染色を中心に自然素材や廃材を使った作品制作を行う現代美術家・山本愛子さん。染色と旅を通じて得た、ささやかな気付きをつづる。【連載「植物と私が語るとき」】
環境保護活動家と奄美の森を歩く
作品をつくるために日頃から草木染めをしているからか、道を歩けば「これって染料になるかな」と植物に目を向けてしまいます。ある時ふと、同じ植物でも料理人は食材として見たり、漢方薬剤師は生薬として見ているのかなと想像しました。古来中国では染料と生薬の起源は密接だという歴史もあります。植物を多角的に知ることは純粋に面白そうだと考えるうちに、植物にまつわるさまざまな活動をしている方に会ってみたい!と思い立ったのです。
フットワークの軽さが自慢の私。奄美大島まで環境保護活動家の方を訪ねることにしました。奄美の原生林を案内してもらい、山道をしばらく一緒に歩いていると、彼が興味深い一言をくれました。「あなたの染色の活動は、環境保護ができるお仕事なんですよ」と。つまり、外来種などの駆除活動をして、駆除した植物を染料にすれば、土地の生態系を保護しながら染色をすることができると言うのです。どんな色に染まるかという入口で染料を選択していた私には、まさに目から鱗。自分の興味関心を別の分野から照らしてみると、意外なところで学びがあり、新たな輪郭が見えてきます。旅から帰ってきてからもずっと、彼の言葉が心に響き続けています。
山本愛子(やまもとあいこ)
1991年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院先端芸術表現科修了。自身が畑で育てた植物や外から収集した植物を用いて染料を作り、土着性や記憶の在り処を主題とした作品を制作している。