どこか悪いわけではないのに、なんだか調子が悪い…。それは、もしかしたら日々の忙しさやストレスで、体のバランスが崩れているせいかもしれません。そんな忙しい現代女性におすすめしたいのが「漢方」。漢方薬や食材などを使って私たちの心と体を内側から整えることで、未病の段階で大きく力を発揮してくれます。セルフメディケーションとしての漢方の取り入れ方を、『わたし漢方』監修のもとご紹介します。
気温が上がる春先から夏にかけて、気になるのが汗。
頭から汗がダラダラ流れ出る…
生理前に多量の寝汗をかく…
ベタベタした汗や臭いが気になる…
このような汗のお悩みを感じたことはありませんか? これからやってくる季節は一年で最も暑い夏。正常でない汗のトラブルは、今のうちに直してしまいたいですよね。
今回は、なぜこのような汗のお悩みが出てしまうのか、その理由と予防方法を漢方医学の目線から解説していきたいと思います。
汗をかくのは正常な反応。でも…
汗は、体温調節や老廃物の排泄、肌のバリア機能などの働きを担ってくれる大切な体の働きです。
汗をかくとベタついたり、メイクが崩れたり…と不快に感じることも多いのですが、汗そのものは悪者ではありません。
暑いときや運動後に汗をかくのは正常な反応なので、汗をかかないことが良いわけではありません。反対に、汗をかけないことに悩む方もいます。
けれど、このような正常な反応以外に汗をかいたり、生活に支障が及ぶくらい汗をかいてしまうような状態は正しい働きとはいえません。
特にこれから夏の暑い時期に突入すると、汗そのものの不快感だけではなく、あせも・かぶれ・蒸れなどの二次的なお悩みも増えてくると考えられます。
汗のかきすぎ…病気の可能性もアリ?
正常な反応とはいえないくらい汗をかきすぎる場合、原因となる病気が潜んでいる場合もあります。
原因となる病気にはさまざまなケースが存在します。明確な原因がある場合は、まずそちらの治療を優先してください。症状が強い場合は、まず病院で一度相談してみることをおすすめします。
・感染症などの発熱によるもの
・甲状腺機能亢進症などの内分泌異常
・膠原病
・脳障害
・神経疾患
・低血糖
・薬剤性 など
しかし、病院にいっても原因がはっきりしないというケースもあります。
病気以外の原因とは?
病気ではない汗のトラブル。
その原因の根幹には生活習慣の変化と季節的な要因が大きく関わっています。
近年の冷暖房の普及やシャワー浴のみで済ませる人の増加などにより、現代人は汗をコントロールする能力が落ちているといわれています。また、清潔意識の高まりにより、臭いにも敏感になっているのも原因のひとつといえます。通常の汗の量だとしても、「気になる」と感じる人が増えているようです。
そこに季節の要因が加わると、この感覚がよりいっそう敏感になります。これからやってくる梅雨の時期を皮切りに、湿気が多く気温が高い時期が始まります。この時期は汗も蒸発しにくいため、ジメッとした汗を不快に感じやすくなります。
実は、このような悩みを長い間ずっと抱えたまま過ごしているという方が多いのです。
不快な汗のお悩みは一刻も早く解決したいですよね。では、どのように対策をしていけば良いのでしょうか? 漢方における考え方と予防策について、解説していきたいと思います。
汗が気になったらどうすればいい?漢方理論で読み解く「汗のお悩み」
汗のお悩みを漢方の目線で読み解くにあたって、まず紹介したいのが「気・血・水」という、体の状態をつくる三要素の考え方です。
気(き)…命のエネルギーで、体の活動を支えるパワー
血(けつ)…血液や臓器を潤して、栄養を全身に行き渡らせる
水(すい)…体内の血液以外の水分で、代謝や免疫に影響を与える
これらの働きは一見関係なさそうに見えても、お互いに作用しながら循環しています。どれかひとつでも欠けてしまうと、体の力が弱まって不調が出やすくなります。慢性化すれば体のバランスはどんどん崩れてしまい、立て直すためにはたくさんの時間がかかってしまいます。
汗のトラブルといっても、汗の出方、タイミング、気になる部位…症状やお悩みは人それぞれ違いますよね。体の働きのどれが足りていないのか・循環していないのかが、人によって違うからです。
汗のトラブルは一般的に、「気」や「水」の巡りや不足によって起こるケースが多く見られます。そこに熱や湿気、元々のアレルギー体質などのさまざまな原因が合わさっている場合もあります。
漢方医学においてとても大切なのは、この体質を見極めて、その体質ごとに合ったアプローチをすること。体質がわかれば、そこから出やすい症状も見えて、特に気をつけたほうがいいポイントや改善方法もはっきりとしてきます。
エネルギー不足による“ダラダラ汗” →「気虚」タイプ
エネルギー不足は代謝の悪さを招き、体の表面を覆うバリア機能を低下させるため、汗が漏れ出る状態を制御しにくくなってしまいます。ちょっと動くだけでダラダラと汗をかきやすく、疲れやすい、虚弱、寝汗が気になる、などの症状も見られます。
「気」が不足した「気虚」タイプの方には、滋養強壮をメインに体質改善を考えていくことが多いです。体の表面を引き締めて、汗が漏れ出るのを和らげていくための生薬が配合された漢方薬がおすすめです。
ストレスによる“パーツ汗” →「気滞」タイプ
体温調節には自律神経の働きが深く関わっています。緊張しているときに、多量の汗を感じたことのある方も多いのではないでしょうか? 忙しい毎日の生活の中で精神的なストレスが蓄積していくと、自律神経は疲れ切って働きが乱れてしまいます。緊張などにより交感神経が興奮すると、「気」が上がりやすくなるので、頭や顔だけでなく脇や手など部分的な汗が気になるようなケースが増えます。
「汗をかいたらどうしよう」と不安に思うことで、余計に悪化する場合もあります。他にもイライラ、不安感、動悸や不眠などの不調も起こりやすくなります。
精神的な不調や自律神経の不調が見られやすいのが、「気」の巡りが悪い「気滞」体質。このタイプの方は、まずは気の巡りの悪さを改善していくような漢方薬を用いて滞った気を流してあげるアプローチを取る場合が多いです。ストレスを溜め込まないように、適度な発散とリフレッシュを併せて行うとより効果的です。
とにかくたくさんの汗をかく →水滞タイプ
体内の水分代謝が悪い「水滞」体質。余分な水が滞りやすかったり、必要な部分に水分を行き渡らせる力が弱いので、ちょっとしたことで多くの汗をかきやすい、という方が多い傾向にあります。水分代謝が悪いせいで汗のトラブルが起きている方はまず、水の巡りの改善を目指しましょう。
健康のために水を1日2L飲むといいと聞いたことのある方も多いと思いますが、「水滞」体質の方にとって水分の摂り過ぎは逆効果になってしまうので気をつけてください。不要な水分を排出する力が弱いので、ぬるめのお風呂や軽めの運動で正常で緩やかな発汗の習慣をつけるようにするとより効果的です。
湿熱による“ベタベタ汗” →「熱・湿」こもりタイプ
上記のような「気」や「水」の症状に加えて、余分な「熱」や「湿」が内側にこもっている場合は、ベタベタした汗が出やすくなります。他にも、肥満やむくみ、口渇に加え、臭いや体臭が気になるケースもあります。なかでも特に「熱」がこもりやすい人には余分な熱を冷ます作用のある漢方薬を用いるのがおすすめの場合もあります。
ホルモンバランスの乱れによる "のぼせ汗” →更年期お悩みタイプ
更年期のエストロゲンの減少によるホルモンバランスの変化の不調のひとつとして、汗が気になるというケースも考えられます。冷えのぼせ、ホットフラッシュなど、他の症状も併せて感じる人が多いのが特徴です。
更年期トラブルの主な原因は、女性ホルモンのゆらぎ。ホルモンバランスや血の滞りを整える漢方薬がおすすめです。ほかの症状が目立つ場合も多いので、一緒に改善していけるようなアプローチを優先する場合もあります。
アレルギー体質に多い“手汗・足裏汗”
「肝」での解毒作用が弱っていて、普段から扁桃腺炎が腫れやすい、にきびや鼻炎などが起こりやすいというアレルギー体質の人は、熱がこもりやすく手の平や足裏に汗をかきやすい場合もあります。
バランスの整った生活も大切!
漢方によるアプローチや原因は違えど、どのような体質の人でも共通して行っていきたいのが、日々の生活習慣の改善です。普段の何気ない行動が積み重なって不調の原因となっている場合もあるので、自分で足りていないと感じる部分はなるべく早めに改善していきましょう。
1. 食生活の改善をしよう
栄養バランスの整った食事は健康に過ごすうえで欠かせません。飲み過ぎや食べ過ぎは胃腸やお肌への負担に留まらず、体全体のバランスを崩してしまいます。なかでも、辛いものや冷たいものは刺激になりやすいので、食べる量は調整するのがおすすめです。
太り過ぎ・痩せすぎというのは、どちらも体のバランスを崩す原因になります。無理なダイエットは禁物ですが、日々の適正な体重コントロールも意識していきたいですね。
2. 生活習慣を見直そう
お酒やたばこなど、これらがストレス発散やリフレッシュになっているという方もいますよね。休みの前の日はつい夜ふかししてしまったり、生活リズムが崩れがち…という方も少なくないと思います。
けれど、たばこは体に良いとは言えませんし、お酒も「晩酌を楽しむ」程度であれば良いのですが、酩酊するくらい飲むのはあまり良い習慣とはいえません。同じ時間に寝て、同じ時間に起きるのは、体のリズムを整えるうえでとても大切なので、夜ふかしや不規則な生活が続くと身体のバランスは崩れやすくなってしまいます。
このように、生活のなかで悪化の要因となるものがあればひとつずつ見直していきましょう。
3. 入浴と運動の習慣をつけよう
運動や入浴の習慣がない人はまず、習慣づけからはじめていきましょう。
暑くなってくるとなかなか湯船から遠ざかってしまう人も増えるかもしれませんが、ぬるめのお風呂にゆったりと浸かるのは冷えの防止や心のリラックス効果も期待できます。ラジオ体操やヨガ、ストレッチなどの軽い運動は代謝を上げてくれます。
日頃から汗をかく習慣を身につけて、弱った汗腺の働きを鍛えていくことが大切です。
外部からのケアも忘れずに
今はドラッグストアなどでも汗に関する商品が多く置かれていますよね。パウダースプレー、シート、ロールタイプなど、タイプも効果も様々なので自分に合ったものを見つけてみてください。ほかにも通気性の良い衣類や洗剤、ボディーソープやシャンプーの改善で気にならなくなったという方もいます。
汗をかいたときには洗い流すか、濡れたタオルなどでこまめに拭き取るようにすると、汗からくる二次的トラブル(あせもなど)の予防にもなるのでおすすめです。
ほんの少しケアを変えたり追加するだけでだいぶ楽になるというケースもあるので、外部からできるケアもこまめにしていきましょう。
とはいえ、忙しい毎日のなかでは、意識はしていても実践がなかなか難しい…という方も多いかもしれません。自分のライフスタイルや体の状態と相談して、自分に合った方法を見つけていきましょう。
いかがでしたか?
汗のお悩みというのは、汗だけが気になるというケースよりも、他にもいろいろお悩みが併発しているケースが多く見られます。
本格的に暑くなる前に、自分にあったアプローチから汗トラブルを改善していきましょう。
水沼未雅(みずぬまみか)
京都大学薬学部卒業後、東京大学大学院薬学系研究科で博士号(薬学)を取得。アストラゼネカで新薬の上市プロジェクトにかかわった後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでヘルスケア関連プロジェクトを担当。漢方で自身の不調が改善した経験から、「もっと漢方の良さを広めたい!」という想いで2017年に『わたし漢方』創業。
わたし漢方
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