AAAのメンバーでソロアーティストとしても活躍する與真司郎さんのフォトエッセイ『人生そんなもん』が2025年4月16日に発売。「壮絶だった」という半生を自らの手で切り開いてきた與さんが綴る言葉のひとつひとつには美しさが宿り、パワーをくれる。悩みを抱えている人にそっと寄り添うノンフィクションエッセイ、この一冊に込められた想いをインタビュー。
“このように生まれてきた”與真司郎の生き様

與真司郎さんがゲイであることをカミングアウトしたのは、2023年の7月。この発表は国内外で大きな反響を呼び、「ニューヨーク・タイムズ」の「2023年世界に影響を与えた人々」に選出されるなど、国際的な話題となった。そして2025年4月、與さんが自身の人生を丁寧に振り返り、カミングアウトまでの道のりとその後に感じていることを赤裸々に明かすフォトエッセイ『人生そんなもん』が発売される。
「カミングアウトした直後に、講談社さんからお声がけいただいて、前作『すべての生き方は正解で不正解』も講談社さんから出させていただいて信頼しているチームだったので、『ぜひ、お願いします!』とスタートしました。前作は、自分の考え方を提示したメンタルヘルス本。読んでくれる方の心が楽になったらいいなという思いで出しました。今作は、僕の人生の軌跡をたどった一冊です。小さいときの苦悩、芸能界での苦悩、自分の人生をすべて書き綴りました。元彼のこともカミングアウト前後の気持ちも書いているので、もうこれ以上の隠し事はないってくらいに嘘ナシですべてを書き切っています」
文中では、自身のセクシュアリティに気づいたときの戸惑い、誰にも“バレてはいけない”という重いプレッシャーなど「二度と経験したくない」苦悩が綴られている。
「小さい頃から人と違うという感覚がありました。でも、昔は『男同士なんて気持ち悪い』という社会だったし、笑いものにするテレビ番組が放送されていました。だから隠さないといけないという意識が強くなっていったんだと思います。さらに、芸能界に入ってAAAのメンバーになったことで『迷惑をかけたらダメだ』とさらに自分を追い込んでいたんです。でもモヤモヤが続いて、このままでは壊れると思ってアメリカに拠点を移すことを決めました。アメリカでは『Shinは何も悪いことをしていないんだよ。自分を責めなくていいし、ひとりじゃないよ』と周りが教えてくれました。そこからいろいろ調べたり、本を読んだりして、メンタルヘルスについて考えたんです。そうしないと自分のメンタルが保てなくて、生きていけなかった。『人と違うことっていいことじゃん』と受け入れることができたのがカミングアウトしたあの日のほんの少し前のことです」

「元々ウソがつけない性格」だという與さんは、自身のセクシュアリティを受け入れたあと、家族や支えてくれる周囲の人に告白する。それは大切に思っているファンに対しても同じ。
「ここから先は、自由に生きていきたかったんです。芸能人である以上、『どこかでバレてしまうんじゃないか。意図しない形で広がってしまうんじゃないか』という恐怖がずっとありました。でもこのままでは、自分が誰かにコントロールされるボックスのなかでしか生きられない悲しい人生になってしまうと思ったんです。『自分を変えたい』そんな想いで、世間に向けてカミングアウトをすることを決めました。みんなに知ってもらう=何でもできる、自分の好きなように生きていけると思ったんです」
そしてそこには「自分と似た境遇の人をすくいあげたい」という使命も宿っていた。
「別にアクティビストになりたいわけではないんですよ。でも、僕が小さい頃って今のようにSNSもありませんでしたし、自分の目にうつる範囲にロールモデルがいなかったから、僕のような人間は僕ただひとりだと思っていました。僕が経験した苦悩を今の若い子たちには経験してほしくない。辛いから、辛すぎるから。だから、そんな人がちょっとでも減ったらいいなという思いもありました。そしてそれは日本に限ったことではないんです。アメリカ人=オープンって思われがちだけど、アメリカにだって親に話せていない人、ゲイを隠している人がまだまだいます。ヨーロッパにだってアジアにだって世界中にいる。海外に行くと僕のことを知っている人は誰もいないけれど、僕の人生を聞いて何か感じてもらえたら、勇気づけられたらいいなと思うようになりました」

カミングアウトしたあとはすべてが変わった。もう隠さなくていい――胸のつかえがとれたように、仕事もプライベートも心地良い毎日を過ごしているという。
「仕事は、みんなが僕のことを知ってくれたうえでインタビューを受けられますし、自然体なままでメディアに出られるようになって、『隠さなきゃ。ウソをつかなきゃ』というプレッシャーから解放されました。プライベートも今までは『アーティストらしく振る舞わなきゃ』と思っていたんですが、昔から日本の芸能界特有のルールがなんだか僕には息苦しくて。『プライベートはあまり見せてはいけない』『芸能人は恋愛をしたらダメ』って、なんでだろう? でも今は、普通に友達と遊びに行けるし、友達となんでも話し合える。環境もマインドも生き方も以前とはぜんぜん違いますよ」
“普通”に“当たり前”のことができるようになった。表舞台で活躍しているから、人と違うという意識があるから、と知らないうちに嵌められた枷。それを自らの手で外した與さんは自由に生きられるようになった。
「ストレートの人たちが10代から普通にやっていることが僕たちにはできない。自分のパートナーを親や友達に紹介して、みんなで遊びに行くのが僕の夢だったんです。30代になった今やっとできるのがうれしいです」

最後に、フォトエッセイというカタチで届ける意義を聞いてみると、不当に傷つけられてきたからこそ発せられる強くて明るい答えが返ってきた。
「カミングアウトのイベントだけでは語りきれなかったこと、カミングアウト後の取材で言えなかったことがたくさんありました。カミングアウト直後は、心が不安定だったんです。『やっぱりやらなきゃよかったのでは』と。バックラッシュもあったので、プロセスするまでに時間がかかりました。それを経た今、『自分の人生にはこんなことがあったけれど、今はすごく幸せに生きているんだよ』とシェアしたかったんですよ。そしてこれを、LGBTQ+の人だけでなく、悩んでいるすべての人に届けたかった。家庭環境だったり、トラウマだったり、体に違和感があると感じている人たちに、『ひとりじゃないよ』『諦めなければ光は見えてくるよ』ということが伝わればうれしいなと思います」
與真司郎フォトエッセイ『人生そんなもん』

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與真司郎(あたえしんじろう)
1988年11月26日生まれ。京都府出身。14歳でエイベックスに入り、2005年9月14日にAAA(トリプル・エー)のメンバーとしてシングル「BLOOD on FIRE」でデビュー。2016年6月には初のソロ作品をリリース。2021年3月からアパレルのみならず、雑貨、アクセサリー等、自身のライフスタイルを広く表現していくブランド「446 - DOUBLE FOUR SIX - 」(ダブルフォーシックス)の立ち上げを発表し、ブランドプロデューサーとしても活躍。
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