「情けは人のためならず」。人は誰かに喜ばせてもらったときに、「お返しをしよう」と思うもの。また、何かを与えられることで、相手に対する好感を持つ……ということもあり、心理学ではそれを「返報性の原理」と呼びます。この原理をうまく使って社内調整をスムーズに進めてみませんか。
「仕事」と「私情」は切り離すもの
人に優しく親切に、というと当たり前のことに思えますが、ビジネスの場面では様々な力関係や利害関係が働き、素直に進められない状況も多いです。厳しい条件で仕事を依頼しなければならないこと、相手の要求を拒否しなければならないこと、相手がつらい思いをするとわかっていても、そうしなければならないことは多くあります。なぜならそれは仕事だからです。
親切心という私情と、ビジネスだからというリアリズムをわけて考えるのは当然です。
仕事に一生懸命で使命感が強い人ほど、機械的な対応になってしまいますが、それだけでは、あの人は仕事に一生懸命で、しっかりした人だという印象は持たれても、今度はあの人の力になろうという気にはならないでしょう。
「返報性の原理」を使う
では、どうすれば仕事をしながら、親切な印象を与えることができるのでしょうか。
それは、「あなたのために最善を尽くして検討した」という態度を示すことです。
社外の作業者から期日を1週間延ばしてほしいと頼まれたとき、決まりだから受け入れられないと断るのは簡単です。
だからこそ、ここでひと手間かけるのがポイント。本当に期日が1日たりとも延ばせないのであれば話は別ですが、たいていは多少のバッファを見ています。だからといって、二つ返事で「じゃあ延ばしましょう」と答えてしまうのも愚策。返報性の原理を利用するのであれば、自分が最善を尽くして得た結果と演出することが必要です。
「上司に掛け合って、何とか3日延ばせました。」
「社内で調整して1日だけ余裕ができました。」
簡単な一言を付け加えるだけで、自分が努力したような状況を演出できます。
相手もビジネスパーソンなのでそこまで察しているかもしれませんが、決して悪い気はしないはずです。
もっと言えば、あえて1週間ではなく3日だけ延ばせたという「やや厳しめ」の回答をすることで、いかにも交渉して勝ち得たような条件だと思わせることができます。
同僚の心をくすぐる方法
人に優しく親切な対応ができるという要素は、本業にまつわる実力以外の部分です。そのため、個人差が非常に大きく開いてしまいます。
社外の人から見た場合、同じ組織に担当者が2人以上いれば、自ずと比べることもあるはずです。
「担当者のAさんはルールに厳しいけれども、会社の許可が出たので1週間期日を延ばせた」
「担当者のBさんは上司に掛け合って、何とか3日だけ延ばしてくれた」
結果だけ見ればAさんの対応のほうが喜ばれるかもしれませんが、印象がいいのはBさんです。
決して難しいことではありません。誰でもほんの少し気をつかうだけで、大幅に自分の評判をよくすることができるのです。今日から心がけてみてはいかがでしょうか。