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LIVING仕事

2018.01.19

“明治 ザ・チョコレート”が、大人女子に愛される理由〜連載『プロジェクトS』

商品やサービスを通じてSpark(ときめき&ひらめき)を発信している、働く女性をクローズアップする連載『 プロジェクトS 』。“S”はもちろん“Spark yourself!”の頭文字です。商品制作の舞台裏や仕事に対する想いなどをインタビューしていきます。企画や研究開発に携わる同世代の彼女たちから、仕事を楽しむヒントやコツが得られるはず!

明治 ザ・チョコレート

今回は株式会社 明治で「明治 ザ・チョコレート」の商品開発に携わる、山下舞子さんにインタビュー。1926年のミルクチョコレート発売以来、長年培ってきた知識と技術が凝縮された、大人のためのチョコレートブランド「明治 ザ・チョコレート」。失敗してもブレない想いと、徹底した素材・商品設計への探求がヒットを生み出していました。

チョコレートの嗜好品としての可能性

明治 ザ・チョコレート
−まず、現在のお仕事内容を教えてください。

〈山下〉商品開発部で「明治 ザ・チョコレート」の専任担当として、商品を売り出すまでの工程をコーディネートしています。商品コンセプトの立案や商品設計、コンセプトに基づいたブランディング(各チームとデザインやネーミングの方向性を決める)、研究所の開発チームと味の選定を行うなど内容は多岐にわたります。

−「明治 ザ・チョコレート」誕生の経緯を教えてください。
明治 ザ・チョコレート

〈山下〉日本では“チョコレート=子供のおやつ”というイメージが強いのですが、チョコレート文化の先進国であるヨーロッパでは、コーヒーやワインのように大人の嗜好品として扱われています。コーヒーでいう豆、ワインでいう葡萄のように、カカオも産地や製法などによって味がまったく異なるもの。日本でもそういった嗜好品としてのたしなみ方を広めたいという想いから、コンビニやスーパーのチョコレート売り場に“スペシャリティチョコレート”の領域を作ろうと試行錯誤の日々が始まりました。

実は、この取り組みは明治 ザ・チョコレートが初めてではないんです。弊社では1926年以降からBean to Bar (カカオ豆からチョコレートのバーを作るまでの工程を担う生産スタイル)に取り組んでいて、1986年からスペシャリティチョコレートブランドを立ち上げてきました。けれどどの商品もなかなか市場に定着せず、過去7回失敗したんです。明治 ザ・チョコレートも、2014年9月に現在とは違う形で商品化をしたのですが、1度目はうまくいきませんでした。

−“スペシャリティチョコレート”を作るために、どのような取り組みをされてきたのでしょうか?
明治 ザ・チョコレート
明治 ザ・チョコレート

〈山下〉カカオ自体はライチのような味わいがあるフルーツで、果肉と一緒に豆を発酵させることによってはじめてチョコレートのアロマが生まれます。チョコレートの主原料となるカカオ豆の発酵までは、原産国で行わなければなりません。そしてチョコレートの味を決めるのは、カカオ豆の品質が5〜7割ほど占めているといわれています。

そうなると自分たちが現地に赴き、カカオの木の育て方と選定、味を左右する発酵の工程を開発していかないことには本当に美味しいチョコレートが作れないのではないかという考えに至り、2006年から「メイジ・カカオ・サポート」というカカオ農家の支援活動をスタートしました。原産国となる国々に研究員が入れ替わり立ち替わり滞在し、技術的な開発をしています。美味しいカカオ作りには農家の方の生活安定も重要なので、栽培のための道具や蚊帳、学校備品などの提供や農家の方々の生活支援も行っています。

その後取り組みを始めてから10年ほどが経った頃にようやくカカオの品質が安定し、量も確保できるようになったので、2014年に「明治 ザ・チョコレート」が誕生しました。

−もともと、現地のカカオ栽培はどのようなものだったのですか?

〈山下〉彼らにとっては、カカオ豆そのものが収入源となります。“豆が売れること”に重点を置いているので、豆がその後どのように加工され、どんなチョコレートになるかまで意識せず、発酵環境が整っていない農家もあったりと品質が安定していませんでした。そういった農家に対しても弊社の研究員が一軒一軒回り、協力してくれる農家とカカオ栽培や発酵の研究・指導を行い、一度カカオ豆を日本に持ち帰ってチョコレートにして、また現地に持って行って・・・という工程を繰り返し、本当に地道に一歩一歩進めていく感じでしたね。

信念を貫いて生まれ変わった商品

−2016年の商品リニューアルでは、どのような改良をされたのでしょうか。

明治 ザ・チョコレート

〈左・中〉2014年に発売された「明治 ザ・チョコレート」、〈右〉HAREL(ハレル)

〈山下〉2014年に発売した旧型商品は大々的にCMを流していたこともあり、発売当初は注目されたものの、やはり定着しませんでした。でも、90年間チョコレート作りにこだわり続けるメーカーとして、チョコレートの嗜好品としての価値をお客様に知っていただきたい!という考えは変わらなかったので、2015年1月にリニューアルのプロジェクトを発足しました。

もうひとつ、当時「HAREL(ハレル)」という商品がありました。これは“五感で食べるチョコレート”というコンセプトの商品。かたや、明治 ザ・チョコレートは、“良いカカオを使っている”ということを前面的にアプローチした商品で、どちらもうまくいっていなかったんです。これまでの失敗から振り返ってみると、『素材に対するこだわり』『五感を刺激して気分や気持ちを満たす』、そのどちらの要素もあわせ持つチョコレートが必要だと気がつきました。

また、日本におけるチョコレートのフレーバー別売り上げを見ると6割がミルクチョコレート、ダーク系は2割、残りの2割はホワイトチョコレートベースのフレーバーチョコレートなんです。それに対して、当時の明治 ザ・チョコレートはカカオ分60%前後のダークチョコレートのみ。そもそも間口が狭かったなと感じ、ラインナップを見直しました。

−カカオ分何%からがダークチョコレートと呼ばれるのでしょうか?
明治 ザ・チョコレート

〈山下〉明確な決まりはありませんが、カカオ分70%以上であるとバランスが良いといわれています。旧型の商品はカカオ分のパーセンテージも中途半端だったので、カカオ分70%のダークチョコレートに再調整しました。

−「明治ミルクチョコレート」と「明治 ザ・チョコレート」のミルクチョコレートとの違いを教えてください。
明治 ザ・チョコレート

〈山下〉明治 ザ・チョコレートは、カカオの香味をしっかり感じられる味作りがしたいなと思ったので、通常のミルクチョコレートより砂糖の量を半分弱に抑えています。その分カカオとミルクの割合を増やすことで、ミルクチョコレートらしい濃厚さがありながらカカオの香味が楽しめる“ダークミルクチョコレート”という新しいカテゴリーを提案しました。

(取材班もその場で実食。食べ比べてみるとその甘さの差は歴然でした!)

−アイテムによってカカオの産地も異なりますよね。

明治 ザ・チョコレート

〈左から時計回り〉Comfort Bitter(ベネズエラ産中心)、Vivid Milk(ドミニカ共和国産中心)、Brilliant Milk(ペルー産中心)、Elegant Bitter(ブラジルトメアス産中心)

〈山下〉ただ甘い、苦いではなく、香味の違いが分かりやすい産地をセレクトしています。例えば可憐な香りが引き立つブリリアントミルク(写真の右下)は、ペルー産のカカオを使用しています。ペルーやエクアドル産のカカオには、特異的にジャスミンの花のような香りがするフローラル調の香味があるんです。パッケージの背面にはアイテムごとに味の特徴を示すチャートをプリントしているので、カカオについて知っていただくきっかけになれば嬉しいですね。

素材そのものの香りや味の違いがわかると、単なる“お菓子”とは言い難いほど、チョコレートの奥深い世界を感じます。「いろいろな香味のカカオが存在することも、なかなか知る機会がないですよね」と話す山下さん。産地や焙煎方法などによる味の差を知り、食べ終わると少しだけソムリエ気分になれる。そんなチョコレートの楽しみ方が、新たな至福のひとときをもたらしてくれるかもしれません。

次回はバレンタイン限定商品について、そしてチョコレートがもっと美味しくなる食べ方についてお話を伺います!

明治 ザ・チョコレート
http://www.meiji.co.jp/sweets/chocolate/the-chocolate/

PHOTO=長谷川梓

TEXT=GINGER編集部

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