女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
わき汗が気になる人は約1700万人にも!
多汗症とは、日常生活で困るほど汗の量が多くなる病気です。わき、手のひら、顔など体の一部だけの局所多汗症と、全身の多汗症があります。
多汗症状のある人は、日本に約1700万人*もいて、日常生活や仕事に支障をきたすなど、社会的な悩みが多い病気です
多汗症には、いろいろな種類がありますが、「汗をかく部位」と多量の「汗が出る原因」の組み合わせで、4つに分けられています。
症状が見られる部位別では、体の特定の部位で汗の量が多くなる「局所性多汗症」と、全身で汗の量が多くなる「全身性多汗症」にわけられています。
また、原因別では、特に原因が見当たらない「原発性多汗症」と、感染症や糖尿病、手術による神経の損傷など、ほかの病気や障害が原因となる「続発性多汗症」にわけられます。
*出典/多汗症の全国疫学調査 Fujimoto T et al,JD,2013
原発性局所多汗症とは?
これらのうち、ほかの病気や障害が原因ではない、体の特定の部位で汗の量が多くなる多汗症を「原発性局所多汗症(げんぱつせいきょくしょたかんしょう)」と呼びます。
原発性局所多汗症は、おもに、わきや手のひら、顔、足の裏に見られます。このうち、わきに多汗症の症状が見られると、わきの多汗症で「原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)」と言います。
「腋窩」とは、「わき」のことですから、「ほかの病気や障害などの原因がないにもかかわらず、わき汗の量が多くなる病気」という意味です。
汗ジミ&汗が流れるのが不快!
・洋服のわきの下に汗ジミができて人目が気になる
・汗がツーっと流れ落ちるのが不快で仕事に集中できない
こんな症状で困っていたら、わきの多汗症(原発性腋窩多汗症)かもしれません。
20代~50代の働き盛りの人に多く、日常生活に支障があり、精神的な苦痛もあると言われています。
原発性腋窩多汗症の診断は?
原発性腋窩多汗症は、
□ 明らかな原因がない
□ 過剰なわき汗が6ヵ月以上ある
□ 両側左右対称
□ 日常生活に支障をきたす
□ 1週間に最低1回大量発汗発作がある
□ 最初に症状が出たのが25歳以下
□ 家族にも同じ症状の人がいる
□ 睡眠中は多汗の症状はない
このうち2項目以上のチェックがつくと、原発性腋窩多汗症と診断されます。原発性腋窩多汗症の人は、手のひらや足裏の多汗症を、同時にもっていることもあります。
塗り薬が新たに保険適用に!
これまでは、医療用医薬品として承認された外用薬がなかったため、汗の出口を塞ぐ働きのある塗り薬(塩化アルミニウム液)を医療機関で調合して(自由診療)、患者さんに渡しているケースも少なくありませんでした。
ほかの治療としては、汗を出す指令を伝える神経に作用して発汗を抑えるボトックス(ボツリヌス療法)をわきに注射する治療があり、2012年11月より保険適応になっています。
また、神経ブロック、レーザー療法、内服薬、精神(心理)療法なども一緒に行われることがあります。
これらで効果が見られない人には、手術という選択肢があります。
そんななか、原発性腋窩多汗症への新たな塗り薬が2020年、保険適用になりました。汗を出す指令をブロックする働きのある薬です。わきの多汗症診療を行う皮膚科や内科で処方してもらえます。
わき汗に悩む人への“塗る”治療薬
わき汗は、おもにエクリン汗腺という種類の汗の腺から出ており、この汗腺は交感神経から出る、アセチルコリンという物質を介したシグナルを受け取って汗を出します。
このアセチルコリンによるシグナルをブロックし、わき汗を減らす作用があるのが、新しく保険適用となった原発性腋窩多汗症治療への塗り薬「エクロック®ゲル5%」。わき汗治療で、塗り薬の保険適用は初めてです。
有効成分であるソフピロニウム臭化物は、効果があり副作用を低減することを目的に創製された新しい抗コリン剤です。
1日1回適量をわきの下に塗布するだけ。わき多汗症などを治療する皮膚科、内科で処方してもらいます。薬剤費は、健康保険3割負担で約¥1,500程度です。