女性医療ジャーナリストの増田美加さんによる連載。人生の基礎になる“健やかな体”を手に入れるための最新知識をお届けします。
多くの女性が悩んでいるPMS(月経前症候群)。実は、漢方薬は、PMS改善が得意。そこで、あなたのタイプにピッタリの漢方薬と、漢方薬の賢い入手法をご紹介します。
また、「クリニックで処方箋をもらう漢方薬とドラッグストアで売っている漢方薬でどう違うの?」「病院で医師が処方する保険が使える漢方薬と、漢方薬局で薬剤師が自費で販売する漢方薬では、どう違うの?」など、疑問の声にもお答えします。
イライラは気の乱れ、肌くすみは血の乱れ、むくみは水の乱れ
漢方薬は、生理周期による不調の強い味方です。
東洋医学(漢方)では、生理周期の症状は「血(けつ)」の異常を中心として、「気(き)・水(すい)」のバランスの乱れをともなって生じると考えます。
「血(けつ)」の乱れがあるタイプ
□あざができやすい
□顔色が悪く、肌がくすむ
□指先や足のかかとが乾燥しやすい
□便秘気味のことが多い
□肩こりに悩むことが多い
「気」の乱れがあるタイプ
□イライラしがち
□気分が沈む
□夜なかなか眠れない
□のどに違和感がある
□おなかが張る
「水」の乱れがあるタイプ
□むくみやすい
□トイレが近い
□めまいや耳鳴りがすることがある
□頭痛を起こしやすい
□天気によって体調が悪いときがある
「気・血・水」は、どれかひとつのタイプだけでなく、複数のタイプを併せ持っている人もいます。漢方専門医は、これらの「気・血・水」のバランスを考えて漢方薬の処方に役立てます。
また、「気・血・水」に加えて、「虚(きょ)」と「実(じつ)」でも、その人の「証(タイプ・体質)」を見極めて、漢方薬が処方されます。
「虚証(きょしょう)」タイプ
□体力がなくすぐに疲れやすい
□胃腸が弱い
□風邪をひきやすい
□寒がり
□食後にすぐ眠くなる
「実証(じっしょう)」タイプ
□気力、体力があり抵抗力が強い
□暑がり
□胃腸が強い
□汗をかきやすい
□風邪をひくと高熱が出るが回復が早い
同じ症状でも、「虚証」か「実証」かによって、処方が変わるので、自分のタイプを知ることが大切です。自分のタイプは、こちらの記事、あの人の漢方薬が、私には効かない!?あなたの「証(タイプ)」に合った漢方、教えます!も参考にしてみてください。
PMS改善の心強い味方となる漢方薬
PMSの症状によく処方されている漢方薬を紹介します。
「実証」タイプで、のぼせ、めまい、肩こり、頭痛、下腹部の張りや痛みがある人なら、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」がよく処方されます。
「実証」タイプで、のぼせ、便秘、腰痛、頭痛、肩こり、めまいなどがある人には、「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」。
「虚証」タイプで、イライラ、不安、疲れやすさ、肩こり、不眠などの不調には、「加味逍遥散(かみしょうようさん)」が。
「虚証」タイプで、疲れやすく、冷え症、めまい、肩こり、頭痛、手足のむくみなどがある人は、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」などがよく処方されています。
あなたのタイプは、どれでしょうか?
漢方薬をはじめて使ってみようと思う人は、できれば医師の診察を受けたほうが、自分の「証」(体質、タイプ)や「気・血・水」の状態にピタッと合うものを処方してもらえます。健康保険も使えます。
漢方薬の効果的な飲み方は?
漢方薬は、空腹時に飲むことで、より吸収しやすく、効果が上がります。
西洋薬は、胃を荒らすため食後に飲む薬が多いですが、漢方薬は胃薬の作用がある生姜、大棗、甘草が入っているものが多いので、胃への負担は少ないのです。
また、エキス剤(顆粒)は、少量のお湯で溶いて飲むと、吸収率を上げて、効果が高まると言われています。
「桔梗湯(ききょうとう)」という漢方薬を、のどの痛みをとるために使うときは、お湯に溶いて冷まして、うがいをするという使い方もあります。
飲み続けても効果が感じられないときは?
漢方薬は、西洋薬よりは圧倒的に少ないですが、薬ですので、血圧が上がったり、下痢をしたりなどの副作用もあります。
「証(体質・タイプ)」に合っていれば、風邪などの急性期の症状なら、数十分から数時間で、症状の変化を感じます。
1~2週間程度飲んでも、変化を感じないときには、医師に相談しましょう。薬を変えてもらうことも大切です。
慢性の病気や体質改善のために、長く飲む漢方薬もありますが、良くなったら止めるのは、薬の基本です。
風邪や頭痛、のどの痛みなどの急性の症状には、そのときだけ飲めばいい、漢方薬もたくさんあります。
クリニックとドラッグストア、漢方薬局の漢方薬は、どう違うの?
厚労省が承認した漢方薬は、クリニック(医療施設)で医師が処方する「医療用漢方薬(処方薬)」148処方と、ドラッグストアで市販している「一般用漢方薬(市販薬)」294処方があります。
医師が処方箋を書いて処方する漢方薬は、「医療用漢方薬」で、クリニックなどの医療機関でしか処方できません。
ドラッグストアにある漢方薬は、自分で選んで購入する「一般用漢方薬(市販薬)」です。
クリニック(医療施設)の「医療用漢方薬(処方薬)」もドラッグストアの「一般用漢方薬(市販薬)」も、どちらも漢方薬に含まれる生薬の成分は、同じです。
しかし、「一般用漢方薬(市販薬)」は、安全性を考慮して、1日の服用量中の成分量が少ない場合があります。
148処方ある「医療用漢方薬」は、医師の診察を受け、自分の「証」(体質、タイプ)にあったものを処方してもらえます。また、健康保険が使えます。
日本では、西洋医学の医師の約8割が普通の診療のなかで、漢方薬を処方しています。これは日本だけで、中国や韓国では西洋医学の医師は、中薬(漢方薬)を処方しません。
一方、ドラッグストアなどで売られている「一般用漢方薬」は、自分で選び、自費で購入します(健康保険は使えません)。
ですから、自分の「証」に合っているかは不明です。そのためか、市販の「一般用漢方薬」のほうが、「医療用漢方薬」より、副作用の報告が多いという実態もあります。
また、街の漢方薬局では、「医療用漢方薬」と「一般用漢方薬」両方を販売しているところがありますので、確認が必要です。
街の漢方薬局は、薬剤師が処方する漢方薬のため、自費です。健康保険は使えません。また、厚労省に承認された漢方薬ではなく、独自の生薬であったり、お茶やサプリメント、民間薬などとして販売されているものもありますので、信頼できる漢方薬局を見極めることが大切になります。
保険適応と保険が使えない漢方薬の違いは?
漢方薬は、高いというイメージがありますが、医師の処方箋がある「医療用漢方薬(処方薬)」であれば、健康保険が使えるので、安価です。
エキス剤(顆粒)が中心ですが、煎じ薬でも健康保険が使えるものもあります。
ただし、医療機関によっては自由診療だけで行っているところがあり、そこでは保険は使えません。保険診療を行っている医療機関かは、事前に確認したほうがよいでしょう。漢方薬局で購入する漢方薬も、健康保険は使えません。
健康保険が使えない自由診療の医療機関で処方する漢方薬の場合、例えば「葛根湯」でも、生薬の種類は同じでも、生薬の分量を医師のさじ加減で微妙に変えることができます。
信頼できる漢方専門医であれば、自分だけのオーダーメイドの漢方薬を処方してもらえるメリットもあります。
漢方専門医でも、健康保険で処方している医師も少なくありません。日本東洋医学会のホームページから漢方専門医は探せます。
【漢方専門医の探し方】
「一般社団法人日本東洋医学会」漢方専門医検索で全国の各診療科の専門医が検索できます。
https://www.jsom.or.jp/jsom_splist/listTop.do
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