ラジオDJの仕事道具とは？不要になったもの、新たに必要になったもの

毎日のようにラジオから流れてくる、耳に心地よく、洗練された美しい声。その主は、ラジオDJとして活躍する池田なみ子さん。顔が見えないラジオというメディアをとおして、多くの人の心を掴む仕事。その知られざる舞台裏を垣間見れる、池田さんのお仕事エッセイ4回目。【シリーズ／お仕事エッセイ】

仕事道具にまつわるあれこれ

「こんな小さなバッグで仕事に行くの？」とよく驚かれる。
バッグの中はハンカチ、ポケットティッシュ、ウェットティッシュ、小さいノートとペン、化粧ポーチ。およそ、仕事に使うと思われるものが入っていない。

スタジオにロッカーがありレギュラー番組で使うものは大抵置いて帰るということもあるが、最近はスタジオの機能もDJにとって便利になり、ほとんど道具らしい道具がない。

以前はストップウォッチなども持っていたけれど、今のスタジオは曲のタイムが表示されるカウンターがあり、イントロもわかるし、あと何秒で曲が終わるのかも表示される。90年代にラジオ業界の誰もが持っている？！と思われるくらい、みんなが使っているストップウォッチがあった。時間計算ができる60進法での計算機付きのもの。今でもディレクター達は使っている人が多いが、DJには特に必要なくなりバッグが軽くなった。

さらにヘッドフォンも持ち歩いていた頃もあったが、最近私はイヤホンを好んで使っているうえ、スタジオにもヘッドフォンが常備されていて、特に好みの物がある訳でなければ持ち歩かずともOK。さらにバッグは軽量に。

そんなバッグ軽量化運動のなかにあって削ることが出来ないのがノートとペン。アナログなツール。パソコン、タブレット派も増えたけれど、私が気になったこと、街で見かけたこと、考えを整頓したいときはやはり書く方が好き。

文字は打つより書く方が頭のなかも整頓できるし、イメージが広がっていく感じがするのだ。あえて問題点をあげるなら、閃いたことに書くという動作が追いつかず、びっくりするほどの悪筆になってしまうこと。あとで自分の字を解読するのに時間がかかり、ノートを見返してひとり失笑していることもしばしば。

何の道具も要らないなら準備は簡単かと思いきや、常にメンテナンスしておかなくてはならないものがある。それは体調。空気の乾燥で喉がカリカリした感じになったり、何の前触れもなくマイクの前で咳き込んでしまったりするときには、自己管理ができていなかったのだと落ち込んでしまう。喉も大事な道具といえるかも知れない。

普段心掛けているのは鼻うがいやうがいの仕方、唾液分泌エクササイズ。やってしまったときにはプロポリスやマヌカハニーのチカラを借りる。

うがいは天井を見上げ、喉の奥を開くイメージで『ガラ、ガラ、ガラ〜』そのまま音階を辿っていく。ガラガラでドレミファソラシド。そのまま1オクターブ上げてガラガラ。声帯を鍛えた気分になる。

勝手に名付けた唾液分泌体操は、舌を口の中でぐるぐる回す。歯茎と唇の間をまずは時計回りにぐるぐる20回。今度は反対に20回。潤いを得ると同時に舌の回りも良くなる。けれど…やっている最中はゴリラの顔。誰にも見せられない。

そして、どんなに気をつけていても時にひいてしまう風邪。喉の痛みや鼻水が引っかかって声が変わってしまう。声が枯れそうな予感がするときは抗菌作用があるマヌカハニーをひと匙舐めて癒やす。品質基準が100以上の物を常にスタジオに持ち込み、風邪の季節を乗り切る。それでも敵わなかった手強い喉の痛みがあるときはプロポリスの原液の登場。うがいの要領で喉に溜めた水に原液を1、2滴垂らして上を向いたままゴクリと飲み込む。

どれも長年のラジオ生活のなかで培った、私のために、私が納得した、私なりのやり方なので皆さんに効くとは限りません。あしからず。できるだけ市販の薬に頼りたくないので、日頃から元気でいること、少しでも身体に良い食べ物を、ほどよい量で食べるなど、いつしかプチ健康マニアです。

いつもの時間のいつもの声に安心して下さる方がいらっしゃるのなら、声は道具。声や健康を守ることも仕事かも知れません。

最後に、最近使い始めた道具があります。コレがなくては仕事にならなくなってしまいました。コレがなくて失敗したこともあります。
老眼鏡…いえ！シニアグラス…うーん。これも切ない響き。ファッショニスタでシンガーの野宮真貴さんは『マチュアグラス』、円熟した大人の眼鏡と仰ってました。そのマチュアな眼鏡がないと1986年と書かれたものを1988年と読んでしまいそうになることもあり死活問題です。

この先、年齢を重ねた故に必要になる道具が出てくるかも知れないとドキドキしながら、それもまた楽しんでいきましょうか。

少しバッグは大きくなるかも知れないです。