女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
周囲の人が気になる口臭の基準値をオーバーした人の割合は、女性のほうが男性より2倍以上も多い、という調査結果が発表になりました! さらに日本人の基準値オーバーの人は、約8人に1人という結果に! 年代別では、女性40代以上では、約4人に1人が基準値を超える口臭レベルと判明。気になる口臭、どうすれば改善できる? その方法をお伝えします。*ブレス・ハザードプロジェクト『口臭白書2019』データより
アラサー女子の約半数がデート相手の口臭に悩んだ経験アリ!
調査によると周囲の口臭が気になるシーンとしては、“仕事の打ち合わせ”と“デート”でした。
割合が最も多かったのは、“仕事の打ち合わせ”が69.6%。日本人の7割が口臭を我慢しながら仕事している?という結果に。
デート中の相手の口臭に悩んだ経験がある人は、男性が32.5%、女性が45.7%。特に30代女性は、約半数(50.6%)が相手の口臭の悩みを経験していました。
さきほどの結果にあるように、口臭測定スコアで基準値(口臭測定スコア50)をオーバーした人の割合が、男性8.3%に対し、女性は17.9%と、女性の方が2倍以上の割合になっています。
年代別では、中高年の男性が9.3%に対し、若年の女性が11.5%。中高年の男性より若い女性のほうが“お口が臭う”という事実が明らかに。
また、より口臭スコアが深刻なのは、40~60代の更年期世代とそれ以降の女性で、基準値を超えた人の割合は、24.1%と圧倒的に多く、約4人に1人が基準値オーバーという結果です。
*1 資料/「ブレス・ハザードプロジェクト『口臭白書2019』データ」より
女性の口臭の原因は、女性ホルモンの低下と歯周病菌!
では、気になる口臭の原因は?
口臭は大きく分けて、2種類に分類できます。
1. 生理的口臭
起床時や空腹時、食事の後など一時的に口臭が強くなるもので、時間の経過とともに減少します。
2. 病的口臭
多くは歯周病など口腔内トラブルが原因。ほかに、呼吸器系や消化器系の病気によるものも。
女性が男性に比べ、口臭レベルが高いのは、歯周病リスクが高いことが関係しています。
女性に歯周病リスクが高い理由は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌の減少が、口腔内の血液循環やプラーク中の細菌に影響を与えるからです。
女性ホルモンのバランスが崩れることで、歯周組織が変化し、歯周病が悪化する恐れがあります。
また、女性は女性ホルモンの変動でドライマウスになりやすく、特に更年期は、唾液の量と質が変わることで、口臭の原因にもなります。
特に女性は、膠原病のシェーグレン症候群によるドライマウスや口臭という可能性もあるため、注意が必要です。
人生で3回、口臭リスクが高まる!その時期は?
特に、思春期、妊娠・出産期、更年期の3つのタイミングで、歯周病リスクが高まりやすいと言われています。
女性の口臭リスクが高まる時期と原因として、
・思春期は、ホルモンバランスが大きく変化する時期。生理(月経)のときに歯ぐきが腫れやすくなることもあります。
・妊娠・出産期は、女性ホルモンの分泌が非常に高くなるため、細菌の一種の発育を促進させ、歯ぐきから出血を起こしやすい状態になります。
・更年期は、女性ホルモンのバランスが崩れ、エストロゲンが急激に減ることで、歯周組織が変化し、歯周病症状が悪化する恐れが高い時期です。
女性のほうが口臭基準値をオーバーした人が多かったのも、この女性特有の歯周病リスクと少なからず関係しているのではないでしょうか。
仕事、家事、子育てと時間に追われ、心身の状態に気づかう余裕を持ちにくい現代女性。口臭は、自身の健康にはもちろんのこと、対人関係にも大きな影響を及ぼします。一層適切なケアが大切です。
「病的口臭」の改善には“プロケア”が必要です!
歯周病の予防には、もちろんセルフケアも重要ですが、それだけでは磨き残しが出やすく、予防につながらないこともあります。
歯磨き回数を増やしただけでは、限界があることもわかってきています。
1日2回以下の歯磨きの人と3回以上の人で口臭測定をし、口臭の基準値レベルをオーバーした人の割合を比べたところ、歯磨き回数が多い「1日3回以上」の人のほうが口臭が強いという結果が出ています。歯磨き回数と口臭レベルは、必ずしも一致していなかったのです。*1
「病的口臭」の予防のためには、定期的に歯科でメンテナンスを受けることが大切です。3ヵ月に1回程度を目標に、歯科で歯のメンテナンスやカウンセリング、ケア方法についての指導を受けることが望ましいと言われています。
セルフケアとプロケアの両輪を行うことで、口腔環境は格段に良くなります。
口臭も、その原因となる歯周病も、特に思春期、妊娠・出産期、更年期世代の女性はハイリスクです。
歯周病になってから慌てて歯科に駆け込むのではなく、歯周病にならないよう予防のために、定期的なプロケアに通うことが重要です。
全国の歯周病専門医リストはこちらから
増田美加の記事をもっと読む。