コロナ禍を経てなお、真偽不明な情報が渦巻く現代社会。そのカオスを圧倒的なリアリティで描いた映画『#拡散』で、主人公・浅岡信治を演じた成田凌さんに、作品への思いを聞いた。
成田凌が見つめる“表現”の境地

成田凌さんがファッションに深い造詣を持っていることは、もはや広く知られている事実。それは、俳優としての表現にも確実に影響を与えている。そのこだわりは、役衣装にも自然と反映されていて、ただ“着る”のではなく、衣装を通してキャラクターの内面や空気感を立ち上げていくようなアプローチが印象的。だからこそ、成田さんが身にまとう衣装は、作品の世界観と役の心情をつなぐ“もうひとつの言葉”のように機能している。
「浅岡の趣味はソロキャンプなので、基本はアウトドアブランドのアイテムを身につけているのですが、そこにあえて不自然な重ね着を取り入れることで、どこか“ややこしそうな人”を演出しました。ニット帽を自分でいくつか買ってきて、わざと毛羽立たせてから現場に持ち込んだりもしましたね。
また、冒頭では前髪を下ろして帽子も深く被っているのですが、SNSを通じて少しずつ存在が知られるようになってからは、前髪を分けたり帽子を浅く被ったりして、顔が見えるビジュアルに変えていきました。
ファッションだけでなく、ヘア、顔のむくみ、唇の色、湿度のないカサついた肌感――そうした細部を積み重ねることで、“言葉にしづらいけれど、なんかイヤだな”と感じる雰囲気を常にまとわせていました。浅岡の内側で少しずつ歪んでいく、その空気をビジュアルでも表現したかったんです」

SNSの世界にのめり込んでいく役を演じた彼自身は、その距離感に葛藤がある。「SNSを見るのはすごく楽しいんですけど、実は発信することがあまり得意ではなくて」と、困ったように笑う。
「僕自身のことは何も知らない、まっさらな状態で観た方が、より作品を楽しんでいただけるんじゃないかという思いがどこかにあるんです。SNSの投稿から私生活の断片がちらついて、みなさんが作品に集中できなくなってしまうのは避けたい。でも、ありがたいことにそういう投稿を喜んでくださったり、それをきっかけに作品に興味を持ってくださったりする方もいるんですよね。そんな矛盾を抱えた結果、今の投稿頻度に落ち着いています(笑)。ただ、やっぱり作品を一人でも多くの人に届けたいという気持ちに勝るものはないので、これからも自分なりのペースで発信し続けていきたいと思っています」

本作の原案と監督を務めたのは、日本でも大ヒットを記録したアニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』(19)の国内配給を成功させ、さらに2024年には映画『ゴールド・ボーイ』で製作にも進出したチームジョイ代表・白金(バイ・ジン)さん。そんな監督の作品に参加した成田さんは、近年ドラマ「初恋DOGs」(25)や「匿名の恋人たち」(25)など、日本作品でありながら海外クリエイターやキャストとタッグを組む現場が続いている。国や文化の違うスタッフと共に作品を作る経験は、俳優としての刺激にもなっているよう。
「やっぱり国が違えば作品の作り方も違うし、考え方も全然違うんです。それがすごく面白い。時間の感覚も違えば、何かトラブルが起きたときの対応の仕方も違う。そういうひとつひとつが勉強になるし、刺激にもなるんですよね。だからこそ、お互いの“いいところ”を交換し合えたら最高だなと思います。韓国には韓国のスタイルがあって、台湾や中国にもそれぞれのやり方がある。確かに他の国の現場で『これはどうなんだろう』と感じる瞬間はあるけど、同時に『これはすごくいいな』と思う部分もたくさんあるんです。それは日本映画もまた同じ。
そういう二面性があるからこそ、混ざり合ったときに新しいものが生まれるんじゃないかと思います。お互いの良さを理解し合って、そこをうまく組み合わせられたら、きっとすごくいい現場ができるはず。そういうふうに分かり合いながら一緒に作品を作っていけたらいいですね」
【大ヒット公開中!】映画『#拡散』

キャスト/成田凌、沢尻エリカ、淵上泰史、山谷花純、赤間麻里子、船ヶ山哲、鈴木志音、DAIKI、MIOKO、高山孟久ほか
原案・編集・監督/白金(KING BAI)
脚本/港岳彦
配給/株式会社ブシロードムーブ
kakusan-movie.com
成田凌(なりたりょう)
1993年11月22日生まれ、埼玉県出身。2013年、ファッション誌「MEN'S NON-NO」の専属モデルとしてキャリアをスタートし、ドラマ「FLASHBACK」(14)にて俳優デビュー。映画『スマホを落としただけなのに』(18)、『ビブリア古書堂の事件手帖』(18)での第42回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞を皮切りに、『チワワちゃん』(19)、『愛がなんだ』(19)、『さよならくちびる』(19)、『翔んで埼玉』(19)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19)の計5作品で第93回キネマ旬報ベスト・テンを、『カツベン!』(19)では毎日映画コンクール男優主演賞を次々に受賞。さらに、『窮鼠はチーズの夢を見る』(20)、『糸』(20)などの演技で第63回ブルーリボン賞助演男優賞にも輝いた。繊細さと熱量を兼ね備えた演技で、世代を代表する実力派俳優として高く評価されている。
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