ウェルネスに関わることや、暮らしを豊かにする情報には常にアンテナを張っておきたいもの。フリーライターの和多亜希さんが、講演会や取材から得た今知っておきたい情報をわかりやすくご紹介。
新型コロナウイルスの感染リスクを減らすためにマスクに加え、手洗い、うがいは欠かせないのは当然。口腔内を清潔に保つために、歯磨きも大切だとはよく聞くところです。感染しないために、また感染しても症状を抑えるために、免疫力を高めようとバランスの良い食事や腸内環境改善のために乳酸菌や発酵食品を取っているかたも多いと思います。
さらに感染予防のため、免疫力をアップするにはどうするべきか? 国産ワクチンの開発にも携わる大阪大学大学院臨床遺伝子治療学寄附講座教授の森下竜一先生が、日本抗加齢学会主催のセミナーで講演されたことをピックアップ。さらに森下先生の著書『防げ!免疫老化 免疫の鍵はミトコンドリア』からも一部抜粋してお伝えします。
ミトコンドリアの機能が免疫を左右する
生物の授業で習ったことがあるように、人は細胞が集まってできています。ほぼすべての細胞内にあり、細胞の活動エネルギーを作り出し、免疫を正常に働かせる司令塔のような役割をしているのがミトコンドリアです。人に必要なエネルギーの90%以上を作り出し、各細胞へ供給しています。さらにミトコンドリアはエネルギーを作り出す過程で、その副産物として活性酸素をも作り出し、病原体を駆除するはたらきも担っています。
ミトコンドリアの機能が下がれば、免疫細胞の機能低下も歴然ですね? だからこそ、ミトコンドリアを元気にする必要があるのです。
食事と運動は免疫力の要
人の体を構成するものは、100%食事そのもの。しかし、特に女性は痩せ願望のために過激なダイエットによって食べなくなってしまうこともあり、栄養面に不足がある人もいるようです。ミトコンドリアの機能向上のために、タンパク質、ビタミン、ミネラル、オメガ3系脂肪酸、ポリフェノールは必須。主食はたんぱく質やビタミン、ミネラルを多く含有する玄米や胚芽米を、またオメガ3系脂肪酸を含む青魚、野菜は旬のものを中心に1日当たり350g、善玉菌を増やす発酵食品なども積極的に摂りたいものです。
コロナ禍においてテレワークが進み、運動不足気味の人も多いのでは? 運動不足は免疫に大敵だとか。適度な運動は血流を促し、免疫細胞の生産能力もアップさせます。体温を形成する熱の40%が筋肉で生産されることから、ウォーキングより少し負荷のかかる運動を週に2~3日継続するのがおすすめです。
ストレス、疲労、不眠は免疫低下の原因
コロナ禍によるストレスも社会問題とされていますが、ストレスにさらされるとミトコンドリアがそれに対抗しようとエネルギーや活性酸素を過剰生産し、機能が低下。自律神経にまで影響を及ぼし、感染症に対する抵抗力も弱くなります。ストレスが溜まると睡眠不足や不眠につながり、自然免疫にも関与します。光の刺激によって体が緊張状態になる寝る前のスマホは、少しでも質の良い睡眠をとるためにも見ないようにしましょう。
また、疲労が溜まると、エストロゲンの減少などによって30代前後の女性でもイライラやほてりといった更年期のような症状が出かねません。もちろん肌にも大打撃! ストレスを減少させるために、笑うことは大切。さらに日光に当たることや、入浴や温浴でリラックスすることもおすすめです。
コエンザイムQ10がミトコンドリアを元気にさせる
抗酸化食品として、ダイエットやアンチエイジングに効果的と一時一世風靡したコエンザイムQ10。すべての細胞に存在する脂溶性のビタミン様物質で、ミトコンドリア内に豊富に存在しています。酸化型と還元型がありますが、体内で変換の必要のない還元型がより効果的です。
「還元型コエンザイムQ10はその抗酸化力でミトコンドリアを活性酸素から保護しながら、エネルギー生産を高めてくれます」と森下先生は力説。たとえ栄養素や酸素が十分あっても、コエンザイムQ10が少ないとエネルギー生産効率は低いまま。加齢とともにミトコンドリアの量も減少するため、常に増やし、元気にする必要があるのです。
コエンザイムQ10は食事からも摂取できますが、1日当たり5㎎程度と些少。十分な効果を期待するためには成人1日当たり100㎎の補給が理想的なので、サプリメントなどでの摂取がおすすめです。コエンザイムQ10は、疲労感や睡眠の質まで改善してくれるようですよ。