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MYSELFウェルネス

2025.02.23

年を取るっていいこと?歳を重ねながら、人生を前向きに楽しむ方法

“わたしの心地よさ”を基準に行動することが、ウェルビーイングに生きるカギになる。そのために、もっと自分自身を知る=自分のトリセツを手に入れませんか? 保健学博士の島田恭子さんがナビゲート。【連載「自分学 わたしのトリセツ」vol.25】

ウェルエイジングという考え方

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しわや白髪がぐぐっと増えてきたお年頃の私の最近のテーマは「ウェルエイジング」。最近いろんなところで目にする「ウェルビーイング」という言葉。その「ウェル」と「エイジング」をかけて「ウェルエイジング」=ウェルビーイングに老いる=より良く老いる、といったイメージです。

そもそも「アンチエイジング」って言葉になんだかしっくりこないものを感じていた私。「べつにエイジングにアンチしたい(抗いたい)わけじゃないんだけどなー、その歳なりにいい感じに生きたいんだよなー」と。なのでWell(いい感じに)Aging(歳をとる)=ウェルエイジングです。

日本は諸外国に比べ、若さが貴ばれる国。特に女性はとにかく若いことに価値が置かれがちですよね。「パパ活」なる言葉も生まれるくらい、若さや美しさがお金になる。市場価値が高くもてはやされる分、「いずれ自分が若くなくなったとき、私の価値、どうなるんだろう?」と恐怖にさえ感じるのも無理もないことかもしれません。

確かに、若いって素晴らしい! お肌は水をはじくようにハリとつやがあって、若さからくるエネルギーを感じます。一方隣にいる自分をみると…? 肌は乾燥気味でかさつくし、ちょっとくすんだかんじ。いろんなものが長年の重力によって下のほうへ向かっていきます。たしかに外見だけ見ると、「年をとるのもいいことだ」と胸を張って言いづらく、若いほうに軍配が上がりそうです。

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でもその分、内面はどうでしょう。時間をかけて生きてきた分だけ、いろんな経験をしてきました。失敗、悲しいこと、悔しいこと、泣きたいこと、それらを乗り越えようとがんばったり、やっぱり難しくてあきらめたり…。一方楽しいこと、うれしいこと、心躍ることもあるなかで、その感動に浸ったり心を動かされたり。何気なく生きているようで私たちは皆、「経験」という軽い言葉では言い尽くせないような日々のやりとりを通じ、どんどん深みを増しているのです。そう、浅くなくて深いのです。かっこいいですよね。その深みが、脳に体に心に、貫禄とか、余裕とか、いい感じに力が抜けた抜け感、みたいなものをつけてくれるのです。この深みは、なかなか若者には持てるものではなく、酸いも甘いもかみ分けた、オトナだけが持てる味のようなものでしょう。

そんなかっこいい、味や深み、みたいなものを大事にしながら、自分なりに心豊かに生きられるとしたら…老いることもまたなかなか素敵だと思いませんか? 今回は、そんなエイジングのよさに大注目。どうやったら歳を重ねながら充実した人生を前向きに楽しめるか、について考えてみたいと思います。

ウェルエイジングに生きるヒント

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実はウェルビーイングという言葉がバズる前から、「より良く老いる」に関する研究は世界中で行われてきました。ステキに生を全うしたい、という思いは万国共通ですもんね。「サクセスフル・エイジング」という言葉もよく使われます(が日本人の私は「成功する」という意味にとってしまって、どうもしっくりきませんが…)。これまで国内外でおこなわれてきたたくさんの研究結果をもとに、ウェルエイジングに生きるヒントをご紹介していきましょう。

まずウェルビーイングのもともとの定義が『「身体的」「精神的」「社会的」に、良い状態であること』といっているように、ウェルエイジングにおいてもポイントとなるのは、「見た目」だけではなく、「心の豊かさ」や「生きがい」、「社会的なつながり」といったものが同じように大切なのだということです。

最近の研究を大きくまとめると、こんなところがウェルエイジングに影響するといえそうです。

1. メンタルヘルスを整える習慣を持つこと

ストレスを溜めない習慣については、この連載でもたびたびお話してきましたが、やはりウェルエイジングを叶えるためにも、自分のこころを整える習慣は大事なポイントとなってきます。ストレスを溜めると、シワや白髪が増え、体の老化も進んでしまいますもんね。ただ歳をとると、これまでの経験をもとに、自分なりのメンタルを整えるすべを身に着けられる、という利点もあります。知らず知らずのうちに、いい意味での適度なあきらめや余裕、多くを求めない、いわば悟りの境地、みたいなものが自分のメンタルを整える方向につながっていくのですね。

2. 体を適度に動かし、元気を保つこと

朝早い時間に大きめの公園の前を通ると、にぎやかな声が聞こえてきます。わりとミドル・シニアな方々が、ラジオ体操や太極拳などしていらっしゃる姿。お昼から夕方の、子どもたちが元気よく遊ぶ姿を見るのとはまた違う、ほっこりした気持ちになりますよね。
私たちのウェルビーイングにとって、体を適度に動かすことがとてもよい影響を与えることは、非常に多くの研究で示されています。うつ病などの気分・不安障害の方々を対象にしたいくつかの研究では、なんと抗うつ薬と同じがそれ以上の治療効果があることも、示されているぐらいです。「運動はアンチエイジングの最強の薬」と書いてあるのを見たことがありますが、たしかに筋肉を維持することで姿勢が良くなり、疲れにくくなることが、老化防止にもつながるのでしょう。
「いやーでも時間がない、忙しい」と思ったあなた。たとえばこんな風に始めてみませんか。

  • 朝の10分ウォーキング
    10分歩くことを毎日続けていくだけで確実に元気になります。朝の光を浴びながら歩くと、体内時計が整うからです。朝日を浴び外の空気に触れ、外界をみることで心と体が洗われるように感じたことありませんか? ゴミ出しのついでに少しだけ近所を一周、朝の通勤で10分早くでて1駅散歩がてら早歩きするなど、今日からできることを決めてまずは3日、1週間、続けてみましょう。
  • 寝る前10分だけ時間をとってストレッチをする
    忙しい私たちは自分の体を慈しむことをついつい忘れてしまいますよね。私は寝る前にストレッチしながらオイルを塗り、マッサージ&ストレッチ&セルフコンパッション(以前の連載で解説)タイムにしています。たかだか10分くらいですが、つらくないし、キモチもいいから、続けられています。そうすると毎日10分はキモチよく伸びながら自分の体や状態に目を向けられます。

継続すると驚くべき効果が出るのが運動のすごいところ。最初は??でも、しばらく続けてみて。そのためにもぜひ、自分が楽しく、続けられそうなものにトライしてほしいです。

そしてその際にぜひ覚えておいてほしいのが、呼吸です。現代に生きる私たちの息は浅く、緊張するとさらに浅く、それがさらにストレスを呼ぶ、という悪循環の呼吸を続けています。だからせめて、朝散歩やストレッチのときは、深い呼吸を意識しながら、リラックスして行うことを覚えておいてくださいね。

3. 社会的なつながり、人との関わりを意識すること

「孤独」が老化を加速させる大きな原因の一つであることはさまざまな研究から明らかになっています。孤独、とまではいかなくとも、なかなか人と交流を持つのが苦手、1人が楽だわ、という方は意外と多いもの。もちろん、無理に多くの人や、好きでもない人と、がんばってつながりを作る必要などないのです。自分が心地よくいられる人たちとの交流を大切にしたり、同じ趣味をもつ仲間と楽しい時間を持つことが、つながることの効用となっていきます。
例えば、自分にとって大切だと思える友達には、ふと元気かな?と頭に浮かんだら、後回しにせず一言メッセージを送ってみる。また、「定例会」と称して好きな仲間とは定期的につながる時間を作る。新しい友達を作るべく自分の興味のあることのコミュニティに参加してみる。慌ただしい日々にいるとつい、あっという間に時が経ってしまいますが、そんな大事な人とのかかわりの時間は、意識的に優先して確保するよう心がけるといいですね。

4. 脳を活性化する習慣をつけること

脳も使わないと衰えます。最近は紙に字を書かないから、ふと漢字を書こうとおもってもなかなか出てこない!ってことが増えました…。人生100年時代だから、まだまだお世話になりたい自分の大事な脳。たとえばこんな簡単な習慣で、脳を活性化しておきませんか。

  • 毎日1つ、何か新しいことに挑戦する
    例えば、いつもとは違う新しい道を歩いてみる、作ったことのない新しい料理に挑戦してみる、など小さいことでOK。
  • 読書やパズルを楽しむ
    スマホに慣れてしまって、なかなか本やパズルを手にすることが少なくなってきました。活字や数字に触れると脳が活性化します。週末はぜひ本屋さんへGO!
  • 「手を使う趣味」を持つ
    編み物や楽器など、手を使う作業は脳のトレーニングに有効です。

5. やっぱり質の良い栄養と睡眠は大事だということ

私は「食べたものでできている」という言葉が好きで、暴飲暴食をストップする時の呪文にしています。時にはジャンキーな物もいいけれど、やっぱり「何を食べるか」は重要で、健康や体力維持に大きく影響します。
そして睡眠。前回も述べましたが、私たちは寝ている間に脳と心と体を整えます。人によって必要な睡眠時間は違いますが、脳と心と体を休め、明日のエネルギーをチャージするためには、質の良い睡眠が必要です。質の良い睡眠のためのおすすめ習慣についても前回の連載で触れましたので、ここでは質の高い食事のために心がけたい習慣を挙げてみます。

  • 色とりどりの野菜を食べる
    ビタミン&抗酸化成分がたっぷり! 最近友人に勧められ、スープ専用マシンをゲットしました。小さなジャーですが働き者! 冷蔵庫にある野菜をポンポンと入れて、大豆大さじ1と塩と水を適量入れると、30分でできちゃいます。毎日ポタージュスープが食べられるって幸せ&安心です。
  • 発酵食品を取り入れる
    腸が元気になると、肌もキレイに! 腸内フローラが整っているとお肌だけではなく、免疫力も上がり、病気の予防、脳や心の健康にもいい、ということが最近分かってきました。日本が誇る麹料理や韓国のキムチなどなら、お手軽に取り入れられそうですね。
  • 良質なタンパク質を意識する
    ついつい、ご飯ものやパスタ、パンなど、炭水化物の多い食事になりがちな現代。お野菜も大切ですが、ウェルエイジングにこそ必要なのは、タンパク質。タンパク質は筋肉を作ります。筋肉があれば立ち姿も美しく、はりがあります。エイジングに大敵な骨折も、ある程度防げますし、活力の源となるのもやはり筋肉です。女性は特に筋肉量が少ないため、骨や肌、髪の毛のためにも意識して摂る必要があります。お肉(とくにチキン)、魚、豆類をしっかり摂って、筋肉量を増やしていきましょう。

「この世に生まれ落ちたその時から、私たちは死に向かっている」——この世に生きる誰しもが平等にいただいている、今この時間。同じ時間軸で時を刻み、刻一刻とその生を紡いでいます。毎日少しずつ、失敗や学び、悲しみや喜びを重ねてきたことで、貫禄がついて、垢ぬけていく。その「深み」や「渋み」といったものを味わい、楽しめることこそが、年を取ることの醍醐味、ウェルエイジングなのかなと思っています。

若いワインも良いけれど、熟成されたマチュアなワインもまた、深みも味わいも格別なように。「若い頃もよかったけど、今も全然悪くないよね」と仲間と言い合いながら、今この瞬間と、これからの貴重な時間を、大切にウェルエイジングに生きるためにも、心と体とつながりと、栄養と睡眠、大事にしていきたいですね。

島田先生よりお知らせ

来る3月2日(日)に、このウェルエイジングをテーマに無料シンポジウムが東京文京区で開催されます。私もこのシンポジウムの最初のほうで「ウェルエイジングとは」と題して、お話する予定です。今回ここに書ききれなかったことを、もう少し深めてみたいと思っています。
会場(東京)でもオンラインでもご参加いただけますので、ご関心のある方はぜひ参加登録を!
今からできる、10年後のステキな自分の未来をつくるヒントが得られるはずです。”老い”ではなく”未来”を、一緒に考えてみませんか?
詳しくはこちら

島田恭子(しまだきょうこ)
予防医学者・保健学博士。医学や心理学の知見を、女性のウェルビーイングに役立てたいと活動中。(社)ココロバランス研究所代表。
https://customer-harassment.org/kyokoshimada/

TEXT=島田恭子

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