なんだか調子が悪い…それはもしかしたら、日々のストレスで体のバランスが崩れているせいかも。そこで役に立つのが、心と体を内側から整える「漢方」。セルフメディケーションとしての漢方の取り入れ方を「わたし漢方」の水沼未雅さんがナビゲート。
朗らかな春が過ぎるとやってくる、ジメジメとした梅雨の時期。
梅雨に入ると体調が悪くなる…そう感じたことがある方は多いのではないでしょうか?
暖かい春から暑さの厳しい夏へ、季節が移り変わっていく梅雨という環境下は、体質の変化も起こりやすく、体調を崩しやすい時期といえます。
今回はそんな梅雨の不調がなぜ起こりやすいのか、緩和させるためにはどのようなケアが有効なのか、漢方医学の目線から解説していきます。
梅雨に起こる不調の原因は?
梅雨に多くの人が抱えやすいのが頭痛、めまい、むくみ、重だるさなどの症状です。
食欲不振、胃もたれ、吐き気、下痢のような胃腸のトラブルや、湿疹や喘息などの持病の悪化、関節の痛みを感じる人もいます。
そんな梅雨の時期の不調が起こりやすい原因のひとつが、「湿気」といわれています。
湿度が高くなると、汗を十分にかきづらくなります。すると、不要な水分や老廃物がうまく排出できずに溜まりやすくなってしまうのです。
本来、体内の水分は健康な生活を送るために必要なものですが、余分な水分は真逆の存在。血の巡りや水分の代謝の悪化は身体全体を冷やすことにも繋がり、頭痛や関節痛のような痛みや、むくみや重だるさ、めまいなどのさまざまな不調が起こりやすくなる原因になります。
加えてこの季節は気圧の変化や室内外の寒暖差も激しいため、自律神経が乱れやすくなりがちです。気分の落ち込みや気力の低下が見られるケースもあり、身体だけでなく心の不調も抱えやすい時期といえます。
胃腸機能の低下と湿気は関係している?
このような不調を引き起こす湿度や湿気のことを漢方医学では「湿邪(しつじゃ)」と呼びます。
漢方の考えにおいて、胃腸の消化吸収機能や栄養を行き渡らせる働きをする「脾」はこの「湿邪」にとても弱いとされています。脾が弱くなってしまうと栄養の吸収が不十分になるので、エネルギーの補給ができず、疲れやすいと感じることも増えます。さらに、食欲不振、吐き気、下痢なども起こしやすくします。
元気がない状態というのは、精神面にも少なからず影響を及ぼします。
身体の機能というのは、お互いの良さも悪さも影響し合って成り立っています。どこかひとつが悪いと、全体へ影響を及ぼしてしまうというケースはたくさんあります。
「回復したくてもできない」
そんな負のスパイラルに陥りやすくなってしまうのがこの季節なのです。
梅雨の不調は夏前に改善しよう!
「梅雨が終われば」
そう思って、梅雨の不調を放置していませんか?
梅雨の次にやってくるのは、夏本番。
特にここ数年の暑さは凄まじいといえるほど厳しいものです。夏は暑さに対応する体温調節機能への負担も大きく、冷房の効いた部屋と外との気温差のせいで自律神経の働きがさらに乱れやすくなる季節といえます。
ただでさえ過ごすのが大変な季節をパワー不足のまま迎えれば…
夏バテや食欲不振、熱中症などの症状が起こりやすくなりますよね。さらに不調が慢性化すれば身体のバランスはもっと崩れてしまい、立て直すためにはたくさんの時間がかかってしまいます。
夏を元気に過ごすためにも、回復したくてもできなくなってしまう状態が慢性化しないようにするためにも、梅雨の不調は早めに対策をして解決しましょう!
では、具体的にはどのように改善していけば良いのでしょうか?
漢方でできることって何?
漢方は体質や症状に合わせたアプローチをすることで、身体を整えるお手伝いをしてくれます。自分にあった漢方で梅雨の不調を改善していきましょう。
●めまいや頭痛が起こりやすいタイプ
【出やすい症状】めまい、立ちくらみ、頭痛、気圧の変化による不調
【おすすめの漢方薬】水分代謝や血の巡りを助ける生薬、のぼせをとる生薬、自律神経を整えていくための生薬などが配合された漢方薬がおすすめです。
●胃腸虚弱お疲れタイプ
【出やすい症状】食欲不振、胃もたれ、吐き気
【おすすめの漢方薬】滋養強壮のための生薬、胃腸の働きを改善してむくみや下痢を改善するための生薬などが配合された漢方薬がおすすめです。
●痛みが気になるタイプ
【出やすい症状】関節痛、神経痛
【おすすめの漢方薬】水分代謝を良くする生薬に加えて、温めたり、血の巡りを良くして痛みを和らげる生薬が配合された漢方薬がおすすめです。
●皮膚炎が悪化しやすいタイプ
【出やすい症状】あせも、ジュクジュクした湿疹、水虫の悪化
【おすすめの漢方薬】炎症を和らげたり、解毒作用のある漢方薬がおすすめです。
生活習慣を見直してみよう
どのような体質であっても、生活習慣の見直しは大切。
一気に無理して変えなくても大丈夫です。良くない習慣は少しずつ変えていけるように、良い習慣は少しずつ増やしていけるように、いまの毎日の生活に目を向けてみてください。
生活習慣のなかでも、食生活はとても重要です。食事は体の健康をつくるだけでなく、心の健康も保ってくれます。普段、生活習慣が乱れがちな人は、まずは食生活から見直してみましょう。
暑くなってくると冷たい食べ物や飲み物がほしくなりますよね。しかし、冷たいものや生ものの摂りすぎは体を冷やし、「脾」の働きにも影響を及ぼしてしまいます。食べすぎないように注意しましょう。
併せて余分な水分を排出するハトムギや小豆などのお茶を飲んだり、生姜、シナモン、紫蘇、葛のような体を温めてくれる食材を取り入れていきましょう。
唐辛子も身体を温めるという観点からは良いといえますが、辛い物は刺激になりやすいので食べる量は調整してくださいね。
自分の周囲の環境を整えていくこともおすすめです。
出かける前には、薄着すぎていないかチェックを忘れずに。カーディガンを羽織ったり、腹巻きを使うなどして、身体を冷やしすぎないように心がけましょう。
空気そのものの除湿は冷房と比べて、冷え過ぎを防止して過ごしやすい環境を作ってくれます。寒暖差をなるべく生まないようにすると、脾への負担も減らせます。
ほかにも、普段から入浴や運動で汗をかく習慣をつけて内臓を温めたり、ストレスを溜め込まないような工夫をしたり、睡眠時間をきちんと確保したりして、規則正しい生活を意識してみてください。
いかがでしたか?
梅雨は日本らしい季節で、静かに降る雨の音に心地よさを感じる人も多いかもしれませんね。快適な日々を過ごせるように、一見関係なさそうに思える日々の生活や体調の変化を見逃さずに、自分に合った対策をしていきましょう。
水沼未雅(みずぬまみか)
わたし漢方創業者・薬剤師。京都大学薬学部卒業後、東京大学大学院薬学系研究科で博士号(薬学)を取得。アストラゼネカで新薬の上市プロジェクトにかかわった後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでヘルスケア関連プロジェクトを担当。漢方で自身の不調が改善した経験から、「もっと漢方の良さを広めたい!」という想いで2017年に『わたし漢方』創業。
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