女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
生理痛がひどくて、痛み止めを飲んだり、仕事を休んだりしていませんか? 生活に支障があるほどの痛みは、子宮に何か病気があるかもしれません。子宮の病気は30代から増えてくるものがいくつかあります。将来の不妊症にもつながりますので、痛み止めなどの市販薬だけで対処せず、我慢しないで早めに婦人科を受診しましょう。30代で気をつけたい子宮の病気とその対処法をお伝えします。
今までと違う、ひどくなってきた・・・を感じたら、婦人科へ
日常生活に支障をきたすようなひどい生理痛は、月経困難症という病気の可能性が高いです。
その原因となる子宮の病気(器質性月経困難症)で多いのは、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)、子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)、子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)の3つです。いずれも30代から多くなる病気です。これらは良性の子宮の病気ですが、将来の不妊症の原因にも。
生理痛などの症状が、「以前よりひどくなってきた」「生理の出血量が多くなってきた」と感じたら、隠れた病気があるかもしれません。
腹部の痛みやひどい生理痛、生理以外の不正出血、普段と違うおりもの、下腹部のしこり、生理周期や量の異常などは、自分でチェックできる病気のサインです。
異常を感じたら、早めに婦人科を受診すれば、病気を軽いうちに治療することができます。日頃から基礎体温表をつけておくと、異常の早期発見や診断にも役立ちます。
もっとも多い子宮の3大病とは?
子宮の病気には、子宮頸がんや子宮体がんなどの悪性のものもありますが、最も多いのは、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症などの良性の病気です。子宮の良性の3大病とは、どのようなものなのかを紹介します。
【子宮筋腫】
30歳以上の女性の20~30%にみられます。悪性ではありませんが、貧血や痛みなどの原因になります。子宮筋腫は、女性ホルモンで大きくなり、閉経すると逆に小さくなります。
複数できることが多く、数や大きさはさまざま。大きさやできる場所によって、症状が異なります。
筋腫ができる場所は、子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)です。
症状は、過多月経(生理時の出血の量が多い、血の塊があるなど)と生理痛です。ほかに生理以外の出血、腰痛、頻尿などもあります。不妊の原因にもなりますので、これらの症状に心当たりがあれば、婦人科を受診しましょう。
小さくて、無症状の場合は、治療の必要はありません。症状がつらく、大きくなったり、貧血がひどければ、治療(薬や手術)をします。
【子宮内膜症】
子宮内膜がなんらかの原因で、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し、発育する病気です。20~30代での発症が多く、ピークは30代前半です。
子宮内膜が女性ホルモンの影響で、生理周期に合わせて増殖して、生理時には血液が排出されずに、周囲の組織と癒着を起こして、生理痛、腰痛、性交痛、排便痛などの痛みにつながります。これらの痛みがどんどんひどくなっていく、と感じたら、早めに婦人科を受診しましょう。
子宮内膜症は、不妊症の原因になります。卵巣に起こるチョコレートのう胞も、子宮内膜症です。チョコレートのう胞は、40代を過ぎると一部、がん化するリスクが伴います。定期的に婦人科でチェックしていくことが大切です。
手術や薬など治療の選択は、病態、年齢、妊娠・出産希望の有無によってさまざまで異なります。自分の希望を医師に相談して、決めていくことが大事です。
【子宮腺筋症】
子宮内膜によく似た組織が、子宮の筋層(子宮内膜の外側を構成する筋肉でできた層)内にできてしまう病気です。
子宮内膜症は、子宮以外の場所に内膜組織ができますが、子宮腺筋症では、子宮の筋層内に内膜組織ができます。そのため、子宮の壁が徐々に厚く、硬くなり、子宮が大きくなっていきます。
また、子宮腺筋症は、子宮筋腫とも似ています。筋腫はこぶができますが、腺筋症はこぶは見られず、子宮筋層が厚く固くなっていきます。
子宮筋腫や子宮内膜症とも合併することが多い病気です。症状は、ひどい生理痛、過多月経に悩まされます。
一般に生理痛は、子宮内膜症よりも強く、過多月経は子宮筋腫よりも重症です。息切れ、倦怠感などの貧血も、強く出る傾向にあります。
症状がひどい場合は、薬や手術で治療できますので、我慢せずに婦人科を受診しましょう。
出血が多い人は、貧血に要注意!
過多月経(生理の出血量が多い、血の塊があるなど)、頻発月経(生理周期が短い)の人は、貧血を起こしている可能性があります。
放置すると心臓に負担がかかり、ひどい場合は、心不全につながるので要注意です。貧血を軽く見ず、決して放っておかないようにしましょう。症状がない人もいて、立ちくらみ、息切れなどに気づかないこともあります。
健康診断で貧血を指摘されたり、過多月経の人は、婦人科を受診してください。
子宮のおもな症状と疑われる病気リスト
子宮まわりに起こるおもな症状と考えられる病気をまとめました。当てはまるものがあったら、早めに婦人科でチェックしましょう。
【生理(月経)異常】
●量が多くなり痛みが強い・・・子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症
●期間が長くなり量が多い・・・子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣機能不全
●生理痛・・・子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、月経困難症
【不正出血】
●不正出血・・・子宮筋腫、子宮頸がん、子宮腟部びらん、ポリープ、子宮頸管炎、子宮体がん、機能性子宮出血
●閉経後の不正出血・・・子宮体がん、子宮頸がん、萎縮性腟炎、子宮肉腫、卵巣腫瘍、ポリープ
●セックス後の出血・・・子宮腟部びらん、子宮頸がん、ポリープ、子宮頸管炎(性感染症)
●セックスと関係ない出血・・・子宮頸がん、子宮体がん、子宮筋腫、ポリープ、卵管がん、萎縮性腟炎
●その他の不正出血・・・流産、子宮外妊娠、胞状奇胎(ほうじょうきたい)
【おりもの】
●色の変化や量の異常、かゆみ・・・腟トリコモナス症、カンジダ腟炎、細菌性腟症、萎縮性腟炎、子宮体がん、子宮頸がん
●悪臭をともなう場合・・・進行した子宮頸がん、子宮体がん、細菌性腟症
【腹痛、腰痛】
●急激な痛み・・・卵巣のう腫の茎捻転(けいねんてん)、卵巣のう腫の破裂、子宮外妊娠の破裂、卵巣出血
●慢性的な痛み・・・子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮がん、子宮肉腫、骨盤内腹膜炎、クラミジア感染症
●発熱を伴う痛み・・・骨盤腹膜炎(骨盤内炎症性疾患)、クラミジア感染症
●腹部のしこり・・・子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣腫瘍
●外陰部の痛み・・・外陰炎、性器ヘルペス、バルトリン腺膿瘍、外陰がん
※この記事は専門医チームによる監修を受けています。
●参考資料
公益社団法人日本産科婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/
『新版 知っておきたい子宮の病気』
上坊敏子 著/新星出版社
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