仕事を楽しむ、頑張る、好きでいるために。大切にしている3つのこと

毎日のようにラジオから流れてくる、耳に心地よく、洗練された美しい声。その主は、ラジオDJとして活躍する池田なみ子さん。顔が見えないラジオというメディアをとおして、多くの人の心を掴む仕事。その知られざる舞台裏を垣間見れる、池田さんのお仕事エッセイ最終回。【シリーズ／お仕事エッセイ】

「何をしたいか」より「誰と仕事をするか」

お仕事エッセイ。全6回の連載もラストになりました。

この連載をお声がけ下さった編集の方は、かれこれ6、7年のお付き合いになるでしょうか。お仕事での出会いがスタートでプライベートではなかなかお会いできないのですが、ずっと信頼と憧れをもつ素敵な方。この方とお仕事がしたいと思ってずっとご一緒させて頂いてました。

実は、お仕事においてこれが1番大切なことだというのが私の信念！
誰とご一緒したいか、誰とお仕事をするのかは、何をしたいかよりもグッとモチベーションが上がり、この人となら何ができるのかワクワクするのです。

だからこそ『ごめん、ここはちょっと…泣いてもらえないかなぁ』なんてことも全然有り！　この人のためなら少しの無理も成長のための頑張りに変わっちゃう！というくらい、まずは人ありき。その方と同じ現場にいるとか、同じ目的を持って番組やイベントを作ることはかけがえのない財産になると信じてきて、今でもそこに間違いは無いと言う確信があります。

この人たちのそばにいられる仕事をして行こう！　そう思わせてくれる人がいる場所での仕事は学びも多くて、ひとつの仕事を終えた後の満足感も高いのです。お金じゃない選択がお金や次の仕事を運んでくれることもあります。

出会ってお世話になった方でずっと今もご一緒させて頂いてる方もいれば、少し疎遠になることもありますが、親戚との付き合いのようなもので、ひとたび再会すれば気持ちがつながっていたりもするのも面白いし、人に魅力を感じなければ頃合いをみてその場を去ることも考えます。

誰と仕事をしたいかで得られた副産物は他にもあります。

ずっとロックしか聴いてこなかった学生時代を経た私に、あるとき紹介されたディレクターは元ディスコDJでソウルやR&B好きな方。初めての顔合わせは神戸のポートタワーの下。赤いポルシェを乗りつけモデル張りの高身長に有名メゾンのファッションで固めている男性で、私にとっては慣れなく怪し過ぎる展開。何か騙されてるんじゃないかと警戒心が爆裂でしたが、派手な身なりで、地味にも思えるラジオを熱く語る人柄に嘘はないと私なりの判断。ロックでなくソウル、R&Bの番組をご一緒させて頂くことになり、ソウルやヒップホップ、最新のダンスシーンのことなどはこのディレクターとの出会いでイチから勉強です。私の音楽的な理解の幅が広がり、これもかけがえのない財産となりました。

自分のできることや得意なことにこだわるのも個性の発信だけど、人との出会いから刺激され身につくスキルもあり、面白がってしまえばこっちのものと思えるように。

ここまでで聞こえてくる外野の声は…いい人かどうかどこで判断するの？　——それは直感です。自分の肌感覚を信じる！　

自分がしなくてはならないことを見据える

チームで仕事をする上で大切にしていることを、もうひとつ。それは、機嫌良くいること。

表に出ているぶん、気を遣われたり、看板として大事に扱われることも多いです。時には必要以上に構ってくれることも。申し訳ないし、恥ずかしくてくすぐったけれど、そこは『ありがとう！』と受け入れる。そして、そのぶん私がしなくてはならないことを見据える。それは大抵、機嫌のいい人でいること！　気を使わなくてよい空気を作ることだったりするのです。『オンエア』というだけあって、現場のAIR、空気は電波の向こうに伝わってしまう。まずは私発信で機嫌良く楽しい現場の空気を作ること。

数字に囚われないこと

そして、数字がすべてだと思わないことも大切に思っています。

年齢もそうだし、売り上げや聴取率もそう。気にし過ぎると本当に大切な物を見失うことがあるように感じるのです。

災害もそうですよね。被害の数や規模も数字じゃない。心の痛みは数値化できないし、何年経ったとかでもない、心に寄り添うこと。もしかしたら時間の感じ方さえ数字ではないのかも知れません。

充実した時を過ごせるように選曲したり、ラジオ番組を通じて『あっという間だった』と日々の繰り返しやお仕事の時間を軽やかに感じてもらえるように。ぽっと心に灯る小さな光となるようなラジオ番組を届けられるように。

機嫌良く、尊敬でき勉強させて貰える人と働き、数字の概念に囚われない！　ラジオ業界だけでなく、どのお仕事にも共通することかもしれないですね。

あなたがお仕事で大切にしていることはどんな事ですか？　どんな仕事仲間とご一緒ですか？　番組へのメッセージもお待ちしてます！　なんて言ってみたりして最終回。

6回の連載、ありがとうございました！