もされた「のだめカンタービレ」シリーズ(06-08)など多くの話題作に出演。近年の出演作に『極主夫道 ザ・シネマ』(22)、『キングダム』シリーズ(22-24)、『沈黙の艦隊』(23)、「ジャンヌの裁き」(24)、『十一人の賊軍』(24)、『雪風 YUKIKAZE』(25)、Netflixシリーズ「イクサガミ」など。 2026年1月フジテレビ系ドラマ『プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮』が放送中。
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