もうすぐ待ちに待った春が到来。寒さから解放されるのはうれしいけれど、季節の変わり目による肌のゆらぎや体調不良、また本格的に始まる花粉症シーズンなど、意外と体に不調を招く要因がたくさん。実は食事の摂り方を変えるだけで、解決できるのだとか。そこで、最新の研究で明らかになった方法を、監修の古谷彰子先生のお話とともにご紹介します。
体調不良が起こる原因とは?
朝から、なんだか体が重だるくて、集中力が続かない…。なぜか理由もなく体調がスッキリしないときって、ありませんか? 実は、私たちの体のさまざまな働きがスムーズに行われているのは「体内時計」のおかげ。もしかしたら、その不調は体内時計がうまく働いていないせいなのかもしれません。
「体内時計とは、『一日のリズム』を刻む、私たちの体の中にあるシステムのこと。私たちは朝になると目覚め、日中は活動状態になり、夜になると自然と眠くなります。これらはすべて体内時計の働きによるものです。最近の研究では、体の中のあらゆる細胞に体内時計があることがわかっており、それによりホルモンの分泌や自律神経、免疫の働きなど全身の機能が調整されています。
そんな人間の体内時計は、24時間より少し長い周期にセットされており、地球の自転周期と同じ1日24時間で生活している場合、自ずとズレが生じてきます。このズレをうまくリセットできないと、体内時計が正常に働かなくなり、肥満や感染症など、さまざまな病気や不調の原因になってしまうのです」
「光」と「食事」が体内時計をリセットする
では、どのようにして体内時計をリセットすることができるのでしょうか。
「体内時計をリセットするために必要なのが、起床時の『光』と『食事』。一般的に、朝起きて光を浴びることで、脳を経由して体内時計がリセットできます。ただ、現代人の仕事や生活スタイルはさまざま。夜勤やシフトワーク、今だとリモートワークで昼夜逆転の生活、という人もいるかもしれません。そこで、より重要になるのが“朝食”なのです。
たとえ光による刺激を十分に感じることができなくても、朝、きちんと食事をすることで、胃や腸など体の各器官に対して直接指令を伝え、体内にあるすべての時計をリセットできる。つまり、食事や食事内容をコントロールすることで、“1日24時間”の正しいリズムを刻むことができるのです」
朝食を抜くと、体内時計が狂う?
「ところが、現代人は不規則な生活で朝食を軽視しがち。『朝ごはんを食べる時間がない』『ダイエットのために朝食を抜いている』という人もいるようです。リセット効果のある朝食を摂らずに、お昼にドンと食べていると体内時計がズレてしまいます。すると、夜になっても体内時計が夜と認識しないため、なかなか寝付けず、翌朝も早く起きられないという悪循環に陥ります。
また、夜型になると『太りやすくなる』こともわかっています。体内時計の乱れは体に負担をかけ、肥満など生活習慣病などのリスクも高めてしまうのです。このことからも、食事、とりわけ“朝食”は、体内時計はもちろん、ダイエットにとっても重要な要素なのです」
体内時計をリセットするために、食べるべき朝食とは?
「今までわかっていることのなかには、日本の伝統的な朝食のような、ごはん(炭水化物)、魚(タンパク質、脂質)、味噌汁や納豆(タンパク質)が、体内時計をリセットするために良い、ということがあります。パンが好きな人は、ツナサンドイッチに牛乳やチーズ、ヨーグルトなどを加えると、不足しがちなタンパク質が摂れるので、この組み合わせもおすすめです。
また、生活リズムが乱れていると腸内細菌のバランスも乱れることもわかっています。ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌は、腸内環境を良好にし、免疫力を整えるので、花粉症対策や美肌づくりにもつながります。
そして、間食をするのであれば、夕食の2~4時間前がおすすめです。最近の研究で、間食によって夕食後の血糖値の上昇が抑えられるといった報告があります。とくに食物繊維の豊富なさつまいもやグラノーラ、そしてポテトチップスなども良いと言われています。
そのほかにも、炭水化物を控える場合は、夜が良いでしょう。さらに、主菜から食べる“おかずファースト”にすると、血糖値を上げにくくなります。1日の食事のバランスが、朝・昼・夜で4:3:3になるように調整するよう心掛けてみてください」
チョコチョコ食いはNG!朝食までの「絶食」時間がポイント
「体内時計をリセットするのに大事なのは、朝食までの『絶食時間』を空けること。10時間程度あれば、十分にリセット効果を実感することができるといわれています。
一時期、『1日の総量が同じであれば、食事回数を多く分けて食べた方がダイエットに効く』と、一日に6食くらいに分けて食べる『チョコチョコ食い』が流行ったことを記憶している方も多いはず。実は、絶食時間が短すぎると体内時計が動かないことがわかっています。特に、肥満を引き起こしやすい原因にもなる夜型の人の場合は、チョコチョコ食べていると、いつまで経っても夜型のままで朝型になりにくくなるので要注意です」
チョコチョコ食いはNGと心得て!
体内時計を整えることで、ヘルシーに!
古谷先生によると、「夜型を朝型にスイッチするには、1週間もあれば大丈夫!」とのこと。
「ここまで紹介した食事方法を実践するほか、日中どうしても眠くなってしまう場合は、昼寝を導入して睡眠時間を調整するのもアリ。朝ごはんをプラスする、遅い夕食を控える、週末の寝だめをやめるなど、自分なりにできることを1つだけ見つけて、まずは1週間続けてみることが大切です。
体内時計を整えることは、体調が良くなるだけでなく、ダイエットにつながったり、仕事の効率が上がったりと、最終的には生活改善全体につながります。みなさんもぜひ参考にしてみてください」
古谷彰子(ふるたにあきこ)
理学博士・管理栄養士・アスリートフードマイスター。早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学非常勤講師。(株)アスリートフードマイスター認定講師としても勤務する。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチする「時間栄養学」の専門家。ChronoManage代表として、科学的根拠を基にしたライフスタイルへのアドバイス、栄養指導、実体験を基にした食育活動や講演活動、料理教室も開催している。